英華女学院の七不思議

小森 輝

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英華女学院の七不思議 23

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「橋本先生が見つけた死体のことなんだがな。あぁ、無理に思い出さなくてもいいから」
 あの死体、落ちた先にあった骸骨のこと。無理に思い出そうとしなくても分かる。あの光景は、もう瞼の裏に焼き付いている。
「警察の方で死体を調べたんだがな、身元が分かったんだ」
「もう分かったんですか?」
 私の想像以上に科学は進歩して、警察の捜査技術も飛躍的に上達したのだろう。そう思いたかった。
「あぁ、遺留品の中に生徒手帳があったんだよ」
「生徒手帳だけで判断したんですか?」
「頭蓋骨や骨盤の形から女性のものだと分かるし、骨の長さから女子高生の身長と考えて違和感はない」
「それだけで断定って……」
「あぁ、もちろんDNA鑑定で結果がでるまで断定はできないけどね。でも、経験上、間違いないだろうね」
 こうも簡単に雛ノ森さんの先輩がどこの誰か分かるなんて思わなかった。
「話が脱線したな。本題に戻ろう。生徒手帳から分かった身元なんだが、一応聞いておく。この少女に見覚えはないか?」
 渡されたのは1枚の写真。そこには女子高生らしき少女が写されていた。黒い綺麗な長髪。大人っぽい雰囲気。誰にでも当てはまるのだろうが、雛ノ森さんから聞いた特徴に当てはまる。
 ただ、3年生には出会わないので見覚えがない。
「すいません。見覚えはありません」
「そりゃそうだよな……。彼女の名前は佐々木涼子。この学校の3年生」
 やはり、雛ノ森さんの先輩は3年生だった。なら、なぜ居なくなったことに雛ノ森さん以外、気づかなかったのか。
 その答えは、勘違いだった。
「ただし、2年前のな」
「2年前……」
 頭が混乱してきた。
 2年前。2年前と言うことは、私はまだ大学生。そして、雛ノ森さんも中学生。二人ともこの学校にはいない。2年前の3年生と接点なんてあるはずない。
 いつから私は勘違いしていたのだろうか。あんな白骨死体が1週間でできあがるはずがない。あの白骨死体は雛ノ森さんの先輩であるはずがない。
「あの死体は2年前に失踪した3年生の佐々木涼子だろう。白骨の進行度から考えて、時期も近い」
「そうなんですね」
 雛ノ森さんの先輩が死んでいなかったのはよかったのだが、こんな短時間でゴールとスタートを行き来するなんて思わなかった。
「まぁ、そういうわけだ。この件に関して、橋本先生は関係ないと俺は考えているわけだ。疑いが晴れてよかったな」
「は、はい……」
「浮かない顔だな。まあ、自分の生徒を巻き込んでしまったんだからな。そうだ。これから一緒にいた橋本先生の生徒にも事情聴取を聞きに行くんだが、一緒に来ますか?」
「はい。お邪魔にならなければ」
「邪魔と言うより、むしろありがたいな。自分の先生が一緒にいれば話しやすいだろうからね」
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