英華女学院の七不思議

小森 輝

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英華女学院の七不思議 10

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 日は変わり、昼休み。
 私は、まだ学年写真の話を雛ノ森さんに話せていなかった。気が変わった、話すのが気が引ける、会うのが気まずい、と言うわけではない。単に雛ノ森さんのクラス、1年3組では今日の数学の授業が午後からだから。わざわざ呼び出すと、悪い噂が広がってしまうかもしれないという私の配慮だ。
 そういうわけで、雛ノ森さんにいい知らせをするのは午後の楽しみに。今は別の楽しみがある。
 昼休み、と言えば、やることは生徒も教師も一緒。お昼ご飯の時間だ。
 私はお昼ご飯を食べるために学食へとやってきていた。
 学食はいつもそれなりに込んでいる。しかし、それは当たり前だ。この学校の学食は全てただ。お金がかからないと言うこと。もちろん、生徒だけが対象ではなく、教師も同じく、お金を払わなくていい。流石、お嬢様学校と言ったところか。太っ腹だ。おかげでお昼代も浮いて、お財布が想像以上に膨れ上がった。ただ、今はお腹の方を膨らませたいので、幸せな匂いがする方へと急いだ。
「あっ! 橋本先生!」
 学食の入り口で、私を見つけて嬉しそうに手を振る少女がいた。
「雛ノ森さん。奇遇ですね」
「え……そ、そうですね、奇遇ですね」
 雛ノ森さんはばつが悪そうな笑顔をしている。その表情で奇遇ではないことは察することができた。私を待ってくれていたのだろう。学食になら必ず来ると分かっていたから。
 このことが私の思い上がりではないと信じて、話をしよう。
「もしよかったら、お昼、ご一緒しませんか? お昼はいつも一人で、少し寂しいと思っていたんです」
「は、はい! もちろんです!」
 これで断られていたら、恥ずかしさのあまり、私の自意識が氷のように溶けてしまっていたかもしれない。
「よかった……。それじゃあ、先にご飯を取りに行きましょうか」
「分かりました。先生は、お昼は何を?」
「私は日替わり定食です。雛ノ森さんは?」
「私はサンドウィッチをと思いまして……」
 少ないんじゃないのかと言いそうになったが、慌てて飲み込んだ。女子校でお嬢様と言っても、女子高生ということには変わらない。食事なんて、誰よりも気にしているお年頃だ。
「では、受け取る場所は違いますね。後で合流しましょうか」
「いえ、私はサンドウィッチだけなので、たぶんこちらの方が早いと思います。なので、後で私が迎えに行きますね」
「ありがとうございます。では、また後ほど」
「はい。後ほど」
 それで私は雛ノ森さんと別れた。
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