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暗殺ということで、一応、辺りが暗くなるまで待つことにした。明るくても支障はないと思うのだが、こういうのは雰囲気が大事なのだ。
そんなことを考えているのだが、コソコソと隠れたりするようなことはせず、堂々と廊下の真ん中を歩いていく。
「しっかし、お城ってだけあって、夜なのに人が多いな」
使用人や警備をする兵士など、この城で働いている人が大勢いる。しかし、その誰もが僕の存在には気づいていない。
「仕方ないことだけど、これから皇女様を暗殺しようとしてる奴に気づかないってのは問題だよな」
そう思うのだが、僕みたいなイレギュラーにまで対策をとっていたら大変だろう。
そんなことを考えているうちに、第三皇女の部屋まで来てしまった。
「気は乗らないけど、あの道に寝ていた熊と同じ仕事だと割り切ってやるしかないか……」
覚悟なんて固まらないまま、扉に手を伸ばしたそのときだった。
「誰?」
声は部屋の中から聞こえてきた。もしかして、第三皇女の声なのだろうか。
「声を出すってことは、部屋の中に他の誰かがいるってことなのか……?」
考えるよりも見て確かめた方が早い。
僕は扉をゆっくりと開き、部屋の中を覗き見た。しかし、部屋には僕と歳が近そうな一人の少女がいるだけで、他の来客はいそうにない。そして、一人でいる少女こそ、第三皇女その人なのだろう。
大きくて丸い瞳、少し薄い唇、白くて汚れのない玉肌、そして長い髪は月明かりに照らされて輝いて見える。あの性悪第一皇女と比べると、天と地ほどのかわいらしさだ。そんな美少女が薄手の部屋着を着ているので、男子たるもの、心を乱されずにはいられない。
そんな風に動揺したからなのだろうか。
「誰……ですか?」
そんな言葉を口にした。
部屋にはもちろん、僕と皇女の二人以外誰もいない。後ろを見ても、誰もいない。つまり……。
「独り言……?」
もしかして、厨二病なのだろうか。比較的、男子が発症する病気だと思ってはいたが、女子にもそう言った時期があるのかもしれない。
しかし、彼女は厨二病ではなかったようだ。
「独り言ではありません。あなたに聞いているんです」
不快そうに眉間に皺を寄せ聞いてくる。しかし、いくら周りを見ても、他に誰かがいるなんてこともない。それに……。
「独り言って……もしかして、声が聞こえているのか?」
「当たり前じゃないですか。あなたは何を言っているんですか?」
間違いなく会話が成立している。この世界に来て初めて、誰かが僕のことを認識した瞬間だった。
そんなことを考えているのだが、コソコソと隠れたりするようなことはせず、堂々と廊下の真ん中を歩いていく。
「しっかし、お城ってだけあって、夜なのに人が多いな」
使用人や警備をする兵士など、この城で働いている人が大勢いる。しかし、その誰もが僕の存在には気づいていない。
「仕方ないことだけど、これから皇女様を暗殺しようとしてる奴に気づかないってのは問題だよな」
そう思うのだが、僕みたいなイレギュラーにまで対策をとっていたら大変だろう。
そんなことを考えているうちに、第三皇女の部屋まで来てしまった。
「気は乗らないけど、あの道に寝ていた熊と同じ仕事だと割り切ってやるしかないか……」
覚悟なんて固まらないまま、扉に手を伸ばしたそのときだった。
「誰?」
声は部屋の中から聞こえてきた。もしかして、第三皇女の声なのだろうか。
「声を出すってことは、部屋の中に他の誰かがいるってことなのか……?」
考えるよりも見て確かめた方が早い。
僕は扉をゆっくりと開き、部屋の中を覗き見た。しかし、部屋には僕と歳が近そうな一人の少女がいるだけで、他の来客はいそうにない。そして、一人でいる少女こそ、第三皇女その人なのだろう。
大きくて丸い瞳、少し薄い唇、白くて汚れのない玉肌、そして長い髪は月明かりに照らされて輝いて見える。あの性悪第一皇女と比べると、天と地ほどのかわいらしさだ。そんな美少女が薄手の部屋着を着ているので、男子たるもの、心を乱されずにはいられない。
そんな風に動揺したからなのだろうか。
「誰……ですか?」
そんな言葉を口にした。
部屋にはもちろん、僕と皇女の二人以外誰もいない。後ろを見ても、誰もいない。つまり……。
「独り言……?」
もしかして、厨二病なのだろうか。比較的、男子が発症する病気だと思ってはいたが、女子にもそう言った時期があるのかもしれない。
しかし、彼女は厨二病ではなかったようだ。
「独り言ではありません。あなたに聞いているんです」
不快そうに眉間に皺を寄せ聞いてくる。しかし、いくら周りを見ても、他に誰かがいるなんてこともない。それに……。
「独り言って……もしかして、声が聞こえているのか?」
「当たり前じゃないですか。あなたは何を言っているんですか?」
間違いなく会話が成立している。この世界に来て初めて、誰かが僕のことを認識した瞬間だった。
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