戦場の歌姫と呼ばれた少女、一旦無能になってみることにしました。

影猫

文字の大きさ
上 下
9 / 12

第八話

しおりを挟む

「はっ、くしゅっ!」
誰か噂しているのだろうか。まぁ風邪だとしたら困るから今日は早めに書類作業を切り上げて寝よう。

次の日。早く寝た影響で早く起きたため、朝練をしようと思う。きっと誰もいないだろう。
「そう思ったのに...」
残念ながら珍しいことにレーヴェが朝練をしているではないか。仕方ない、バレないようにそっとコソ練しよう。
「あ、無能だ。」
今日はつくづく不幸が続くようだ。
「...おはようございます、レーヴェ。」
渋々挨拶をしてさっさと奥に行こうとした。だがそれも叶わなかった。
「丁度いいじゃん、無能お前的になれよ。」
肩を掴まれ逃がさないと言った笑顔で言われてしまった。今日は生きて帰れるだろうか...

━━━━━━━━━━━━━━

それから数十分。ナイフでひたすら切りつけられる地獄。痛みは無いが一体いつ終わるのだろうか。
「ほんとに的みたいだな。ちっとも痛がらないからつまらないわ。」
つまらないなら止めたらどうだろうか。
「あ、手が滑ったー。」
めちゃくちゃ棒読みで、思いっきり横腹を切られた。服に大きな赤いシミができる。
「すまん、流石に痛いだろー?医務室連れて行こうかー?」
全く思っていないのであろう棒読みの声が飛んでくる。
「...」
私はというと、やはり痛みは感じていなかった。横腹に手を当て、ついた自分の血液を見る。
「...懐かしいな...」
昔もこうだった。力を上手く使えなくて、大事な場所を守れなかった。
「おい無能聞いてる?ちょ、ほんとにまずいって!」
そんなレーヴェの焦った声が聞こえた。赤いシミはどんどん広がってきている。そうか、このままだと失血死してしまう。そんなことを呑気に思って歩き出した。
「ちょ、どこ行くんだよ!」
そう言ってレーヴェが私の腕を掴んでくる。あぁもう邪魔だなと思いながら振り返ると、私の顔を見た瞬間真っ青になって手を離してくれた。何を思ったのか知らないが、今は好都合だ。そうして私は誰にも見つからない場所へ向かった。

━━━━━━━━━━━━━━

「怖...」
無能がどこかへ行った後、腰が抜けて座り込んでしまった。流石に切りすぎたと思って凄く焦ったのだが、無能はそうでもなさそうだった。ぼーっと自分の血を見て急にどこかに行こうとするから止めたものの、あいつの目を見た瞬間恐怖を感じた。真っ暗で何も感じていなさそうな、深淵という言葉がよく当てはまる程闇に沈んだ目。ルーチェがよく魚の目って言ってるのがわかる気がした。
「あいつ何考えてんだろ...」
ふとそんなことを呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元勇者の俺と元魔王のカノジョがダンジョンでカップル配信をしてみた結果。

九条蓮@㊗再重版㊗書籍発売中
ファンタジー
異世界から帰還した元勇者・冴木蒼真(さえきそうま)は、刺激欲しさにダンジョン配信を始める。 異世界での無敵スキル〈破壊不可(アンブレイカブル)〉を元の世界に引き継いでいた蒼真だったが、ただノーダメなだけで見栄えが悪く、配信者としての知名度はゼロ。 人気のある配信者達は実力ではなく派手な技や外見だけでファンを獲得しており、蒼真はそんな〝偽者〟ばかりが評価される世界に虚しさを募らせていた。 もうダンジョン配信なんて辞めてしまおう──そう思っていた矢先、蒼真のクラスにひとりの美少女転校生が現れる。 「わたくし、魔王ですのよ」 そう自己紹介したこの玲瓏妖艶な美少女こそ、まさしく蒼真が異世界で倒した元魔王。 元魔王の彼女は風祭果凛(かざまつりかりん)と名乗り、どういうわけか蒼真の家に居候し始める。そして、とあるカップルのダンジョン配信を見て、こう言った。 「蒼真様とカップル配信がしてみたいですわ!」 果凛のこの一言で生まれた元勇者と元魔王によるダンジョン配信チャンネル『そまりんカップル』。 無敵×最強カップルによる〝本物〟の配信はネット内でたちまち大バズりし、徐々にその存在を世界へと知らしめていく。 これは、元勇者と元魔王がカップル配信者となってダンジョンを攻略していく成り上がりラブコメ配信譚──二人の未来を知るのは、視聴者(読者)のみ。 ※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

【2章完結】女神にまで「無能」と言われた俺が、異世界で起こす復讐劇

騙道みりあ
ファンタジー
※高頻度で更新していく予定です。  普通の高校生、枷月葵《カサラギアオイ》。  日常を生きてきた彼は突如、異世界へと召喚された。  召喚されたのは、9人の高校生。  召喚した者──女神曰く、魔王を倒して欲しいとのこと。  そして、勇者の能力を鑑定させて欲しいとのことだった。  仲間たちが優秀な能力を発覚させる中、葵の能力は──<支配《ドミネイト》>。  テンプレ展開、と思いきや、能力が無能だと言われた枷月葵《カサラギアオイ》は勇者から追放を食らってしまう。  それを提案したのは…他でもない勇者たちだった。  勇者たちの提案により、生還者の居ないと言われる”死者の森”へと転移させられた葵。  そこで待ち構えていた強力な魔獣。  だが、格下にしか使えないと言われていた<支配《ドミネイト》>の能力は格上にも有効で──?  これは、一人の少年が、自分を裏切った世界に復讐を誓う物語。  小説家になろう様にも同様の内容のものを投稿しております。  面白いと思って頂けましたら、感想やお気に入り登録を貰えると嬉しいです。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のルナリス伯爵家にミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

みんなからバカにされたユニークスキル『宝箱作製』 ~極めたらとんでもない事になりました~

黒色の猫
ファンタジー
 両親に先立たれた、ノーリは、冒険者になった。 冒険者ギルドで、スキルの中でも特に珍しいユニークスキル持ちでがあることが判明された。 最初は、ユニークスキル『宝箱作製』に期待していた周りの人たちも、使い方のわからない、その能力をみて次第に、ノーリを空箱とバカにするようになっていた。 それでも、ノーリは諦めず冒険者を続けるのだった… そんなノーリにひょんな事から宝箱作製の真の能力が判明して、ノーリの冒険者生活が変わっていくのだった。 小説家になろう様でも投稿しています。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

勇者(俺)いらなくね?

弱力粉
ファンタジー
異世界で俺強えええとハーレムを目指す勇者だった... が、能力が発動しなかったり、物理的にハーレムを禁じられたりと、何事も思ったように行かない。 一般人以下の身体能力しか持ち合わせていない事に気づく勇者だったが、それでも魔王討伐に駆り出される。 個性的なパーティーメンバーたちに振り回されながら、それでも勇者としての務めを果たそうとする。これは、そんな最弱勇者の物語。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

処理中です...