オメガ殿下と大罪人

ジャム

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宣戦布告

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あれから一ヵ月が過ぎた
僕はいつものようにロトと一緒に城下町に来ていた

民「よかったらこれをどうぞ!」

「わ~おいしそうなクッキー!ありがとう!」

その時兵士が慌てて馬でお城に向かって行くのが見えた
その兵士はケガをしているように見えた

「ロト・・・」

ロト「まいりましょう」

そういうと僕とロトはお城に急いで戻った
城門には馬が一頭いてところどころケガをしていた

「この傷は?」

城門兵「さきほど兵の一人が大けがをして駆けつけてまいりました。事情を陛下に・・・と・・・」

「・・・この馬を早く手当てしてあげて!」

そういい僕とロトは父上のいる謁見の間に向かった

「父上!」

父上「ハルトか。ちょうどいいところに戻ってきてくれた」

「なにかあったの?」

父上「ああ。いまこの者が知らせを持ってきてくれた」

兵士「殿下・・・」

「ケガは大丈夫?早く手当てを・・・」

兵士「いえ、それより知らせを・・・」

父上「申してみよ」

兵士「は!先ほど南監視所が襲撃されました・・・」

父上「なに!?南監視所が・・・何者の仕業かわかるか?」

兵士「はい・・・イシュリット兵の集団です!」

父上「なんということだ・・・生き残りはお主だけか?」

兵士「はい・・・私だけ・・・がはっ!」

その時ロトが兵士を剣で刺した

父上「!?」

「!?ロト!なんで!」

ロト「お前・・・イシュリット兵だな?」

「え!?」

父上「・・・」

兵士「・・・よく、見破ったな・・・」

ロト「ケガをしたにしては出血が少ない・・・いや、していない」

敵兵「ハハハ、それだけで見破るとはな・・・」

ロト「どんなに血を身体に塗ろうと時間がたった血の臭いは違うんだよ」

敵兵「ハハ、ここまでは侵入できたのにな・・・」

ロト「お前が侵入してきた理由は・・・陛下か殿下だろう?」

敵兵「そうだよ!俺はレムリック王の暗殺、あとできればその息子の暗殺をしに来たんだ」

父上「では、南監視所の襲撃は?」

敵兵「それは本当だぜ?生き残りはいないがな!ハハハハハハハ!!」

父上「っ!」

「そんな・・・」

ロト「・・・」

ロトは無言で敵兵の首を切り落した
僕はそれを顔を手で覆って見ないようにした

父上「・・・宣戦布告・・・か」

ロト「・・・だと思われます」

家臣「陛下・・・どうされますか・・・?」

父上「南監視所が破られたということはこちらに攻めてくるのは時間の問題か・・・」

家臣「でしたら兵士を向かわせましょう!」

ロト「南監視所は確か森に囲まれた場所だと伺っています・・・」

家臣「ああ。それがあの場所の強みだったのだ・・・」

ロト「では、兵を向かわせるのはおやめになられた方が・・・」

父上「そうだな・・・森に敵兵が潜んでいる可能性がある・・・」

家臣「でしたら・・・守りを強化しましょう!」

父上「それがいいだろう・・・イシュリット王国は機械技術が進んでいる・・・新しい兵器を作ったのかもしれん・・・」

「・・・」

ロト「殿下・・・」

父上「ハルト・・・お前は部屋に戻って休みなさい・・・」

「・・・はい」

僕は部屋に戻ろうと歩きだすが足に力が入らずその場で力が抜けた
それをロトが支えてくれた

父上「ロト。ハルトを頼むぞ」

ロト「かしこまりました」

そして僕はロトに抱えられて自室に向かった
その間も僕は顔を手で覆っていた
部屋に着き

ロト「大丈夫か?」

「・・・」

ロト「ハルト?」

「気持ち悪い・・・」

ロトは僕の頭を撫でてくれた

ロト「あの時はああするしかなかった・・・」

「でも、なんでわかったの?」

ロト「一瞬だが殺気があった。それが陛下とハルトに向けられたからすぐにわかった」

「そうなんだ・・・ありがとう・・・」

ロト「俺の役目はハルト、お前を守ることだ。大切なハルトを守ることだ・・・」

そういうとロトは僕を抱き締めてきた
僕も抱きしめる

ロト「だから、怖がらないでくれ」

「怖がってないよ・・・」

ロト「でも、身体が震えてるぞ」

僕は本当は怖かった
これから起こるであろう戦争が・・・
その戦争で多くの命が失われることを・・・
その戦争でロトが死んでしまうかもしれないことを・・・

「・・・ロト・・・」

ロト「ん?」

「約束・・・憶えてるよね?」

ロト「ハルトの許しがない限り死ぬなって約束?」

「うん。まだ、許してないんだから・・・死んじゃダメだよ・・・」

ロト「わかってるよ・・・俺は・・・ハルトとの約束は守るよ・・・」

そしてしばらくして

コンコン

扉がノックされた
ロトが警戒をしながら扉を開ける

兵士「殿下、陛下がお呼びです」

ロト「・・・お前は・・・タグを見せろ」

そして

ロト「大丈夫です。城の兵士で間違いありません」

「よかった・・・父上のもとへ行こう」

僕は兵士とロトと共に父上の元に向かった

父上「ハルト」

「父上・・・」

父上「これから戦争が起こる・・・」

「・・・」

父上「お前だけでも逃げなさい」

「!!できません!」

父上「逃げなさい!今回はかなり大規模な戦争になる・・・お前は安全な場所に逃げるんだ」

「できません!民や父上、兵士の人たちを置いて僕だけ逃げるなんて・・・」

父上「ロトがいるだろう?」

「できません!僕はハルト・レムリック!37代王位継承者です!!」

父上「・・・しかし、お前がここに居ては・・・」

「王が国や民を見捨てて逃げるなんて・・・そんなの王でもなんでもない!ただの臆病者だ!」

父上「・・・しかし・・・」

「僕は逃げない!絶対に!」

父上「・・・わかった」

そういうと父上は立ち上がり僕に近づいて来た

父上「手を出しなさい」

僕は手を差し出した
父上は僕の手に指輪を置いた

「これは?」

父上「本来なら王位継承の義の時に渡すのだが・・・今は仕方ない」

その指輪はとても不思議な感じがした

父上「これは魔王の指輪。レムリック家が代々受け継いできた魔力が込められた指輪だ」

「これが・・・」

話には聞いていた・・・
これが伝説の指輪・・・
魔力が込められていて尽きることがないという・・・

父上「ああ。この指輪は選ばれし者しか扱えぬ。お前にはその資格がある」

「なんで今これを?」

父上「私は先陣を行く」

「!?」

父上「この城を空けている間はお前が指揮をとるのだ」

「僕にそんなこと・・・」

父上は僕の肩に手を置き

父上「お前ならできる。我が自慢の息子なのだから」

「父上・・・」

父上「もちろん死ぬつもりはない!帰ってきたら指輪は返してもらうぞ?」

「はい!」

父上「では出立の準備をする」

そういうと父上は広場を出て行った

家臣「殿下、陛下が居ない間は殿下だけが頼りです!」

「・・・うん!」

そして父上はたくさんの兵士を連れて前線に向かった・・・
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