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英華女学院の七不思議 24
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本心かどうかは分からない言葉に甘え、私は江口刑事と共に学校の敷地内を歩いた。
ついた場所は生徒指導室。昨日もそうだったが、事情聴取はここで済ませるつもりのようだ。
「それじゃあ、私は鍵を取ってきますんで」
「いや、その必要はない」
江口刑事が指さした先を見ると、引き戸に隙間が開いていた。これが刑事の観察能力と言うものだろうか。もうすでに鍵が開いているとすぐに見破った。
「いつまでも立ち話してちゃ申し訳ないからな。さっさと入ろう」
そういって、ノックをしてすぐにドアを開けた。
「お邪魔しますよっと。おや、お嬢さん。もう着いてるなんて、早いね」
私も江口刑事の横から生徒指導室の中を覗いた。
当然のことだが、そこには見覚えのある生徒が座っていた。
「雛ノ森さん」
「先生! 先生もご一緒だったんですね」
直接発見したのは私だが、雛ノ森さんと一緒だったのは事実だ。彼女にも話を聞く必要があるのだろう。
「やっぱり、先生を連れてきて正解だったな」
「そう、ですか?」
「そうだよ。緊張されちゃまともに話も聞けないからな。この様子なら話も楽にできそうだ」
この学校は女子校なので、男性との接触が限りなく少ない。それが親には逆に変な虫が付かないといい評価を受けているのだが、それがいいことだけとは限らない。男性との接触が少ないことにより、男性を苦手と感じている生徒が少なからずいる。これもこの学校が抱えている問題の一つだ。
「それじゃあ、お話を聞かせてもらいたいんだけど……あぁ、もちろん、お嬢さんを疑っているわけじゃないから。それと、この先生もね」
「そうなんですね。それは……よかった」
自分に否はなくても警察を前にすると誰でも不安を抱くものだ。それをこの江口刑事は最初に払拭した。流石はプロというべきか。
「まずは、この写真を見ていただきたいんですよ。亡くなられた方の所持品に生徒手帳がありましてね。その生徒の写真というのがこれなんですが……」
雛ノ森さんに見せた写真は私が見たものと同じ。2年前の3年生なんて雛ノ森さんも知っているはずがない。そう思っていた。
「これ……先輩……」
それは私たちの想像していた言葉ではなかった。
「やっぱり、先輩、あの別館に行ってたんだ……」
「そんなはずはない!」
思わず、声を荒げてしまった。でも、それだけ、私は動揺していた。2年前に失踪した生徒の白骨死体が1週間前に雛ノ森さんと会っているはずがない。
「まあ、落ち着いて、橋本先生。それで、先輩の話を少し聞かせてもらってもいいかな?」
「は、はい……」
私が動揺して頭を悩ませている間、雛ノ森さんは先輩の話を江口刑事に説明した。
ついた場所は生徒指導室。昨日もそうだったが、事情聴取はここで済ませるつもりのようだ。
「それじゃあ、私は鍵を取ってきますんで」
「いや、その必要はない」
江口刑事が指さした先を見ると、引き戸に隙間が開いていた。これが刑事の観察能力と言うものだろうか。もうすでに鍵が開いているとすぐに見破った。
「いつまでも立ち話してちゃ申し訳ないからな。さっさと入ろう」
そういって、ノックをしてすぐにドアを開けた。
「お邪魔しますよっと。おや、お嬢さん。もう着いてるなんて、早いね」
私も江口刑事の横から生徒指導室の中を覗いた。
当然のことだが、そこには見覚えのある生徒が座っていた。
「雛ノ森さん」
「先生! 先生もご一緒だったんですね」
直接発見したのは私だが、雛ノ森さんと一緒だったのは事実だ。彼女にも話を聞く必要があるのだろう。
「やっぱり、先生を連れてきて正解だったな」
「そう、ですか?」
「そうだよ。緊張されちゃまともに話も聞けないからな。この様子なら話も楽にできそうだ」
この学校は女子校なので、男性との接触が限りなく少ない。それが親には逆に変な虫が付かないといい評価を受けているのだが、それがいいことだけとは限らない。男性との接触が少ないことにより、男性を苦手と感じている生徒が少なからずいる。これもこの学校が抱えている問題の一つだ。
「それじゃあ、お話を聞かせてもらいたいんだけど……あぁ、もちろん、お嬢さんを疑っているわけじゃないから。それと、この先生もね」
「そうなんですね。それは……よかった」
自分に否はなくても警察を前にすると誰でも不安を抱くものだ。それをこの江口刑事は最初に払拭した。流石はプロというべきか。
「まずは、この写真を見ていただきたいんですよ。亡くなられた方の所持品に生徒手帳がありましてね。その生徒の写真というのがこれなんですが……」
雛ノ森さんに見せた写真は私が見たものと同じ。2年前の3年生なんて雛ノ森さんも知っているはずがない。そう思っていた。
「これ……先輩……」
それは私たちの想像していた言葉ではなかった。
「やっぱり、先輩、あの別館に行ってたんだ……」
「そんなはずはない!」
思わず、声を荒げてしまった。でも、それだけ、私は動揺していた。2年前に失踪した生徒の白骨死体が1週間前に雛ノ森さんと会っているはずがない。
「まあ、落ち着いて、橋本先生。それで、先輩の話を少し聞かせてもらってもいいかな?」
「は、はい……」
私が動揺して頭を悩ませている間、雛ノ森さんは先輩の話を江口刑事に説明した。
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