英華女学院の七不思議

小森 輝

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英華女学院の七不思議 27

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「桃家さんは私に何かお話があるのですか?」
「先生、私のこと無視しないでくださいよ」
「無視はしていませんから」
 雛ノ森さんをぞんざいにあしらって、再び、桃家さんと向き合った。
「それで、お話というのは……」
 そう聞いたのだが、ゆるふわウェーブの桃家さんはモジモジして口を開く気配がない。緊張しているのだろうか。私も学生の頃は、先生はもちろん、家族以外の大人と話すのは緊張したものだ。それも、今や立場は逆転し、私が緊張させる側となってしまった。まさか、大人の立場だと、こうも不毛な行為だとは思わなかった。
「えっと……」
 こういうとき、私の先生はどうやって緊張を和らげてくれたか思いだそうとしていたが、そこは同行者である雛ノ森さんが気を利かせてくれた。
「桃家さん、心配しなくても大丈夫ですよ。先生はそんな人ではありませんから」
「そんな人って……」
 私は生徒にどんな人と思われているのか気になるところではあるが、悲しくなるので追求はしないでおこう。
「私、やっぱりやめておこうかな……」
「今まで気になっていたんでしょ? ここまで来て言わなかったら後悔しますよ」
 桃家さんは緊張で大変なのだろうが、見ているこちらは不毛なので、正直もう帰りたい気持ちだ。だが、そういった態度が話しにくさの原因になっていることぐらい分かっている。
 それに、桃家さんの話がただの談笑だとは限らない。雛ノ森さんが関係していると言うことは、もしかすると、探偵部の先輩やあの白骨死体と関係があるかもしれない。
 教師として、我慢して話をしてくれるのを待つしかない。
「あの……スキンケアはどんなことをしているんですか?」
「……え?」
 予想外の質問。そして、予想外はそれだけには止まらなかった。
 なぜかは分からないが、桃家さんの声と同時に教室中の生徒たちが一斉にこちらをへと視線を向けた気がする。
「みなさん、ずっと気になっていたんですよ。嘘偽りなく答えてください、先生」
「そう言われても……スキンケアなんて、やっていませんよ?」
 嘘偽りなく言ったのだが、疑心の目がより一層強くなった気がする。
 そして、これが我慢の限界だと言わんばかりに、教室の至る所から声が上がった。
「先生、髪つやつやですよね。シャンプーリンスコンディショナーは何を使っているんですか?」
「お肌も白いですし、特別な日焼け止め対策をされているんですか?」
「爪のお手入れは?」
「スタイル維持の秘訣は?」
「化粧水とか乳液は?」
 濁流のように質問が押し寄せてきた。
 今までは、いまいち生徒と馴染めていなかったので、質問責めとはいえ、こんなに話しかけられたのは嬉しい。嬉しいのだが、期待に添える答えはできそうにない。
 多種多様な質問だが、そのどれも、私の答えは一言で済む。
「特別なことは何も……」
 嘘偽りのない言葉だったのだが、雛ノ森さんが生徒全員の総意と言わんばかりの勢いで、私を指さしてきた。
「ダウト! ダウトです、先生!」
「ダウトって……私は何も嘘は……」
「いいえ、嘘です。特別なことはしていないといいながら、実は普通ではないことをしているパターンですよ、先生は。嘘はいけません、嘘は。ですから包み隠さず全て話してください」
 次の授業もあるというのに、私はとんでもない生徒に絡まれてしまっていたようだ。
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