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「離れなかったら、どうだって言うんだ? あんたが代わりに金を出してくれんのか? なあ、お嬢さん」
盗賊のリーダー的な人がそう茶化すと、全員がバカにした笑い声をあげていた。戦力差がどれほどあるのかは分からないが、油断してくれているのはいいことだ。問題は、ノワールがどれほど強いのか。
「他者からの略奪は愚かな行為であり恥ずべきことです。なぜ、もっと全うに働き生活しようと考えられないのですか」
「他者からの略奪は愚かな行為だとよ。貴族は平民から税金を絞りとってんのに、おかしな話だよな」
「税金は、町の治安を守り、外部からの驚異を退けるために必要な資金です。決して、奪い取っているわけではありません」
「なら、その役目、俺たちが代わりにやってやるから、お前等貴族が絞り上げている税金全部だしな」
「あなた方に勤まるとは思えませんわね」
「そうか? 単純な力だけなら負ける気がしねえけどな!」
今まで話していた盗賊のリーダーはその太い腕を横に振り抜いた。
「キャッ!」
どうにか両手でガードが間に合ったノワールだが、華奢な体は軽々と吹き飛ばされてしまった。
「どうしたよ、お嬢さん。威勢がいいのは口だけか?」
ノワールが武術の達人とかならいいのだが、間違いなく、そんなことはない。体格差的にも殴り合いで勝てるような相手ではない。ここはやはり異世界的な力に頼るしかない。魔法とか使えないのだろうか。使えるなら今すぐ使った方がいい。
そんな俺の願いをノワールは聞き届けてくれなかった。
「まずいですわね。衛兵が来る気配もありませんし……」
強気に飛び出していったし、何か策があるのかと思っていたが、まさかの時間稼ぎだった。そうだった。ノワールとはこういう人間だった。いつも虐めを止めようとするのだが、先のことを考えられていないので悪い方向へと進んでしまう。今回だってそうだ。盗賊に襲われているという悪事を見て見ぬ振りをせずに助けようとするのだが、盗賊をどうやって倒すのかまでは考えていない。悪役令嬢だと勘違いされているが、本当は正義感の強いいい子なんだ。
「人質はそっちの馬車に乗ってる奴だけで十分だし、こいつには痛い目を見てもらうか。無惨な死体があった方が身代金もふっかけやすいしよ」
盗賊はいよいよ鞘から剣を抜いた。それでもノワールに反撃の意志はない。おそらく、できるだけ耐えて衛兵が来る時間を稼ごうとしているのだろう。それではだめだ。なら、それを補うのが俺の役目だ。
盗賊のリーダー的な人がそう茶化すと、全員がバカにした笑い声をあげていた。戦力差がどれほどあるのかは分からないが、油断してくれているのはいいことだ。問題は、ノワールがどれほど強いのか。
「他者からの略奪は愚かな行為であり恥ずべきことです。なぜ、もっと全うに働き生活しようと考えられないのですか」
「他者からの略奪は愚かな行為だとよ。貴族は平民から税金を絞りとってんのに、おかしな話だよな」
「税金は、町の治安を守り、外部からの驚異を退けるために必要な資金です。決して、奪い取っているわけではありません」
「なら、その役目、俺たちが代わりにやってやるから、お前等貴族が絞り上げている税金全部だしな」
「あなた方に勤まるとは思えませんわね」
「そうか? 単純な力だけなら負ける気がしねえけどな!」
今まで話していた盗賊のリーダーはその太い腕を横に振り抜いた。
「キャッ!」
どうにか両手でガードが間に合ったノワールだが、華奢な体は軽々と吹き飛ばされてしまった。
「どうしたよ、お嬢さん。威勢がいいのは口だけか?」
ノワールが武術の達人とかならいいのだが、間違いなく、そんなことはない。体格差的にも殴り合いで勝てるような相手ではない。ここはやはり異世界的な力に頼るしかない。魔法とか使えないのだろうか。使えるなら今すぐ使った方がいい。
そんな俺の願いをノワールは聞き届けてくれなかった。
「まずいですわね。衛兵が来る気配もありませんし……」
強気に飛び出していったし、何か策があるのかと思っていたが、まさかの時間稼ぎだった。そうだった。ノワールとはこういう人間だった。いつも虐めを止めようとするのだが、先のことを考えられていないので悪い方向へと進んでしまう。今回だってそうだ。盗賊に襲われているという悪事を見て見ぬ振りをせずに助けようとするのだが、盗賊をどうやって倒すのかまでは考えていない。悪役令嬢だと勘違いされているが、本当は正義感の強いいい子なんだ。
「人質はそっちの馬車に乗ってる奴だけで十分だし、こいつには痛い目を見てもらうか。無惨な死体があった方が身代金もふっかけやすいしよ」
盗賊はいよいよ鞘から剣を抜いた。それでもノワールに反撃の意志はない。おそらく、できるだけ耐えて衛兵が来る時間を稼ごうとしているのだろう。それではだめだ。なら、それを補うのが俺の役目だ。
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