27 / 29
リリィの答え②
しおりを挟む
ナナは、リリィの言葉に圧倒されていたがようやく口を開いた。
「あなたに願い事はないの?何も望まないの?」
「何もない。何もないのよ。ナナ」
その即答にナナは、驚いて目を見開いたまま顔を下に向けた。
「私・・・初めて、人を見誤ったわ」
リリィは、ふうっと小さく息を吐いた。
「それは私のこと?」
「違う。今まで私が鈴を渡したこの時代の人」
「ねえ、ナナ、この時代の人はみんな願い事があった?」
「ええ。平和なのにみんな何かしら願いごとがある。渡したらすぐ使っていたわ。私が姿を消す前にね」
「例えばどんな願いごとがあったの?」
「一生暮らせる分のお金がほしいとか、仕事で手柄をあげたいとか、いじめをなくしてほしいとか・・・色々」
「ふうん。そっか」
「でも」
ナナは顔を上げた。
「リリィと話していて私が叶えた願いは別に叶えなくても良かったんじゃないかと思えてきたわ。だって、どれも叶える必要なんてなかったんだもの。みんな本当に恵まれている人ばかりだった。平和すぎて病む人が多い時代なのだと思っていたけど、そうじゃなかった。私、ずっと見誤っていた」
ナナはリリィを見つめた。
「願いを叶えるのではなくて、その人たちに教えてあげるべきだったのね。あなたは恵まれているって」
そう言ったナナの顔はもうリリィを哀れんでなどいなかった。
「あなたに願い事はないの?何も望まないの?」
「何もない。何もないのよ。ナナ」
その即答にナナは、驚いて目を見開いたまま顔を下に向けた。
「私・・・初めて、人を見誤ったわ」
リリィは、ふうっと小さく息を吐いた。
「それは私のこと?」
「違う。今まで私が鈴を渡したこの時代の人」
「ねえ、ナナ、この時代の人はみんな願い事があった?」
「ええ。平和なのにみんな何かしら願いごとがある。渡したらすぐ使っていたわ。私が姿を消す前にね」
「例えばどんな願いごとがあったの?」
「一生暮らせる分のお金がほしいとか、仕事で手柄をあげたいとか、いじめをなくしてほしいとか・・・色々」
「ふうん。そっか」
「でも」
ナナは顔を上げた。
「リリィと話していて私が叶えた願いは別に叶えなくても良かったんじゃないかと思えてきたわ。だって、どれも叶える必要なんてなかったんだもの。みんな本当に恵まれている人ばかりだった。平和すぎて病む人が多い時代なのだと思っていたけど、そうじゃなかった。私、ずっと見誤っていた」
ナナはリリィを見つめた。
「願いを叶えるのではなくて、その人たちに教えてあげるべきだったのね。あなたは恵まれているって」
そう言ったナナの顔はもうリリィを哀れんでなどいなかった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる