戦場の歌姫と呼ばれた少女、一旦無能になってみることにしました。

影猫

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第十話

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身体を修復したところでクリークに呼び出された。私に関して相談だと。部屋に帰ってゆっくりしたいと思っていたのにそうもいかなさそうで残念である。
なるべくさっさと終わらそうと早く向かい、軽くノックだけして部屋に入った。
「...何の用ですか。せっかく部屋でゆっくりしようと思っていたのに。」
「まぁまぁそう言うな。たまにはいいじゃないか。」
向かい合いのソファに座るよう促され、仕方なく座る。紅茶を入れながらなんて事ない会話をし出す。
「最近の兵の様子はどう思う。特に幹部とかは君はよく見ているだろう?」
その問にそうですね、と一言置き渡された紅茶を一口啜って話し出す。
「彼等の絆は素晴らしいと思います。それぞれの強さもまた然り。ただ一人でも欠けたら簡単に壊れてしまう。それにヒビも入りやすいでしょう。正直言って彼等はまだまだ脆い。総合的に見て他国より少し上と言ったところでしょうか。」
そう言うと何が面白かったのかケラケラと笑いだした。
「何が面白いんですか。」
「ん?あーいや、すまない。余りにも鋭い意見に笑うしかなくてな。」
そう言って紅茶を一口飲む。
「君の言う通りだと思う。まぁ君が来るより前は今より結束力が無かったからその時よりか進歩した方だとは思わないか?」
「想定内なので特に何も。」
「はは、まぁそうだな...これは君の作戦の成果としか言えない。流石だな。」
そう、当初この軍に来た頃は幹部は協力はするもののそれぞれをよく知らないでいたし、それぞれに対する妬みが見えていた。それを取り除く為、私が無能として加わり共通敵を作ることで更なる結束力を高める。そういう作戦だ。狙い通り、彼等はお互いをよく知り、尊重して仲良くするようになった。
最初はこの作戦にクリークは反対だった。私が犠牲になってしまうからである。彼は仲間に対してとても優しい。誰にも傷付いてほしくないと考えるのだ。だがこの作戦は私でなければできない。何をされても"死なない"私でしか。そう言って無理やり押し切った。あの時は大変だったとぼんやり思う。
「作戦は成功した。だからもう君が犠牲になるのはやめてくれないか?昨日の会議の時もボロボロだったじゃないか。今は治したんだろうが...」
その言葉に少し手を止めて考える。確かにもう今の作戦は十分かと思われる。だがまだ正体を明かすのも早いような...それにまだこの生活を楽しみたくもある。数分考えて、また新たな作戦を提案することにした。
「そうですね、今の作戦はもうやめます。」
「本当か!なら皆にも正体を「明かしませんよ。」なっ!?」
「まだ明かしません。次の作戦を実行します。」
「次?なんだそれは。また犠牲になるとかではないだろうな?」
「違います。ただ...少し彼等を打ちのめすだけですよ。」
そう言って不敵に笑ってやった。
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