戦場の歌姫と呼ばれた少女、一旦無能になってみることにしました。

プロローグ

荒れ果てた大地に、その声はよく響いた。

くすんだ空に、その髪は酷く輝いた。

汗と血で滲んだ空間に、その人は一際存在感を放っていた。

人々はその存在をこう言う。

『戦場の歌姫』と。

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「貴方が戦場の歌姫...そうなんだろう？」
「......」
そう呼ばれた少女は何も答えず、問いかけてきた男をただ無気力に眺める。答えないのがわかっているのか男はそのまま続けた。
「単刀直入に言わせてもらおう。我が軍に来てもらえないか？」
「...はぁ。」
少女は聞きなれたかのようにため息をつく。それでも男は続けた。
「我々は君を兵器のように使う訳ではない。我々の目的は世界平和だ。そのためであれば何でもする。君の望みであれば我々も協力しよう。」
"世界平和"という単語にピクリと反応する。綺麗なアクアマリン色の瞳が少し輝いたように見えた。
「頼む、我々にその力を貸してくれないか。我々と一緒に美しい世界を作らないか？」
その男の悪魔のような笑みが少女には輝いて見えた。期待を膨らませていきながら息をついて真剣に向き直る。
「...条件があります。」

これは遥か昔、世界がまだ争いの最中にあった出来事である。