崩壊した世界を共に

ジャム

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俺の家族

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・・・クルス視点・・・
「・・・これか」

俺は引き出しから手紙を取り出し開けた

「これは・・・親父から?」

字的に親父で間違いないだろう

・・・手紙・・・
我が息子 クルスへ
こんな手紙なんて迷惑だとお前は言うだろう。だが、どうしても書きたくなってしまった。
お前がこの家を出て行ってもう10年くらいになるな。
昔はよく喧嘩をしたな。
今思えば些細なことでいつも怒鳴ってしまっていた
すまないと思っている。
家業のことは気にしなくていい。
お前の人生だ。お前がやりたいようにやりなさい。
あ、でも、もし、結婚することがあるのなら、相手を紹介してほしい。
こんなこと言っていい立場ではないのはわかっている
でも、親として、知りたいんだ。
お前の選んだ相手をな。
・・・ほかに何を話していいのかわからなくなってきた
また、手紙を書く
迷惑かもしれないが、これからも定期的に送るつもりだ
返事は期待していない
これは俺が書きたくてやっているだけだからな
じゃあ・・・元気でな

父 バリス・ベアーより

・・・・・・・・・
「・・・親父・・・」

俺は手紙を握りしめた

「・・・ん?」

引き出しの奥にはもう一通手紙があった
その手紙は封が開いていなかった
封を開けてみると・・・

「これは・・・」

・・・手紙・・・
私の愛しい息子 クルスへ
お元気に過ごしていますか?
私もお父さんも元気に過ごしてます
お父さんはあなたが居なくなってからすっかり老け込んでしまいました
それに少し寂しそうにも見えます。
私も少し寂しいと思っています。
あなたが居た頃は怒号が家中に響いていましたね
それすら懐かしく感じます
軍ではどう過ごしていますか?
噂では『亜熊』と呼ばれているそうですね
私は誇らしく思うと同時に不安になります
どうか、身体に気を使ってくださいね?
いつか・・・また会える時を楽しみに待っています。

母 セリア・ベアーより

・・・・・・・・・
「おふくろ・・・」

俺は二通の手紙を握りしめて涙を流した

「ちゃんと・・・親孝行してやればよかった・・・俺は・・・親不孝者だ・・・」

声を押し殺し泣く
なんで俺は・・・親が嫌いだったんだ・・・?
家業のことだって、ちゃんと話し合えばよかったことなのに・・・
今思えば俺は一方的に拒んだ
親父の話を聞かず、家を飛び出した
それを深く後悔した
愛されてないと思っていた
だから家を出たのに・・・

「くっ・・・うっ・・・」

後悔してももう遅い
もう・・・両親は死んでいる
もう・・・話せない・・・

ハルト「クルスさん・・・」

「グスッ!ハルトか。どうした?」

俺は涙を拭いハルトを見た
ハルトは不安そうな顔をしていた

ハルト「大丈夫?」

「ああ。大丈夫だ」

そういいハルトの頬を撫でる

「心配かけたな」

ハルト「大丈夫。クルスさんは・・・大丈夫?」

「ああ。大丈夫だ」

そう言ったがハルト心配そうにしていた

「・・・」

俺はハルトの前に屈んだ

「ホントに大丈夫だ。少し、後悔してるが、仕方ないことだ」

ハルト「・・・」

ハルトは俺を抱き締めてきた

「ん?」

ハルト「無理しなくていいんだよ」

「無理なんてしてないよ?」

ハルト「じゃあ、なんで泣いてるの?」

「泣いて・・・!?」

俺は気づかないうちに泣いていたみたいだ

「っ・・・」

俺はハルトに抱き着き泣いた

「親父・・・おふくろ・・・」

ハルトは俺の頭を優しく撫でてくれる

「うぅ・・・」

しばらくハルトの胸で泣くと落ち着いて来た

ハルト「大丈夫ですか?」

「ああ。すまない。ありがとな」

俺はハルトを抱き締めながら立ち上がった

ハルト「え!?ちょっと・・・」

「もう少しだけ・・・」

ハルトを持ち上げた状態で強く抱きしめた
少ししてハルトを降ろした

「苦しかったか?」

ハルト「少し・・・」

「す、すまない・・・」

ハルト「気にしてないよ!」

そういい笑顔を俺に向けてくる
俺はその笑顔を見て笑顔になる

ハルト「?その手紙が?」

「ん?ああ。両親からの手紙だ」

ハルト「消印は・・・ないみたいだね」

「いつ書いたのかわからないが、俺が軍に入って10年くらいに書いてるみたいだから・・・ちょうど、核戦争が起こった年に書いたのは確かだな」

ハルト「クルスさんって何歳?」

「ん?25歳だ」

ハルト「あ、思ったより若っ!?」

俺はハルトの口を塞いだ

「それ以上は言うなよ?」

ハルトは頷く

「よく言われるんだ。老けてるって・・・」

ハルト「でも、25歳で亜熊って呼ばれるほどだから、すごく優秀だったんだね!」

「そう・・・なのかな。ただひたすらに前に進んでたからな・・・」

ハルト「でも、優秀だからあのシェルターに呼ばれたんだよ?たぶん!」

そういいハルトは可愛い笑顔を向けてくる

「と、なると、お前も優秀ってことになるな?」

ハルト「それはないと思うな。僕はただの14歳だもん!」

そういい俺に背を向けて部屋の出口に向かうハルト
その背中を見ながら

(優秀だよ・・・俺なんかより・・・)

そう思い俺はハルトの後を追った

キャリー「お手紙あった?」

「ああ。教えてくれて助かった」

キャリー「いいのよ。一通開いてないのあったでしょう?それは見てないから安心してね?」

「ああ。それは疑ってない」

キャリー「・・・あのね」

「ん?」

キャリー「関係あるかわからないけど・・・裏のお庭に骨があるの」

「・・・そうか」

確かめて・・・みるか
俺は庭に向かった

「・・・」

そこには人骨があった

「・・・骨盤的に男性・・・頭蓋骨的に・・・熊獣人だな。こっちは・・・同じ熊獣人で・・・女性か・・・」

ハルト「もしかして・・・クルスさんの?」

「・・・どうだろうな・・・確証がない・・・」

熊獣人でオス、メスであること以外わからない・・・

「・・・」

ここにいて熊獣人ってことはたぶん間違いない・・・とは思うけど・・・

ハルト「・・・なにか特徴とかないの?」

「特徴か・・・そうだな・・・」

俺は過去のことを思い出していた
特徴・・・

父『俺は昔頭を打ってヒビが入ったんだ』

「!?」

俺は昔の親父の武勇伝?を思い出した
そしてオスの熊獣人の頭蓋骨を確認した

「・・・あった!」

頭蓋骨にはヒビが入っていた

ハルト「それは?」

「昔親父が言ってたヒビだと思う」

でも、このヒビがそうとは限らない
何かの拍子にヒビが入っただけかもしれない

「・・・ん?」

カランカラン

頭蓋骨の中で何かが音を立てている

ハルト「なんの音?」

「さぁ・・・?」

俺は頭蓋骨を傾けその原因を探した
そして地面に何かが落ちた

「・・・!?」

それは金色に輝く歯だった

「親父だ・・・間違いない・・・」

その金歯は親父の奥歯に使われていた物だ
それも・・・

「・・・やっぱりな」

金歯にはおふくろの名前があった

「あの親父・・・おふくろを溺愛してたからな・・・」

でも、これではっきりした
この白骨死体は間違いなく俺の両親だ

ハルト「・・・埋めてあげよう」

「ああ」

俺とハルトで庭に穴を掘った
そこに二人を埋めた

「親父・・・おふくろ・・・ただいま」

墓の前に座り俺は『ただいま』と言った
一緒に住んでいた時には絶対に言わなかった言葉を・・・

ハルト「どうか・・・安らかにお休みください・・・」

ハルトは手を合わせてくれている

「親父、おふくろ。こいつはハルト。俺の嫁だ」

両親に恋人を紹介する
手紙で親父が願っていた事
それを叶えてやりたかった

ハルト「初めまして。ハルト・デュオスです。クルスさんとお付き合いをさせてもらってます」

「ハルト・・・ありがとう」

ハルトは両親に挨拶をしてくれた

「・・・ん?」

気が付くとハルトの隣にキャリーが居て手を合わせてくれていた

「お前も祈ってくれるのか」

キャリー「ええ。この家があったおかげで私と子供は生き延びられたんだもの」

「・・・ありがとう」

しばらく墓の前にいた

「・・・」

俺は過去のことを思い出していた
反抗していたこと、おふくろの料理、親父との釣り・・・

「俺・・・立派になれたかな?」

15歳の俺『立派な大人になってやる!お前みたいにはならない!』

父『そうかよ!勝手にしろ!バカ野郎が!』

母『待って!もう少しだけ!話を!』

15歳の俺『聞きたくない!』

父『ふん!高校にも行かないで立派な大人になれるわけないだろう!』

15歳の俺『やってみなきゃわからないだろう!!必ず立派な大人になって見返してやるからな!クソジジィ!』

そういい家を飛び出した
でも、なにが立派な大人なのか・・・
今も俺にはわからない・・・

「すまない・・・酷いことを言って・・・」

謝ってももう取返しが付かない

「・・・」

しばらくすると・・・

ハルト「クルスさん・・・」

ハルトが俺に声をかけてきた

「ん?」

ハルト「もう夕日が沈みます・・・」

「え・・・あ・・・そうか」

気が付いたら夕日がもう沈みだしていた

「しまった・・・基地に向かう予定だったのに・・・」

ハルト「それは明日でもいいと思う。今は好きなだけ・・・ね?」

「・・・すまないな」

俺は日が沈んでも墓の前で座り込んでいた

ハルト「ご飯・・・できましたよ」

「ああ・・・すまない」

俺はメシを受け取り食べる
ハルトは墓にも食べ物をお供えした

「すまない」

ハルト「うん・・・」

ハルトは何も言わず家に入って行った
俺は夜が明けるまで墓の前に座っていた・・・
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