33 / 36
33
しおりを挟む
「君たち、どうかしたのかい? まだ魔法を使った練習をしていないみたいだけど」
そう言いながら知らない男が近づいてきた。
まあ、ノワールもリースも美少女だからナンパしたい気持ちも分かる。だが、こちらはクズだが美形の王子が対抗馬だ。そんなちゃらちゃらしたナンパ男に釣れるわけがない。と思ったが、案外、話しかけてきた男も美形だった。
王太子はサラサラの金髪でザ・王子って感じだったが、こっちは少し長めの黒髪を後ろで止め、さらに眼鏡をかけることによって知的な雰囲気、そして、Sっけのありそうな冷たさも感じる、まさにドSプリンスといった感じだ。
つまり、こいつも乙女ゲーの攻略対象なのだろう。
「いえ……その……やろうとはしているんですけれど……」
自分の口からは言えないと気を使って言葉を濁しながらリースはノワールを見た。だが、当のノワールはというと、ハイライトの消えた目でもう失うものはないと言った様子だ。
「魔法、使えませんの」
その声はいつになく乾いていた。それほどに魔法が使えないと言うことはこの世界では致命的なのだろう。
そんなノワールにどんな言葉をかければいいのか分からなかったのか、男はノワールを無視して話を続ける。
「君はどんな魔法が使えるんだい?」
「えっと、5元素と光と闇、全ての属性が使えます」
「全てって、それは本当か?」
「え、ええ……」
リースはノワールに見せたときと同じように手のひらの上でそれぞれの属性の魔法を使って見せた。
「すごい。こんな才能、見たことがない。でも、魔力の出力が弱いみたいだね。今まで魔法の鍛錬はしてこなかったのかい?」
「……はい。私、貴族の出ではないので」
「なるほど、そう言うことか。君、名前は?」
「え……?」
「あぁ、失礼。私の名前はサフラン・エル・マルティエル。サフランとファーストネームで呼んでくれてかまわない。では、改めて、君の名前は?」
「私はリース・シャトレです。そして、こちらが」
「そうか。君はリースというのか。聡明で美しい名前だ。では、リース、僕と一緒に学ばないか? 君のその才能に僕が魔力の出力方法を教えれば、きっとすばらしい魔法使いになれるよ。さっ、向こうのもっと広い場所でやろう」
そう言って、このサフランという男は強引にリースを連れて行こうとしている。
こういう時こそリースを守るべきではないのかノワール。昨日、クズ王太子から守ると豪語していたではないか。
「私も魔法が使えていたら……ふふ……」
未だに扇子であおいで風魔法だなんてことをしている。
魔法の勉強をしようって言うんだからせめて一緒について行けばいいのだが、こいつが誘ったのはリースだけでノワールはおいていくつもりらしい。こいつ、リースがノワールを紹介しようとしたのに、それを聞かずに話し始めていた。おそらく、わざとだろう。魔法が使えないノワールには興味がないと言った感じだ。
そう言いながら知らない男が近づいてきた。
まあ、ノワールもリースも美少女だからナンパしたい気持ちも分かる。だが、こちらはクズだが美形の王子が対抗馬だ。そんなちゃらちゃらしたナンパ男に釣れるわけがない。と思ったが、案外、話しかけてきた男も美形だった。
王太子はサラサラの金髪でザ・王子って感じだったが、こっちは少し長めの黒髪を後ろで止め、さらに眼鏡をかけることによって知的な雰囲気、そして、Sっけのありそうな冷たさも感じる、まさにドSプリンスといった感じだ。
つまり、こいつも乙女ゲーの攻略対象なのだろう。
「いえ……その……やろうとはしているんですけれど……」
自分の口からは言えないと気を使って言葉を濁しながらリースはノワールを見た。だが、当のノワールはというと、ハイライトの消えた目でもう失うものはないと言った様子だ。
「魔法、使えませんの」
その声はいつになく乾いていた。それほどに魔法が使えないと言うことはこの世界では致命的なのだろう。
そんなノワールにどんな言葉をかければいいのか分からなかったのか、男はノワールを無視して話を続ける。
「君はどんな魔法が使えるんだい?」
「えっと、5元素と光と闇、全ての属性が使えます」
「全てって、それは本当か?」
「え、ええ……」
リースはノワールに見せたときと同じように手のひらの上でそれぞれの属性の魔法を使って見せた。
「すごい。こんな才能、見たことがない。でも、魔力の出力が弱いみたいだね。今まで魔法の鍛錬はしてこなかったのかい?」
「……はい。私、貴族の出ではないので」
「なるほど、そう言うことか。君、名前は?」
「え……?」
「あぁ、失礼。私の名前はサフラン・エル・マルティエル。サフランとファーストネームで呼んでくれてかまわない。では、改めて、君の名前は?」
「私はリース・シャトレです。そして、こちらが」
「そうか。君はリースというのか。聡明で美しい名前だ。では、リース、僕と一緒に学ばないか? 君のその才能に僕が魔力の出力方法を教えれば、きっとすばらしい魔法使いになれるよ。さっ、向こうのもっと広い場所でやろう」
そう言って、このサフランという男は強引にリースを連れて行こうとしている。
こういう時こそリースを守るべきではないのかノワール。昨日、クズ王太子から守ると豪語していたではないか。
「私も魔法が使えていたら……ふふ……」
未だに扇子であおいで風魔法だなんてことをしている。
魔法の勉強をしようって言うんだからせめて一緒について行けばいいのだが、こいつが誘ったのはリースだけでノワールはおいていくつもりらしい。こいつ、リースがノワールを紹介しようとしたのに、それを聞かずに話し始めていた。おそらく、わざとだろう。魔法が使えないノワールには興味がないと言った感じだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
努力をしらぬもの、ゆえに婚約破棄であったとある記録
志位斗 茂家波
ファンタジー
それは起きてしまった。
相手の努力を知らぬ愚か者の手によって。
だが、どうすることもできず、ここに記すのみ。
……よくある婚約破棄物。大まかに分かりやすく、テンプレ形式です。興味があればぜひどうぞ。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
あ、出ていって差し上げましょうか?許可してくださるなら喜んで出ていきますわ!
リーゼロッタ
ファンタジー
生まれてすぐ、国からの命令で神殿へ取られ十二年間。
聖女として真面目に働いてきたけれど、ある日婚約者でありこの国の王子は爆弾発言をする。
「お前は本当の聖女ではなかった!笑わないお前など、聖女足り得ない!本来の聖女は、このマルセリナだ。」
裏方の聖女としてそこから三年間働いたけれど、また王子はこう言う。
「この度の大火、それから天変地異は、お前がマルセリナの祈りを邪魔したせいだ!出ていけ!二度と帰ってくるな!」
あ、そうですか?許可が降りましたわ!やった!
、、、ただし責任は取っていただきますわよ?
◆◇◆◇◆◇
誤字・脱字等のご指摘・感想・お気に入り・しおり等をくださると、作者が喜びます。
100話以内で終わらせる予定ですが、分かりません。あくまで予定です。
更新は、夕方から夜、もしくは朝七時ごろが多いと思います。割と忙しいので。
また、更新は亀ではなくカタツムリレベルのトロさですので、ご承知おきください。
更新停止なども長期の期間に渡ってあることもありますが、お許しください。
復讐の慰術師
紅蓮の焔
ファンタジー
※鬱展開あるかもしれません…(鬱展開と鬱展開ではないのラインが分からないので)
1日更新です
後、言う事があるとすれば文章が物凄く稚拙です…
それでもよければお読みください
m(__)mペコリ
「危ないっ!」
歩いていた少年はそこで振り返った
ドスンッ!
気が付くとそこは…知らない場所だった
「あ?」
言葉を話すことすら不可能だった
この少し後で気が付いた
(転生…か)
それに気付いた時、少年は目を瞑った
(今度こそ…)
そう決意し、拳を握ろうとしたが力が入らない
(身体を鍛えよう)
今度はそう決意し、天井へ目を向けた
数年後…
夜中に突然盗賊が押し寄せ、金品を盗んで少年の母親を殺すと家に火を放ち、去っていった
それから更に数年後…
『今までありがとうございました
随分と身勝手ですが妹を宜しくお願いします』
燃えた家から助け出してくれた家の人への書き置きを残してそこから立ち去った
これは幸せを壊された少年の復讐の物語…
※復讐の場面に行くまで少し掛かります。それまではほのぼのとした空気が流れるかと思いますが何卒…
多分良くある話?だと思います
題名は仮の物なので何か提案がある方は教えてくれれば嬉しいです。気に入れば変更します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる