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しかし、そんな状況にリースは流されなかった。
「あの、申し訳ありませんが、私はノワールさんとご一緒すると決めているんです。私を誘いたいのならノワールさんも一緒でなければ困ります」
健気にもリースはそう言ってくれている。ただ、当の本人はというと、相変わらず、周りの話なんて聞こえていないようだ。
「………分かりました。しかし、魔法が使えないというのは単に勉強不足だという側面もあります!」
その鋭い言葉にノワールの肩がびくりと動いた。
確かに、リースも言っていた。魔法の才能は使える属性が限られるというもので、魔法を使うこと事態に才能は必要ないと。つまり、ノワールの努力不足だということらしい。まだそれほどノワールとの付き合いが長いとは言えないが、怠け者という印象はない。むしろ、努力家の部類だろう。だが、それなら、なぜ、ノワールには魔法が使えないのか。ノワールは要領が悪いから、またいつものようにやる気が空回りして使えない方向に進んでしまっているのだろう。
「いいですか。魔法とは自然の法則の延長線です。火打ち石を打ち付ければ火花が出る。それが理解できないのなら、一生、魔法なんて使えないでしょう。さあ、やってみなさい」
そう言われ、ダメもとでノワールは両手をつきだした。しかし、魔法は出ない。
俺が魔法を使えたら話は早いんだが。残念ながら、
俺は日本人。魔法とは縁遠い存在だ。しかし、それは昔の話で今はどうだろうか。日本人どころか人間ではないただの扇子だ。だが、少しだけ不思議な力も使える。それに、魔法は誰にだって使えると言っていた。なら、俺にだって使えるのではないだろうか。別に使えなくたって誰かにバカにされることもないし、恥ずかしい思いもしない。試すだけならやってもいい。
しかし、魔法なんてどうやって使うのだろうか。話によると、魔法は自然の延長線で火打ち石で火をつけるのと一緒らしい。しかし、火打ち石なんてここにはない。だとすると、何かで代用するはずだ。それが魔力? いいや、違う。魔力はどちらかというと燃料だ。だとすると、火打ち石は体の外にあるもの。そこに魔力という燃料を流せば火がつく? いいや、火打ち石に油を注いでも火はつかない。俺が探しているのは火打ち石ではない。火種だ。自然にある火種、おそらく、精霊だったりするのだろう。その見えないものに力を注ぐ。
こんなものだろうか。流石に魔法なんて使えないか。誰も知らないとは言え、少し恥ずかしい。
と思っていたら、目の前に大きな炎の竜巻が現れた。
「ふえ……」
まさかの出来事にノワールはもちろん、リースやサフランまでも戸惑っている。ただ、一番戸惑っているのは俺だ。まさか、本当に魔法が使えるなんて。ただ、喜んでいる状況ではなかった。なぜなら、熱風がすごい。木製だったら燃えていたかもしれない。それほどの熱風が襲ってくる。
「誰ですか! こんな大規模な魔法を使っている方は! すぐにやめなさい!」
優しそうなおじさん魔法教師が大慌てしている。
「ノワールさん、すぐに魔法を止めてください」
「へぇ?」
止めるどころか使っている感覚もないだろう。ちなみに、俺にもない。まるでブレーキを教わる前に自転車で坂道を下っているような気分だ。ど、どうしよう。
「もしかすると、魔力暴走かもしれない。このまま魔力を使い続けると危険だ」
実感はないが危険らしい。どうしよう。
「とにかく、まずは火を消そう。リース、水の魔法を使うんだ」
「は、はい」
そして、二人は炎の竜巻に向かって水の魔法を使うのだが、その威力はホースで水をかけるレベル。勢いは収まらない。だが、突破口は見えた。要は水で消せばいいのだ。
先ほどと同じように魔力を流すイメージをする。ただ、今回は炎ではない。目には見えない水の精霊、おそらく水蒸気だ。そして、それがもっとも多い場所、それは雲だ。空にはちょうどいい感じの雲がある。そこの水分を全て落とす。
ただ、これは少しやりすぎてしまった。
空からはまるで滝のような雨が降り注ぎ、一瞬にして炎は消えてしまった。
「まさか、これもノワールさんが?」
「へ? い、いえ、消そうとはしましたけれど……」
そんなことを言えば、ノワールがやったと思われるだろう。本当は俺だが、こんな大騒動になってしまったし、黙っておこう。
そんな反省気味な俺とは違い、サフランは興奮気味だった。
「すばらしい! 全く使えないところからここまでの魔力を出力できるなんて! ぜひとも二人とも私の研究……私と一緒に勉学に励まないか?」
こいつ、今、研究って言った。Sっぽさがあるとは思っていたが、SはSでもサイエンス、それもマッドな部類だったようだ。これには二人ともご遠慮したいといった様子だ。
「あの、申し訳ありませんが、私はノワールさんとご一緒すると決めているんです。私を誘いたいのならノワールさんも一緒でなければ困ります」
健気にもリースはそう言ってくれている。ただ、当の本人はというと、相変わらず、周りの話なんて聞こえていないようだ。
「………分かりました。しかし、魔法が使えないというのは単に勉強不足だという側面もあります!」
その鋭い言葉にノワールの肩がびくりと動いた。
確かに、リースも言っていた。魔法の才能は使える属性が限られるというもので、魔法を使うこと事態に才能は必要ないと。つまり、ノワールの努力不足だということらしい。まだそれほどノワールとの付き合いが長いとは言えないが、怠け者という印象はない。むしろ、努力家の部類だろう。だが、それなら、なぜ、ノワールには魔法が使えないのか。ノワールは要領が悪いから、またいつものようにやる気が空回りして使えない方向に進んでしまっているのだろう。
「いいですか。魔法とは自然の法則の延長線です。火打ち石を打ち付ければ火花が出る。それが理解できないのなら、一生、魔法なんて使えないでしょう。さあ、やってみなさい」
そう言われ、ダメもとでノワールは両手をつきだした。しかし、魔法は出ない。
俺が魔法を使えたら話は早いんだが。残念ながら、
俺は日本人。魔法とは縁遠い存在だ。しかし、それは昔の話で今はどうだろうか。日本人どころか人間ではないただの扇子だ。だが、少しだけ不思議な力も使える。それに、魔法は誰にだって使えると言っていた。なら、俺にだって使えるのではないだろうか。別に使えなくたって誰かにバカにされることもないし、恥ずかしい思いもしない。試すだけならやってもいい。
しかし、魔法なんてどうやって使うのだろうか。話によると、魔法は自然の延長線で火打ち石で火をつけるのと一緒らしい。しかし、火打ち石なんてここにはない。だとすると、何かで代用するはずだ。それが魔力? いいや、違う。魔力はどちらかというと燃料だ。だとすると、火打ち石は体の外にあるもの。そこに魔力という燃料を流せば火がつく? いいや、火打ち石に油を注いでも火はつかない。俺が探しているのは火打ち石ではない。火種だ。自然にある火種、おそらく、精霊だったりするのだろう。その見えないものに力を注ぐ。
こんなものだろうか。流石に魔法なんて使えないか。誰も知らないとは言え、少し恥ずかしい。
と思っていたら、目の前に大きな炎の竜巻が現れた。
「ふえ……」
まさかの出来事にノワールはもちろん、リースやサフランまでも戸惑っている。ただ、一番戸惑っているのは俺だ。まさか、本当に魔法が使えるなんて。ただ、喜んでいる状況ではなかった。なぜなら、熱風がすごい。木製だったら燃えていたかもしれない。それほどの熱風が襲ってくる。
「誰ですか! こんな大規模な魔法を使っている方は! すぐにやめなさい!」
優しそうなおじさん魔法教師が大慌てしている。
「ノワールさん、すぐに魔法を止めてください」
「へぇ?」
止めるどころか使っている感覚もないだろう。ちなみに、俺にもない。まるでブレーキを教わる前に自転車で坂道を下っているような気分だ。ど、どうしよう。
「もしかすると、魔力暴走かもしれない。このまま魔力を使い続けると危険だ」
実感はないが危険らしい。どうしよう。
「とにかく、まずは火を消そう。リース、水の魔法を使うんだ」
「は、はい」
そして、二人は炎の竜巻に向かって水の魔法を使うのだが、その威力はホースで水をかけるレベル。勢いは収まらない。だが、突破口は見えた。要は水で消せばいいのだ。
先ほどと同じように魔力を流すイメージをする。ただ、今回は炎ではない。目には見えない水の精霊、おそらく水蒸気だ。そして、それがもっとも多い場所、それは雲だ。空にはちょうどいい感じの雲がある。そこの水分を全て落とす。
ただ、これは少しやりすぎてしまった。
空からはまるで滝のような雨が降り注ぎ、一瞬にして炎は消えてしまった。
「まさか、これもノワールさんが?」
「へ? い、いえ、消そうとはしましたけれど……」
そんなことを言えば、ノワールがやったと思われるだろう。本当は俺だが、こんな大騒動になってしまったし、黙っておこう。
そんな反省気味な俺とは違い、サフランは興奮気味だった。
「すばらしい! 全く使えないところからここまでの魔力を出力できるなんて! ぜひとも二人とも私の研究……私と一緒に勉学に励まないか?」
こいつ、今、研究って言った。Sっぽさがあるとは思っていたが、SはSでもサイエンス、それもマッドな部類だったようだ。これには二人ともご遠慮したいといった様子だ。
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