オメガ殿下と大罪人

ジャム

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破綻する婚姻の義

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曲芸の人「めでたいめでたい祝い事!ハルト殿下とイシュリット王国国王の婚姻の義だよ!」

軽快な音楽と共に綺麗に装飾された馬車がレムリック王国を回る
これは婚姻のパレード・・・
めでたい婚姻の義・・・

「・・・」

僕はこの婚姻が嫌だった
当たり前だ
王国を・・・国民を守るために仕方なく婚姻するのだから

イシュリット国王「ハハハ!」

イシュリット国王は嬉しそうに手を振って自分の地位や力を見せびらかしている
僕は・・・この人と・・・
そう思うだけで心が締め付けられる

イシュリット国王「おぬしも少しは嬉しそうな顔をしたらどうだ?」

「・・・」

嬉しい顔なんて・・・できるはずがない
この婚姻は僕の望んだことじゃないのだから

イシュリット国王「おぬしがそんな顔をしていては国民が不安な顔をするぞ?」

僕はレムリック王国国民を見た

国民「・・・」

みんな暗い顔をしていた

イシュリット国王「いいのか?おぬしは国民の笑顔のために婚姻を決めたのであろう?」

イシュリット国王は不気味な笑みを浮かべている

「・・・」

僕は深呼吸をし笑顔で国民に手を振った
それでも国民は暗い顔のままだった
誰もこの婚姻を望んでいない
誰も喜んではいないのだ

父上「・・・」

父上は今までに見た事のない怖い顔をして僕たちを見ていた

イシュリット国王「レムリック王よ!どうだ?この私に負けた気分は?」

父上「・・・」

イシュリット国王「いや~おぬしの負けが見れるだけじゃなく、おぬしの最愛の息子まで嫁にもらって・・・ホント最高だな!!」

父上「・・・」

父上はなにも言わず背を向けどこかへ行ってしまった

イシュリット国王「フン!負け犬が!」

「・・・」

イシュリット国王「おぬしも諦めるんだな。もうおぬしは私の物だ!っ!?」

少女「殿下を返せ!!」

その時、イシュリット国王の顔に石が当たった
どうやら花売りの少女が石を投げたらしい

イシュリット兵「無礼者!!!国王陛下に石を投げるとは!!」

少女「殿下を返してよ!!殿下が可愛そうだよ!!」

イシュリット兵「っ・・・この!」

イシュリット国王「構わぬ。切れ」

「え!?」

イシュリット兵「はっ!」

イシュリット兵は剣を持ち少女へ近づく

「待って!!止めて!!」

僕は叫んだ
でも、イシュリット兵の振るう剣は止まらなかった

「やめて!!!」

カキンッ!!

僕は結界を張り少女を守った

イシュリット国王「愚民一人の為に魔法を使うとは・・・哀れだな」

「あなたの考えはよくわかりました。国民に対する思いも。僕はその考えに賛同できません!」

イシュリット国王「おぬしは我が妻となるのだ。それは国王・・・つまりこの私に従うということ」

「・・・」

イシュリット「夫として命じる。今すぐ結界と解け」

「・・・」

僕は結界を解かなかった

イシュリット国王「命令だ。解くのだ」

「・・・できない」

イシュリット国王「・・・」

「僕は国民を守るためにあなたと結婚します。でも、それが叶わないというのであれば・・・」

人差し指をイシュリット国王に向けた

イシュリット国王「わかっているのか?その行動の意味を」

「わかってる」

ジャキンッ!

周りにいるイシュリット兵たちが一斉に剣を僕に向ける

イシュリット国王「その度胸は認めよう。だが、おぬしは間違っている」

「・・・」

イシュリット国王「こんなガキ一人のために自らの命を捨てると?馬鹿げている」

「あなたにとっては愚かなことなのかもしれない。でも、僕にとっては誇りだ。王は国民一人一人に寄り添うものなんだ。でもあなたは国民を平気で切り捨てる。そんなの間違ってる!!」

イシュリット国王「・・・また戦争が起こるぞ?」

「覚悟の上です。あなたは僕の逆鱗に触れた。僕は・・・あなたを許さない!!」

イシュリット国王の周りに無数の光の剣をだし刃先を向ける

イシュリット国王「話には聞いていたが・・・これが輝きの剣か・・・」

「あなたは国王にふさわしくない。いや、人として間違っている。そんな人が国王なんておこがましい!」

イシュリット国王「ではおぬしは自分こそ王にふさわしいと?」

「・・・」

僕はその問いに答えられなかった

イシュリット国王「・・・フン!答えられない者が王族とは・・・レムリック王国を攻め落とすのも容易くなったのもうなずける」

「っ!」

イシュリット国王「それに・・・」

「グハッ!」

それは一瞬だった
僕の左頬にものすごい衝撃が走った
そして僕は馬車から地面に叩きつけられた

「い・・・」

イシュリット国王「おぬしではわしには勝てぬ!」

馬車の上には大きな大槌を担いだイシュリット国王がいた
先ほどの雰囲気とは違った禍々しい雰囲気だ

イシュリット国王「わしの相棒だ。この大槌で何千、いや、何万の命を刈り取ってきた」

「・・・」

イシュリット国王「レムリックの民ども!見ておれ!お前たちの反逆の罪をこのレムリック殿下が償うところを!押さえろ!」

イシュリット国王の合図で僕はイシュリット兵に押さえつけられた

「っ!離せ!!」

イシュリット国王「安心しろ。殺しはしない。だが、二度と逆らえないように腕の一本はいただいておかないとな」

馬車から降りたイシュリット国王は大槌を振り上げる

イシュリット国王「これでレムリックの民の静かになるだろう」

「・・・」

僕は目を瞑った
この後来る痛みに耐えるために

イシュリット国王「・・・素直に受け入れるのだな?」

「あなたがどんなことをしようと僕は絶対に折れません」

イシュリット国王「・・・」

「僕はレムリック王国次期国王ハルト・レムリックだ!そう簡単に従わせられると思うな!!」

イシュリット国王「・・・それは楽しみだ!わしは攻めるのが好きなんだ!戦争でも・・・生活でもな!お前がボロボロになって懇願してきてもわしはやめるつもりはない!!」

そういい大槌が振り下ろされた

ドゴォォォォォォン!!!!

周りに地響きと爆音が響き渡り、土煙が舞った・・・
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