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英華女学院の七不思議 48
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学食へ行き、今日もいつも通り日替わり定食にしたのだが、想像していたよりは並ばなかった。単に来るのが遅かったからなのだろうか。それとも、配膳の効率が上がったからなのだろうか。もしくは、定食を食べるのが大変で変なブームが去ってしまったからなのだろうか。別に理由はどうでもいい。日替わり定食が人気になったのを喜んでいた平川先生には申し訳ないが、私としては、長蛇の列には並びたくない。今日のように列の長さは程々にしてほしいものだ。これなら多少遅れても余裕を持って食事ができる。
少し遅れたと思っていたが、一昨日よりも早く席に着けたと思う。
「先生……何でイタリアンにもお漬け物がついているんですか……百歩譲って洋食には分かりますよ。でも、イタリアンでお漬け物って……お米すらないんですよ?」
雛ノ森さんが今日の日替わり定食の内容に文句を言っている。
今日の日替わり定食はイタリアン。小さなステーキに魚のムニエルやおしゃれなパスタなど。ただ、そんな中でも、いつものように漬け物はある。嫌いなものが日替わりしないというのは、なかなか辛いところがあるのだろう。同情だってしたくなる。
「貰いましょうか?」
「い、いいえ。これはいずれ通らなければならない道。今日こそは……」
意気込んでいるようで何よりだが、今日こそはということは、昨日はだめだったのだろう。
「そうでした。それより、佐々木……えっと、妹さんの方の……」
「冬美さんですか?」
「そうです。その冬美さんなんですけど、最近、よからぬ噂があるそうなんですよ」
「よからぬ噂、ですか」
「はい。2年前のことについては、大体、分かったので、今のことについて調べようと思いまして……」
「それで、冬美さんですか」
2年前の失踪に関して、当事者は失踪した涼子さん。冬美さんと恋仲にあった吉田先生。担任だった平川先生。そして、失踪した涼子さんの妹、冬美さん。分かっている範囲では、この4人。だが、失踪した涼子さんは白骨化して発見され、吉田先生は退職して遠くへ。残ったのは平川先生と冬美さんの二人で、平川先生の周辺を嗅ぎ回るのはリスクが高すぎると感じたのだろう。
「3年生の人に聞いたんですが、今は少しクラスでも浮いているそうです。なんでも、グレたとか言ってました」
「グレた、ですか……。まあ、実際に私も少しはそう思いましたからね」
髪も薄く染めて、化粧も濃く、注意を受けていたと聞けば、グレたと思わずにはいられない。
「確かに、身なりはそうでしたが……雰囲気というか、立ち振る舞いに荒さは見えませんでした」
確かに、あんな見た目だったが、座っている姿勢が綺麗だったので違和感を覚えていた。
「そうですね……私も冬美さんの担任の方に話を聞いてみましょうか」
「ありがとうございます。私ももう少し3年生の先輩方から話を聞こうと思います」
「分かりました。でも、一人で危ない場所に行ったりしてはいけませんよ」
「分かっています」
本当に分かっているのか不安になるが、釘を差しすぎるのもよくない。
「それより、食べないんですか?」
私の視線の先には、漬け物がある。
「た、食べますよ!」
手の震えが箸に伝わり、急にぎこちなくなりながらも漬け物を一切れ摘み、口に放り込んで数秒後にカリッという弾むような音が聞こえたのだが……。
「…………うぅ」
小学生がピーマンを食べた時のような、そんな絶妙な表情をしていた。
少し遅れたと思っていたが、一昨日よりも早く席に着けたと思う。
「先生……何でイタリアンにもお漬け物がついているんですか……百歩譲って洋食には分かりますよ。でも、イタリアンでお漬け物って……お米すらないんですよ?」
雛ノ森さんが今日の日替わり定食の内容に文句を言っている。
今日の日替わり定食はイタリアン。小さなステーキに魚のムニエルやおしゃれなパスタなど。ただ、そんな中でも、いつものように漬け物はある。嫌いなものが日替わりしないというのは、なかなか辛いところがあるのだろう。同情だってしたくなる。
「貰いましょうか?」
「い、いいえ。これはいずれ通らなければならない道。今日こそは……」
意気込んでいるようで何よりだが、今日こそはということは、昨日はだめだったのだろう。
「そうでした。それより、佐々木……えっと、妹さんの方の……」
「冬美さんですか?」
「そうです。その冬美さんなんですけど、最近、よからぬ噂があるそうなんですよ」
「よからぬ噂、ですか」
「はい。2年前のことについては、大体、分かったので、今のことについて調べようと思いまして……」
「それで、冬美さんですか」
2年前の失踪に関して、当事者は失踪した涼子さん。冬美さんと恋仲にあった吉田先生。担任だった平川先生。そして、失踪した涼子さんの妹、冬美さん。分かっている範囲では、この4人。だが、失踪した涼子さんは白骨化して発見され、吉田先生は退職して遠くへ。残ったのは平川先生と冬美さんの二人で、平川先生の周辺を嗅ぎ回るのはリスクが高すぎると感じたのだろう。
「3年生の人に聞いたんですが、今は少しクラスでも浮いているそうです。なんでも、グレたとか言ってました」
「グレた、ですか……。まあ、実際に私も少しはそう思いましたからね」
髪も薄く染めて、化粧も濃く、注意を受けていたと聞けば、グレたと思わずにはいられない。
「確かに、身なりはそうでしたが……雰囲気というか、立ち振る舞いに荒さは見えませんでした」
確かに、あんな見た目だったが、座っている姿勢が綺麗だったので違和感を覚えていた。
「そうですね……私も冬美さんの担任の方に話を聞いてみましょうか」
「ありがとうございます。私ももう少し3年生の先輩方から話を聞こうと思います」
「分かりました。でも、一人で危ない場所に行ったりしてはいけませんよ」
「分かっています」
本当に分かっているのか不安になるが、釘を差しすぎるのもよくない。
「それより、食べないんですか?」
私の視線の先には、漬け物がある。
「た、食べますよ!」
手の震えが箸に伝わり、急にぎこちなくなりながらも漬け物を一切れ摘み、口に放り込んで数秒後にカリッという弾むような音が聞こえたのだが……。
「…………うぅ」
小学生がピーマンを食べた時のような、そんな絶妙な表情をしていた。
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