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部屋の外にある廊下も豪華だった。赤いカーペットに窓の枠が金色に輝いている。部屋の中も豪華だったが廊下も負けていない。もしかしたら、ここはこのお嬢様の屋敷かもしれないとも思っていたが、やはり、学校のようだった。
周りには、彼女と一緒で赤の生地に金の装飾を施された制服を着た生徒たちがたくさんいた。
すごい豪華な制服だ。おそらく、どこかのお嬢様学校なのだろう。周りの生徒もどことなくお嬢様のような気品を感じる。
そんな中、一人、明らかに周りとは様子の違う人が歩いてきた。
白いけれど年寄りの白髪というわけではなく光が反射してキラキラしている綺麗な髪に、俯いていても分かる可愛らしさ。しかし、令嬢のような品の良さはない。縦ロールはついていないし、そもそも、着ている服が周りとは違う。金色の装飾もなければ、生地も真っ赤ではなく、薄いピンク色だ。服装やその様子からして、お金持ちというよりも薄幸の美少女といった感じだ。
こんな白髪の美少女と出会っていたら忘れるはずがないのに、俯いているせいか、どこかであったような気がするのに思い出せない。しかも、今は扇子なので呼び止めることもできないし、相手も俺のことに気づいてくれはしないだろう。
奇跡的に気づいてはくれないかと淡い希望を抱いていたが、それもむなしく通り過ぎていった。と、その時、俺の持ち主は、突然、足を止めた。
「もし、そこのあなた」
そう言うと、よどみなく綺麗にターンをした。
そして、正面に見据えるのは、先ほどすれ違った白髪美少女。
ただ、面識などはなかったのだろう。白髪美少女に気づいている様子はない。だが、構わず話しかける。
「あなたですよ。見窄らしい白髪のあなた。私はあなたに話しかけているのですよ」
そこまで言えば、誰に言っているのか分かったようで、白髪美少女も振り返った。
しかし、呼び止めるためとはいえ、見窄らしいは言い過ぎだ。俺から言わせてもらえば、こちらの方が派手すぎる。
そんな俺の思いなど誰も知ることもなく話は進んでいく。
「あの、私に何か?」
「あなた、名前は?」
名前を聞くときはまず自分から名乗るべきだろと言いたいが、たとえ口があったとしても言えていないだろう。
「リース・シャトレです」
薄々、気づいてはいたが、ここは日本ではない。それどころか、世界が違う。
リース・シャトレ。
その名前は大人気乙女ゲーム『白百合物語』に登場する主人公の名前だ。
周りには、彼女と一緒で赤の生地に金の装飾を施された制服を着た生徒たちがたくさんいた。
すごい豪華な制服だ。おそらく、どこかのお嬢様学校なのだろう。周りの生徒もどことなくお嬢様のような気品を感じる。
そんな中、一人、明らかに周りとは様子の違う人が歩いてきた。
白いけれど年寄りの白髪というわけではなく光が反射してキラキラしている綺麗な髪に、俯いていても分かる可愛らしさ。しかし、令嬢のような品の良さはない。縦ロールはついていないし、そもそも、着ている服が周りとは違う。金色の装飾もなければ、生地も真っ赤ではなく、薄いピンク色だ。服装やその様子からして、お金持ちというよりも薄幸の美少女といった感じだ。
こんな白髪の美少女と出会っていたら忘れるはずがないのに、俯いているせいか、どこかであったような気がするのに思い出せない。しかも、今は扇子なので呼び止めることもできないし、相手も俺のことに気づいてくれはしないだろう。
奇跡的に気づいてはくれないかと淡い希望を抱いていたが、それもむなしく通り過ぎていった。と、その時、俺の持ち主は、突然、足を止めた。
「もし、そこのあなた」
そう言うと、よどみなく綺麗にターンをした。
そして、正面に見据えるのは、先ほどすれ違った白髪美少女。
ただ、面識などはなかったのだろう。白髪美少女に気づいている様子はない。だが、構わず話しかける。
「あなたですよ。見窄らしい白髪のあなた。私はあなたに話しかけているのですよ」
そこまで言えば、誰に言っているのか分かったようで、白髪美少女も振り返った。
しかし、呼び止めるためとはいえ、見窄らしいは言い過ぎだ。俺から言わせてもらえば、こちらの方が派手すぎる。
そんな俺の思いなど誰も知ることもなく話は進んでいく。
「あの、私に何か?」
「あなた、名前は?」
名前を聞くときはまず自分から名乗るべきだろと言いたいが、たとえ口があったとしても言えていないだろう。
「リース・シャトレです」
薄々、気づいてはいたが、ここは日本ではない。それどころか、世界が違う。
リース・シャトレ。
その名前は大人気乙女ゲーム『白百合物語』に登場する主人公の名前だ。
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