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134話 呪制魔法

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 重力は再びセイヨウに重くのしかかってくる。
 先ほどとは比べ物にならないほどの速さで押され、セイヨウは地面に這いつくばる。

「命乞いでもしたら助けてやろうと思ったものを、今度は逃がしもしない」

 セイヨウは重力に逆らおうと必死に足掻いているようだが、強すぎる重力に逆らえずにいる。

「あと、そこのお前!どうやら妙な魔法を使っているらしい。次変なことをしたらこいつにかかっている重力は二倍、いや三倍にもなるだろうな」

 サレスティも迂闊に行動できない。
 そもそも、無属性魔法を使うためには時間をかけなければならないが、その前にアークランに気がつかれてしまう。
 セイヨウの呪制魔法は発動するそぶりすら見せない。距離が関係しているとしたら……?

「サレスティ……、こい…つを……引き、よせろ……」

 駄目だ、ここで僕が行動してもその前にセイヨウが重力に押しつぶされる。
 必死に動こうとしているセイヨウをどうして何も手助けできないのか……?

『ライバルなんだろ?』

 唐突にシュンの言っていた言葉が脳裏に甦った。
 無属性魔法を使うためには時間がかかると確かに理解はしていた。
 でも、シュンは違う。シュンなら出来る。

_____ライバルに出来て、僕に出来ないことがあっていいのか?

 出来ないなんて誰が決めたんだ、ライバルがシュンなら、敵はサレスティ自身だ。

Warp:Qiクイック・ワープ!」

 時間は今まででも最短だった。
 体感にして二秒弱、でもセイヨウを助けることはできるだろうか?

「十分だよ、サレスティ」

 その二秒弱の間に出来事が終わる。

 サレスティが魔法を唱えていることに気がついたアークランは星魔法を掛けなおすために一回セイヨウの星魔法を解いた。
 その瞬間にセイヨウは飛び込むような形で一気にアークランへの距離を詰める。
 星魔法は再びセイヨウにかかるが、その時には既にセイヨウの魔法も発動していた。

 地面に強く叩きつけられるセイヨウと、何かを失ったかのように膝をついたアークラン。

 その後にワープしたサレスティは事の顛末をすべて見ていたのだ。

「セイヨウ!大丈夫か?」

 とっさにワープして駆け寄ったサレスティはセイヨウが反応しているのを確認した。
 逆に何か虚空を見つめているアークランはサレスティの方を見向きもしない。

「あれはあれで不自然な気はするけどな、今のアークランに使はない」

 腕の骨が折れ手の方向が不自然なセイヨウが言うことではないが、まあすぐに医者にかかればセイヨウは助かるだろう。
 魔法を取り除こうとしたこの魔法は結果として連動している感情や知能をもはぎ取ってしまうことが分かり、その状態は数日続くのだとか。

 でも、魔法に関する過剰な感情や知識以外はそのうち元に戻ることも分かる。

「もう、シュレイは気にすることもなくなったはずだ」

 セイヨウは後日そう言った。
 神聖魔法から外れてしまった星魔法はもう継ぐ人はいないはずなのだから。
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