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英華女学院の七不思議 17
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「七不思議と言えば、動く人体模型とか、音楽室の目が光る肖像画とか、あとは……」
私も小学生のころにあった学校の会談によく怖がったものだ。ただ、もうほとんど覚えてはいない。七不思議と言いながら、私が思いつくのは二つしかなかった。
「そういうマイナーなものはやめようって話をしていて……」
「じゃあ、どういうものがあるんですか?」
「えっと……私たちが話していた七不思議は、夜に光る校舎の窓、トイレで呻く謎の声、立ち入り禁止の別館に住む少女、女子寮に隠された秘密の扉、校舎裏の謎の空き地、鍵をかけられた屋上です」
「あれ……」
聞いた七不思議を指折りしながら数えていくと六つしかないことに気づいた。
「あぁ、七不思議の七つ目がない不思議ってやつですね」
「いえ……いや、そ、そうですね」
ばつが悪そうな苦笑いをしているが、今は問いつめる必要はないだろう。
「でも、七不思議って、探偵部よりオカルト研究部みたいですね」
「それ、先輩に言っちゃだめですよ。オカルト研究部って名前は低俗だって怒るんです。名前よりもやっていることの方が重要だって私は思うんですけど……。先輩は世間体とかちょっぴり気にする人みたいなんです」
「なるほど……」
何となく、先輩の人物像が見えてきた。お嬢様というだけあって、世間体はどうしても気になるのだろう。まだ高校生だというのに大変な人生だ。
「あんまり恥じることはありませんよ。私も学生時代には七不思議を作ったりしましたからね」
「いえ、私たちが作ってるわけじゃないんです。クラスメイトとか友達から聞いた実体験とかがほとんどです」
「じ、実体験?」
実体験とは言葉そのままの意味。実際に体験したということ。雛ノ森さんたち探偵部が作った七不思議は実体験を元に作られたということ。
「実体験っていってもそんな大したことじゃないですよ。校舎裏の謎の空き地とか鍵をかけられた屋上なんかは実際にそうなだけですし」
「それはそうですけど、その他とか……」
「それを調べるのも探偵部の活動の一部ですからね」
「調べるって……。七不思議をですか?」
「はい」
「例えば、夜に光る校舎の窓とかトイレで呻く謎の声もですか?」
「はい。ちなみに、その二つは調査済みです」
「はぇ……」
現役女子高生という活力は時に想像もできない行動力を見せる。私も5年ほど前までは同じ行動力を持っていたなんて考えられない。
「ちなみに、夜に光る校舎の窓は見回りをする教師の方の懐中電灯の明かりで、トイレで呻く謎の声は普通に誰かがトイレに入っているだけでした」
「一つ一つ調べるんですね。でも、校則違反になるようなことはダメですよ。夜の校舎なんて絶対にダメですからね」
「大丈夫です。私たちも愚者ではないですから。夜に光る校舎の窓も、視認は寮内から出来ましたし、理由も先生から聞きましたから」
「意外と規則はちゃんと守るんですね」
廊下を走ったり授業を抜け出したりする雛ノ森さんだが、夜に寮を抜け出したり立ち入り禁止の場所に入ったりはしていなさそうで安心した。
「はい……ただ、次に調べようって話していた立ち入り禁止の別館に住む少女なんですけど……」
「立ち入り禁止の別館……確か、東にある林の奥に老朽化で立ち入りが禁止になっている建物があるって話は聞いたような気がしますね……」
お嬢様学校というだけあって、敷地も広い。敷地が広ければ建物も多い。そして、古くなった建物は改装されず使われなくなることもある。なんの為にあるか分からないような小屋は多い。ただ、別館というほどの大きな建物であれば、東にある建物で間違いないだろう。
「その建物、調べたら昔は寮として使われてたみたいなんです。でも、そこに住む少女のことはなにも分からなくて……」
「もしかして、入ったんですか?」
「いえ、まだ……先輩は行く気だったみたいなんですけど、私は反対してて……」
話を聞いていなかったので知らなかったが、どうやら喧嘩別れのようなものだったようだ。それなら心配する気持ちも倍増しているだろう。
「それで、土日休んで月曜日になったら来てくれなくて……もしかして」
その「もしかして」の後にくる言葉は聞かなくても分かる。もしかして、立ち入り禁止の別館に行ったんじゃないのか。
私も小学生のころにあった学校の会談によく怖がったものだ。ただ、もうほとんど覚えてはいない。七不思議と言いながら、私が思いつくのは二つしかなかった。
「そういうマイナーなものはやめようって話をしていて……」
「じゃあ、どういうものがあるんですか?」
「えっと……私たちが話していた七不思議は、夜に光る校舎の窓、トイレで呻く謎の声、立ち入り禁止の別館に住む少女、女子寮に隠された秘密の扉、校舎裏の謎の空き地、鍵をかけられた屋上です」
「あれ……」
聞いた七不思議を指折りしながら数えていくと六つしかないことに気づいた。
「あぁ、七不思議の七つ目がない不思議ってやつですね」
「いえ……いや、そ、そうですね」
ばつが悪そうな苦笑いをしているが、今は問いつめる必要はないだろう。
「でも、七不思議って、探偵部よりオカルト研究部みたいですね」
「それ、先輩に言っちゃだめですよ。オカルト研究部って名前は低俗だって怒るんです。名前よりもやっていることの方が重要だって私は思うんですけど……。先輩は世間体とかちょっぴり気にする人みたいなんです」
「なるほど……」
何となく、先輩の人物像が見えてきた。お嬢様というだけあって、世間体はどうしても気になるのだろう。まだ高校生だというのに大変な人生だ。
「あんまり恥じることはありませんよ。私も学生時代には七不思議を作ったりしましたからね」
「いえ、私たちが作ってるわけじゃないんです。クラスメイトとか友達から聞いた実体験とかがほとんどです」
「じ、実体験?」
実体験とは言葉そのままの意味。実際に体験したということ。雛ノ森さんたち探偵部が作った七不思議は実体験を元に作られたということ。
「実体験っていってもそんな大したことじゃないですよ。校舎裏の謎の空き地とか鍵をかけられた屋上なんかは実際にそうなだけですし」
「それはそうですけど、その他とか……」
「それを調べるのも探偵部の活動の一部ですからね」
「調べるって……。七不思議をですか?」
「はい」
「例えば、夜に光る校舎の窓とかトイレで呻く謎の声もですか?」
「はい。ちなみに、その二つは調査済みです」
「はぇ……」
現役女子高生という活力は時に想像もできない行動力を見せる。私も5年ほど前までは同じ行動力を持っていたなんて考えられない。
「ちなみに、夜に光る校舎の窓は見回りをする教師の方の懐中電灯の明かりで、トイレで呻く謎の声は普通に誰かがトイレに入っているだけでした」
「一つ一つ調べるんですね。でも、校則違反になるようなことはダメですよ。夜の校舎なんて絶対にダメですからね」
「大丈夫です。私たちも愚者ではないですから。夜に光る校舎の窓も、視認は寮内から出来ましたし、理由も先生から聞きましたから」
「意外と規則はちゃんと守るんですね」
廊下を走ったり授業を抜け出したりする雛ノ森さんだが、夜に寮を抜け出したり立ち入り禁止の場所に入ったりはしていなさそうで安心した。
「はい……ただ、次に調べようって話していた立ち入り禁止の別館に住む少女なんですけど……」
「立ち入り禁止の別館……確か、東にある林の奥に老朽化で立ち入りが禁止になっている建物があるって話は聞いたような気がしますね……」
お嬢様学校というだけあって、敷地も広い。敷地が広ければ建物も多い。そして、古くなった建物は改装されず使われなくなることもある。なんの為にあるか分からないような小屋は多い。ただ、別館というほどの大きな建物であれば、東にある建物で間違いないだろう。
「その建物、調べたら昔は寮として使われてたみたいなんです。でも、そこに住む少女のことはなにも分からなくて……」
「もしかして、入ったんですか?」
「いえ、まだ……先輩は行く気だったみたいなんですけど、私は反対してて……」
話を聞いていなかったので知らなかったが、どうやら喧嘩別れのようなものだったようだ。それなら心配する気持ちも倍増しているだろう。
「それで、土日休んで月曜日になったら来てくれなくて……もしかして」
その「もしかして」の後にくる言葉は聞かなくても分かる。もしかして、立ち入り禁止の別館に行ったんじゃないのか。
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