英華女学院の七不思議

小森 輝

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英華女学院の七不思議 37

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 少し前まで、私とは縁がなかった生徒指導室なのだが、最近はかなりお世話になっている。しかも、私が指導する側ではなく、聞き取り調査をされる側なので、なんだか学生の頃に戻った気分だ。
 いいや、学生とは少し違うかもしれない。
 ここに来るときは、必ず、雛ノ森さんと私のセットだ。だから、どちらかというと三者面談という形が正しいかもしれない。私が学生の頃は、大抵、母親が来てくれていたのだが、いつもこんな気分だったのだろうか。雛ノ森さんは私の子供ではないので、その想いは分からないが。
 今はそのことを問題視する必要はない。もっと別なことを聞きに来たのだから。
「早速で悪いんですけど、佐々木涼子さんのお話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか」
「いいですが、それよりも先に、一つ、質問をさせてください」
「……はい。お答えできることであれば……」
 そうは言ったが、平川先生に隠すようなことは何一つやっていないので、聞かれれば全て答えられるだろう。雛ノ森さんとの関係性なんて聞かれても、生徒と副担任という答えも用意してある。どんな質問が来ても、対応できる心構えはしている。
「あなたたちは、何をしているのですか?」
「何……と言われましても……調べているとしか……」
 心構えはしていたのだが、答えにくい質問ではなかったので、逆にその真意を探ってしまった。
「私には、その調べているというのが分からないのです。警察もDNA鑑定の結果で本人確認もでき、事故死として処理されるという話です。橋本先生のように落ちて運悪く頭部を強打。白骨化していることから失踪してすぐに死亡したと予測できる。それが警察の見解です。もう終わった事件なのですよ?」
 もうDNA鑑定から死因まで分かっているとは、やはり、警察の科学技術は進歩しているのだろう。
 だが、警察や平川先生の見解には、ある一つのことが抜け落ちている。
「その……雛ノ森さんの話なんですけど……」
 隣に座っている雛ノ森さんへと視線を向けると、次は私が話す番と察してくれたのか、説明を始めてくれた。
「私は、2週間前の金曜日まで、その亡くなった佐々木涼子さんと会っていたんです。探偵部っていう集まりで、放課後に二人でお話をしていたんです。それなのに、先週の月曜日から来なくなって、先生に相談して、それで……」
 自分が見てきた先輩との矛盾と私を巻き込んでしまった申し訳なさが垣間見ている。
「そのことは警察には?」
「はい……伝えましたが……」
 少女の勘違い、とでも思っているのだろう。思春期の少女ならば精神状態が不安定になっている可能性があると言ったところだろう。おそらく、今後も雛ノ森さんの話は相手にされはしないだろう。
「分かりました。佐々木涼子さんが失踪した2年前、3年生の学年主任は私で、佐々木涼子さんのクラスの担任でもありました。聞きたいことがあれば答えましょう。しかし、あくまで学生の本分は勉学です。それも、この学校は親御様から生徒をお預かりしていると言うのを忘れないように。雛ノ森さん……でしたね。あまり無理をしないよう程々に。橋本先生の手を煩わせないように」
「……分かりました」
 この有無を言わせぬ威圧感。やはり、平川先生には迫力がある。これが間違った道に進ませない優しさ。同じ教師として、憧れの目で見てしまう。
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