51 / 53
英華女学院の七不思議 51
しおりを挟む
うれしさを言葉にすることはなく、事実確認をするために、急いで冬美さんを探した。探したとは言っても、見つけたのは早かった。一番最初に向かった3年5組の教室に彼女はいた。今日は昨日ほど化粧は濃くないが、それでも周りと比べると濃い化粧をしている。以前の冬美さんを知っていると、確かに、化粧の奥にその面影を感じなくもない。だが、化粧には疎いとはいえ、人は化粧でここまで変わるとは思わなかった。
「冬美さん、少し、いいですか?」
私が呼ぶと、こちらに気づいた冬美さんは嫌そうな顔をしながらも来てくれた。
「またですか。今度は何の用ですか?」
「確認したいことがあるんです」
数名だが無関係の生徒もいる中で話すようなことではないので、また生徒指導室に誘おうと思っていたのだが、雛ノ森さんはそれまで我慢できなかったようだ。
「先輩、なんですか?」
その言葉で、全てを察したのだろう。冬美さんの表情が申し訳なさそうに陰った。
「そう。全部ばれちゃったのね」
これで私たちも確信を持つことができる。
彼女、佐々木冬美さんが雛ノ森さんと会っていた探偵部の先輩だったのだ。
「先輩……先輩なんですね……。よかった……本当によかった」
「雛ノ森さん? 大丈夫ですか?」
感極まってしまったのか、雛ノ森さんは顔を覆い、泣き崩れてしまった。
「ちょ、ちょっと、騙していたのは悪いけど、そんな泣くほどのことでもないでしょ」
冬美さんは理解できていない。毎日のように会って楽しく話していた人が、幽霊だったかもしれない、もう死んでいる人かもしれないという気持ちを。そして、幽霊や死人ではなく、生きていてくれたことが泣くほど嬉しかったことなんて。
雛ノ森さんに変わって冬美さんを叱りたい気持ちなのだが、先に場所を移動した方がいい。
「とりあえず、生徒指導室に行きましょうか」
「は、はい……」
泣いている雛ノ森さんに動揺しながらも返事を貰ったので、泣き崩れた雛ノ森さんを支えながら立たせてあげた。
「歩けますか?」
「はい。大丈夫です」
気持ちも収まってきたようで、涙ももうすぐで止まりそうだ。
「冬美さん、少し、いいですか?」
私が呼ぶと、こちらに気づいた冬美さんは嫌そうな顔をしながらも来てくれた。
「またですか。今度は何の用ですか?」
「確認したいことがあるんです」
数名だが無関係の生徒もいる中で話すようなことではないので、また生徒指導室に誘おうと思っていたのだが、雛ノ森さんはそれまで我慢できなかったようだ。
「先輩、なんですか?」
その言葉で、全てを察したのだろう。冬美さんの表情が申し訳なさそうに陰った。
「そう。全部ばれちゃったのね」
これで私たちも確信を持つことができる。
彼女、佐々木冬美さんが雛ノ森さんと会っていた探偵部の先輩だったのだ。
「先輩……先輩なんですね……。よかった……本当によかった」
「雛ノ森さん? 大丈夫ですか?」
感極まってしまったのか、雛ノ森さんは顔を覆い、泣き崩れてしまった。
「ちょ、ちょっと、騙していたのは悪いけど、そんな泣くほどのことでもないでしょ」
冬美さんは理解できていない。毎日のように会って楽しく話していた人が、幽霊だったかもしれない、もう死んでいる人かもしれないという気持ちを。そして、幽霊や死人ではなく、生きていてくれたことが泣くほど嬉しかったことなんて。
雛ノ森さんに変わって冬美さんを叱りたい気持ちなのだが、先に場所を移動した方がいい。
「とりあえず、生徒指導室に行きましょうか」
「は、はい……」
泣いている雛ノ森さんに動揺しながらも返事を貰ったので、泣き崩れた雛ノ森さんを支えながら立たせてあげた。
「歩けますか?」
「はい。大丈夫です」
気持ちも収まってきたようで、涙ももうすぐで止まりそうだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
旧校舎のフーディーニ
澤田慎梧
ミステリー
【「死体の写った写真」から始まる、人の死なないミステリー】
時は1993年。神奈川県立「比企谷(ひきがやつ)高校」一年生の藤本は、担任教師からクラス内で起こった盗難事件の解決を命じられてしまう。
困り果てた彼が頼ったのは、知る人ぞ知る「名探偵」である、奇術部の真白部長だった。
けれども、奇術部部室を訪ねてみると、そこには美少女の死体が転がっていて――。
奇術師にして名探偵、真白部長が学校の些細な謎や心霊現象を鮮やかに解決。
「タネも仕掛けもございます」
★毎週月水金の12時くらいに更新予定
※本作品は連作短編です。出来るだけ話数通りにお読みいただけると幸いです。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
※本作品の主な舞台は1993年(平成五年)ですが、当時の知識が無くてもお楽しみいただけます。
※本作品はカクヨム様にて連載していたものを加筆修正したものとなります。


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる