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第八話
しおりを挟む「はっ、くしゅっ!」
誰か噂しているのだろうか。まぁ風邪だとしたら困るから今日は早めに書類作業を切り上げて寝よう。
次の日。早く寝た影響で早く起きたため、朝練をしようと思う。きっと誰もいないだろう。
「そう思ったのに...」
残念ながら珍しいことにレーヴェが朝練をしているではないか。仕方ない、バレないようにそっとコソ練しよう。
「あ、無能だ。」
今日はつくづく不幸が続くようだ。
「...おはようございます、レーヴェ。」
渋々挨拶をしてさっさと奥に行こうとした。だがそれも叶わなかった。
「丁度いいじゃん、無能お前的になれよ。」
肩を掴まれ逃がさないと言った笑顔で言われてしまった。今日は生きて帰れるだろうか...
━━━━━━━━━━━━━━
それから数十分。ナイフでひたすら切りつけられる地獄。痛みは無いが一体いつ終わるのだろうか。
「ほんとに的みたいだな。ちっとも痛がらないからつまらないわ。」
つまらないなら止めたらどうだろうか。
「あ、手が滑ったー。」
めちゃくちゃ棒読みで、思いっきり横腹を切られた。服に大きな赤いシミができる。
「すまん、流石に痛いだろー?医務室連れて行こうかー?」
全く思っていないのであろう棒読みの声が飛んでくる。
「...」
私はというと、やはり痛みは感じていなかった。横腹に手を当て、ついた自分の血液を見る。
「...懐かしいな...」
昔もこうだった。力を上手く使えなくて、大事な場所を守れなかった。
「おい無能聞いてる?ちょ、ほんとにまずいって!」
そんなレーヴェの焦った声が聞こえた。赤いシミはどんどん広がってきている。そうか、このままだと失血死してしまう。そんなことを呑気に思って歩き出した。
「ちょ、どこ行くんだよ!」
そう言ってレーヴェが私の腕を掴んでくる。あぁもう邪魔だなと思いながら振り返ると、私の顔を見た瞬間真っ青になって手を離してくれた。何を思ったのか知らないが、今は好都合だ。そうして私は誰にも見つからない場所へ向かった。
━━━━━━━━━━━━━━
「怖...」
無能がどこかへ行った後、腰が抜けて座り込んでしまった。流石に切りすぎたと思って凄く焦ったのだが、無能はそうでもなさそうだった。ぼーっと自分の血を見て急にどこかに行こうとするから止めたものの、あいつの目を見た瞬間恐怖を感じた。真っ暗で何も感じていなさそうな、深淵という言葉がよく当てはまる程闇に沈んだ目。ルーチェがよく魚の目って言ってるのがわかる気がした。
「あいつ何考えてんだろ...」
ふとそんなことを呟いた。
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