英華女学院の七不思議

小森 輝

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英華女学院の七不思議 38

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「話を脱線させてしまって申し訳ありません。それでは本題を話しましょうか」
「はい。その……佐々木涼子さんという生徒はどんな生徒だったんですか?」
「それはいいですけど、2週間前まで会っていたという雛ノ森さんから聞いてはいないのですか?」
「それは……確認と言いますか……」
 もちろん、雛ノ森さんを信じていないわけではない。ただ、一番いい結果は、雛ノ森さんの先輩と2年前に失踪して白骨化していた佐々木涼子さんが別人だったと言うこと。同一人物で雛ノ森さんを死に導こうとした幽霊なんていう結果が一番恐ろしい。だから、白骨化していた佐々木涼子さんを知っている人が居るなら確認しておく必要がある。
「分かりました。話しましょう」
 そう言って、平川先生は一度立ち上がり、棚にある本を一冊取り出し、再び座った。
 本を開き、すぐに目的のページを見つけると、私たちの方に見せてきた。
 そこに写っていたのは、この学校の制服を着た見知らぬ生徒たちの写真。この本は卒業アルバムというやつだ。
「佐々木さんは、2年前、夏休みが明けて数日経った後、ちょうど今頃の時期に失踪しました」
 平川先生がアルバムに写る一人の生徒を指さした。それは、江口刑事が見せてくれた佐々木涼子さんの写真と同じ人物。
「佐々木さんの性格とか成績とか……あと部活とかはどうだったんですか?」
「確か、部活には入って居ませんでしたね。成績はいい方でした。活発で明るくクラスからはみ出しているようなこともありませんでした」
 確かに、アルバムに写る佐々木涼子さんの笑顔は輝いて見える。
 この少女が本当に先輩かどうか分かるのは一人しかいない。
「雛ノ森さん、どうですか?」
 雛ノ森さんの表情を窺うと、少し悩むように首を傾げている。
「顔も髪の感じも私が会ってきた先輩と同じなんですけど……先輩がこんな風に楽しく笑っているようなことはなかった……ような……もっと優しく笑うことはあったんですけど……」
 記憶を辿っているのだろう。でも、こんな風に弾ける笑顔を見せたことはないといった様子だ。確かに、基本的に室内で、調べるのも個別なら写真のような表情は難しいのかもしれない。
「私が知っていることは、この程度です。彼女のことをもっと知りたいというのなら、私より身近だった人を教えますが」
「是非、お願いします」
 少し躊躇したように見えたが、教えてはくれるようだ。
「3年5組の佐々木冬美(ふゆみ)さんです」
 その名前を聞けば、どのような関係なのか容易に予測できる。
「彼女は2年前、佐々木涼子さんと寮は同じ部屋で、それで妹です」
 名字から考えても明白だった。佐々木涼子さんには妹がいる。そして、妹である佐々木冬美さんは現在3年生。もしかしたら、彼女が雛ノ森さんと会っていた先輩なのかもしれない。
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