英華女学院の七不思議

小森 輝

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英華女学院の七不思議 34

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 コーヒーを飲みながら優雅に課題のチェックをしていく。インスタントコーヒーとは違い挽きたてのコーヒーはやはり味が違う。コーヒーなのにフルーツのような酸味があり、ブラックなのにとても飲みやすい。
これも生徒を意識して飲みやすいコーヒーの銘柄を使っているのだろうか。
 ただ、コーヒーはあまり人気はないようだ。やはり、一番の人気は紅茶。お嬢様といっても、大人ぶりたい年頃の高校生。コーヒーはまだ早くても紅茶なら飲み慣れているのかもしれない。巷ではタピオカミルクティーなるものが流行っているらしいが、ここには流行の最先端のようなものはない。ここのお嬢様方がタピオカミルクティーにどんな反応をするのか気になるが、平川先生のような厳格な教師の方が許してはくれないだろう。でも、料理実習や料理研究部もあるのだから、いつかタピオカを作ったりするのかもしれない。
「いつか食べられるようになりたいです」
「雛ノ森さんもタピオカに興味はあるんですね」
「え? タピオカ? 何の話ですか?」
 しまった。タピオカミルクティーは私の頭の中での話で言葉には出していなかった。完全に話がかみ合わない状態になってしまった。
「私の話、聞いていましたか?」
「え……も、もちろん」
 課題のチェック加え考え事もしていたせいで、聴覚を切り捨ててしまっていたようだ。今まで私が考え事と課題のチェックに勤しんでいた間にも雛ノ森さんは話し続けていたのだろう。ただ、私は覚えていない。というか聞いていない。いや、聞いていたが脳が認識していなかった。
「本当ですか? なら、私が話したことについて、ちゃんと答えてください」
「えっと……それは……」
 なんて答えるのが正解なのか、それを探して宙をさまよう。
「先生……目が泳いでますよ」
「それは……」
 雛ノ森さんから指摘されなくても目が泳いでいたことぐらいは分かっている。
「すいません。聞いていませんでした」
 私には素直に謝ることぐらいしか出来そうにない。
「……まあ、いいです。先生のお気持ちはよく分かりました」
 拗ねてしまったようだ。どうやら、私は少し嫌われてしまったらしい。
「それで、何の話をしていたんですか?」
「お漬け物の話です。お昼に食べられなかったから……。でもいいんです。先生にはあまり興味がないようですので」
「すいません……」
 こればかりは、聞いていなかった私が悪いので、文句なんて言えない。
「先生が興味のある話は先輩のことだけですもんね。分かりました。そのお話をしましょう」
 確かに、雑談よりも先輩の話の方が興味があるのだが、機嫌が悪いままでは話もスムーズにはいかないだろう。どこかのタイミングで機嫌をよくしてもらわなければ。
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