英華女学院の七不思議

小森 輝

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英華女学院の七不思議 16

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「先輩は私より少し身長が高くて、髪は腰よりも少し短い綺麗な黒色の長髪でした」
「顔に特徴なんかはありませんでしたか?」
「特徴と言われましても……可愛らしいとしか……」
「可愛らしい……」
「あ、でも、可愛らしいと言っても、子供っぽいと言うわけではなく……どちらかというと、美人さんで大人の女性という感じです」
「なるほど……」
 雛ノ森さんから聞いた先輩の話から想像して人物像を作るのだが、いまいち掴めない。黒髪のロングで身長もそれほど高くなく大人っぽい女性。そんな女子生徒はたくさんいる。
「性格とかはどうですか? どんな話をしていたとか」
「先輩は……優しい人です。入学してすぐで不安だった私を探偵部に誘ってくれたのは先輩でした」
 お嬢様で親から離れて暮らすことを楽しみにしている生徒が多いと言っても、それが不安ではないということはない。高校生が親から離れて生活をしなければならないというのは誰でも少なからず不安を感じるものだ。雛ノ森さんはその不安が大きかったのだろう。そして、それに気づいて話しかけてくれたのが先輩という訳か。本来なら教師の、それも担任や副担任の私が気をつけなければならないことだったのだが、私は私で新任で新生活が始まっていたので、誰かにかまう余裕がなかったのだ。それは申し訳ない。だからこそ、今回は私が力になる番だ。
「そういえば、探偵部というのはどういった活動をしているんですか?」
「基本的にはおしゃべりしたり勉強したり……。よく先輩に勉強を見てもらいました」
 雛ノ森さんの成績は先輩のおかげという部分が大きいようだ。そうなると、教えていた先輩も成績がいいかもしれない。
 だが、私が知りたいのはそういった日常ではない。
「探偵部という名前の通り探偵のようなことはしていなかったのですか?」
「いえ、その……探偵とは関係ないんですけど……」
「些細なことでもいいので教えてください」
 探偵らしくないことをしていたのだろう。でも、少しでも情報を共有しておきたい。
「……興味本位で、本気でやっていたわけではないんですけど……」
 きな臭い感じがする。女子高生が行う悪いことといえば、一つ頭に浮かぶ。この学校ではいじめなんかは聞かないが、それに似たような嫌がらせであれば、断じて許してはいけない。
 心の準備をして、聞く体制に入る。
「学校の七不思議を調べているんです」
「七不思議、ですか」
 私が想像していたような悪事ではなかった。まあ、よく考えれば、雛ノ森さんのような気遣いができる生徒が悪いことをすることは……廊下を走ったり授業を抜け出したりはしているようだが、注意したらいいようなことぐらいだ。私の生徒を信じる心が足りなかった。
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