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3 私の恩人を求めて

町一番の支援魔法の使い手は 36

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 団長さんからの話も終わり、私は彼と二人でギルド内を歩いていた。
 すると、急に彼は立ち止まった。
「何付いてきてんだ」
「いや……その……」
 別に、彼にギルドの中を案内して貰っている訳ではないし、談笑しながら歩いていた訳でもない。ただただ、私が彼の後を付けていただけだ。
「酒場ならこっちじゃなくて逆方向だ」
 そう言って、再び歩き出したので、私も後を追った。
 酒場が分からなくて迷っていたわけじゃない。私には、彼に用がある。ただ、なかなかそれが言い出せない。
「だから何なんだよ! さっきからずっと俺をつけ回しやがって。俺に文句でもあんのか!」
 そう怒鳴られると、あたふたして言葉が詰まってしまう。
 でも、大事なことなので、ちゃんと話さなければ……。
 ただ、彼はせっかちなようで、私が少し言い淀んでいる間に、興味を失ったように立ち去ろうとしていた。
 緊張はするけど、どうにか声が出せた。
「あの!」
 妙に声が裏がえったのだが、そのおかげなのか、彼は立ち止まってくれた。
「なんだよ。話があるならさっさとしろ」
 強い言い方だが、話は聞いてくれるようだ。勇気を出して声を出さなければ……。
「その……パーティーを組むことになったけど、まだ、お互いのこと何も知らないから、自己紹介をしておこうと思って……」
 「そんなもん必要ねえ!」と叫ばれるのかと思ったけど、立ち去ることもせず、黙って聞いてくれている。
「私の名前はキラリです。攻撃系は何もできないんですけど、支援魔法で強化はできます!」
 定型文のようだが、これが私の最大限の自己紹介だ。
 私の番はこれで終わり。次は彼の番だ。
 数秒ほど、じっと見ていると、諦めたようにため息を吐いてから呟いた。
「…………コン」
 ウルフラムとかグラファイトとか、そういうかっこいい名前を期待してしていたのだが、まさかの二文字に動揺を隠しきれずにいた。
 そして、私が何も話さないので、再び、歩き出してしまった。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「まだ何かあんのかよ」
 思わず反射的に呼び止めてしまった。
 とりあえず、何かを話さないと。
「えっと……コンさん、でいいんですよね?」
「あぁ。さんでもなんでも好きに付けろ」
 流石にこれで話は終わりなんて言うわけにはいかないので、何とかして話題を絞り出した。
「あの……そうだ。明日もダンジョンに行くんですよね?」
「当たり前だ」
「じゃあ、私もパーティーなので、行かないといけませんね! 何時頃に行きますか?」
「俺が起きてすぐにだ」
「えぇ……」
 それはいくら何でも横暴だ。
「私、宿から行くんで、時間は合わせた方が……」
「なんだ。宿借りてんのか。んなもん出ろ。このギルドはタダで寝泊まりできるようになってんだ。大体、酒場で潰れっから部屋は空いてるはずだ。ヘイトにでも聞いてみろ」
「は、はい!」
 ここで寝泊まりできるのなら、寝坊しない限りコンさんと一緒に狩りに行ける。それに、寝泊まりタダなら宿代も浮くので一石二鳥。本当にこんな至れる尽くせりでいいのだろうか。
 そんな疑問を投げかける間もなく、コンさんは歩き出した。
「それじゃあ、明日。遅れんなよ」
「はい!」
 常に叫んでばかりで粗暴な人なのだが、聞けばいろいろ教えてくれるし、それに、私が口走った差別の言葉で同胞のために怒って、実は根はいい人なのではないのかと思い出した仮入団初日だった。
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