恋は軍隊より強し!

ジャム

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決別・・・

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「うぅ・・・うっ・・・」

諦める・・・
そう決めたのに涙が止まらない
僕は自分でもわからない程、晴臣さんを愛しているんだ・・・
でも・・・もう・・・終わった・・・終わったんだ・・・

「もう終わりだ・・・もう・・・」

何度涙を拭っても零れ落ちてくる

「止まって・・・止まってよ・・・」

自分でもわかる
止められないことぐらい
でも・・・このままだと・・・

「晴臣さん・・・熊岡隊長が戻ってきちゃうよ・・・」

そして・・・

熊岡「陽翔!!」

「は、晴臣・・・熊岡隊長・・・」

熊岡「名前で呼んでくれよ・・・」

「もう・・・僕はあなたを信じません・・・名前なんて・・・呼びません」

熊岡「・・・すまない」

「謝罪は結構です・・・もう・・・終わったんです」

熊岡「まだ終わってない」

「もう終わりました・・・もう終わらせるんです」

僕はカバンから一枚の紙を取り出した
それは婚姻届けだ

熊岡「!?な、なんでそれを!?」

「僕の・・・お守りだったんです。でも・・・もういりません」

僕は婚約届を破ろうとした
その手を晴臣・・・熊岡隊長は止めてきた

熊岡「やめろ!!」

「離してください。もういいじゃないですか。お互いの為です」

熊岡「俺はお前が好きだ!」

「そうですか。でも、僕はもう・・・嫌いです」

熊岡「俺は好きだ」

「聞きました。でも」

熊岡「お互いの為と言うなら話を聞いてくれ!」

「聞くだけ無駄ですよ。もう終わったんですから」

熊岡「頼む・・・5分でいい。聞いてくれ・・・頼むよ・・・」

顔を上げると涙を流す晴臣さんがいた

「・・・わかりました。5分だけ時間をあげます。でも、5分過ぎたらなにも聞きたくありません」

僕は時計を5分にセットした

熊岡「ありがとう・・・」

「早く話してください。時間の無駄です」

熊岡「俺は確かにお前に隠し事をしていた。それは謝る・・・すまなかった。でも、お前を愛していることに偽りはない!ホントに愛してるんだ!運命の相手なんだ!だから・・・この指輪を受け取ってくれ」

そういい僕が投げ捨てた指輪を僕に渡してきた

「なんで・・・」

熊岡「頼む・・・俺はお前がいないとダメなんだ・・・お前じゃなきゃダメなんだ!」

「で、でも・・・婚約者がいるじゃないですか!あの人はどうするんですか!!」

熊岡「あいつとはもう終わってるんだ。昔に。でも、逃げたのはホントだ」

「・・・いつか僕も捨てて逃げるんですよね」

熊岡「そんなことはしない!」

「そんなの信じられるわけありません」

熊岡「信じてくれ!俺はお前を捨てたりしない!」

ピピピピピッ

アラームが鳴った

「・・・もう5分が経ちました。これ以上の話は無駄と判断します」

僕は荷物を持ち部屋を出ようとした
その時

寅野「待ちな」

「あなたは・・・」

寅野「こんなに晴臣が話したのにお前は見捨てるのか?」

この人・・・ずっと扉越しに・・・

「盗み聞きですか?旅館のスタッフとして感心しませんね」

寅野「そうだな。そのことなら後でいくらでも聞いてやる。でも、今はお前だ」

「僕?僕がなんですか?」

寅野「お前、晴臣の事本当に嫌いなのか?」

「あ、当たり前です。こんな嘘つき・・・」

寅野「ならなんで話を聞いたんだ?」

「それは熊岡隊長が話したいというから・・・」

寅野「嫌いなら聞かなければいいだろう?それを聞くってことはお前自身まだ諦めてないからだろう?」

「あなたに言われる筋合いはありません。そもそもあなたと熊岡隊長の問題です。僕を巻き込まないでください」

寅野「この・・・頑固者め・・・」

「え?っ!?」

寅野さんはいきなり僕の胸倉を掴んできた

寅野「お前はなんで晴臣を理解しない!!」

「理解とはお互いに信頼し合おうとするからするものです。僕は信頼してません」

寅野「・・・そうかよ。お前はそれでいいんだな?」

「はい。僕は構いませんよ」

寅野「・・・なら出ていけ。俺の旅館にお前のような奴が泊まる場所はない」

「そのつもりです。僕も嘘つきとその婚約者のいるところで寝泊まりするつもりはありません」

僕は寅野さんの手を叩き旅館を出た
部屋を出るとき晴臣さんがなにか言っていたが振り向かずに出た

「・・・はぁ・・・もう夜じゃん・・・」

電車はもうないよね・・・
今日は野宿かな・・・

「どこで野営しようかな・・・」

野営は訓練で慣れている
問題はどこで野営するかなんだけど・・・

「・・・ここでいいか」

少し森に入るといい感じの場所を見つけた

「テントはないけど・・・まぁ大丈夫でしょう」

夏だから雨は降らないだろうし、野生の生き物もいなそうだし

「焚火でもしよう」

木を集め焚火の準備をした

「火は・・・どうやってつけよう・・・」

火のつけ方まではわからない
テレビの番組で見たことはあるけど・・・

「・・・仕方ない。見よう見まねで・・・」

木と木を擦り合わせて火を点けようと頑張った

・・・10分後・・・

「はぁはぁ・・・ダメだ・・・思ってたより大変・・・」

火は付かないし、手は痛いし・・・
それにすごく疲れる・・・

「体力には自信あったんだけどな・・・」

まだまだって事か・・・
火は諦めて僕は地面に寝っ転がった
星がとても綺麗で周りは静かだった

「綺麗だな・・・本当はこの星を晴臣さんとみる予定だったのにな・・・」

温泉に入って、部屋で星を見ながらお酒を飲んで・・・
そして・・・布団で・・・

「・・・夢はいつか覚める。今がその時ってことだよね」

英雄と付き合うなんて・・・夢だったんだ
憧れは所詮憧れ・・・
それ以上にはなれないんだ

「遊び・・・だったんだろうな」

英雄だって人だ
遊びで付き合ったりするよね
僕はいい相手だったんだろう
近くにいるし、オメガだし・・・

「・・・はぁ・・・」

ため息が出るよ・・・
自分の馬鹿さ加減に

ガサガサ・・・

「っ!?」

草の音が聞こえ僕はデリンジャー(小型ピストル)を構えた

熊岡「う、撃つなよ?俺だ」

「晴・・・熊岡隊長・・・」

晴臣さんが両手をあげて近づいてくる

熊岡「もう少し話を聞いてくれ」

「もう話す機会は与えました」

熊岡「ホント・・・頑固だな」

「・・・うるさい。嘘つきが」

熊岡「頑固者!」

「嘘つき!」

熊岡「だぁぁぁぁ!!!埒が明かねぇ!!!」

晴臣さんは叫ぶと僕を地面に押さえつけてきた

「離せ!!!」

熊岡「俺の話を聞くまでぜっ~~~~~~たい離さねぇからな!!」

僕に・・・聞く以外の選択肢はなさそうだ・・・
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