上流貴族の地位を継げないようなので大人しく一般人になります

夏樹

文字の大きさ
上 下
126 / 137

125話 さらわれたユナ

しおりを挟む
 フルヤさんが慌てて伝えたのはユナがさらわれたという事。

 誰にどのようにさらわれたのかは分からないが、シェイドが関わっているであろうということは推測できる。

「フルヤさん、今すぐそちらに向かいますね」

 悠長なことは言っていられない。
 すぐにでもユナを探しに行きたいところだが、兄たちはどう思うだろうか。

「ハルカさんには恩がありますし、捜すというのなら私も手助けしたいところです」

「俺もレイには賛成だ。でも、俺たちが捜すには目立ちすぎだろうな、違う角度からなら応援できるよ」

 レイシェルとトリオスは口々に言う。
 黙っていた父親も、静かに言った。

「私が与えれた自由は……ほとんどなかったが、それでもこれだけはシュンに権利がある。愛す人がいるのなら、その人と幸せになってくれ……!」

 もう、僕は覚悟を決めていた。
 ユナは誰が何と言おうとも守り抜く。

「分かりました。あと兄様はシェイド公を探ってみてほしいんです。可能性はあります」

「任せておけよ、シュン」

 頼もしい、僕には兄がついている。

「シュンさん、何かあったらこれ、メッセージ送っていただければ……」

 レイシェルに渡されたのは貴族のカード。

「さあ、早く行け。私からあげられるのは勇気しかないからな」

 父親に背中を押され、僕は空を見上げる。

「それでは、Warpワープ!」

 僕がそういった瞬間に、後ろにいたはずの三人は消えた。


 ワープ先は古谷書店。
 ここにアクセスポイントを作っておいたためどこからでもすぐにこちらに移動ができる。

「フルヤさん、ただいま帰りました」

「シュン、待っていたが来てほしくはなかった……」

 どういうことだ?僕は少しの間状況が呑み込めなかったがすぐにその状況を理解できるようになった。

「壁に耳あり障子に目あり、か。真実はどれだけ隠していても明るみに出てしまう。だが、情報屋にとってこれほどまでに好都合な言葉はない。果たして、誰がその真実を暴いたのか、それは本人にしかわからないからな」

 ミュルドーの声だ。
 どこかに潜んでこちらにカマをかけているのだろうか。

「それと、一つだけ良いこと教えておいてやるよ。無属性魔法秘伝ってのは良いモンだねぇ」

 どうやら、サレスティの「秘伝・式神」と同じように秘伝の中から技を習得したのかもしれない。
 なら、まずはどんな能力なのかを考えなければならないが……。

 唐突に本がこちらに向かって飛んでくる。
 なんとかかわすことができたが、依然相手のいる場所はわからない。

「つまり、秘伝で得たのは透明になる能力だ、違うか?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜

ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。 年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。 そんな彼女の癒しは3匹のペット達。 シベリアンハスキーのコロ。 カナリアのカナ。 キバラガメのキィ。 犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。 ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。 挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。 アイラもペット達も焼け死んでしまう。 それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。 何故かペット達がチートな力を持って…。 アイラは只の幼女になって…。 そんな彼女達のほのぼの異世界生活。 テイマー物 第3弾。 カクヨムでも公開中。

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)

みなせ
ファンタジー
転生先は、ゲーム由来の異世界。 ヒロインの意地悪な姉役だったわ。 でも、私、お約束のチートを手に入れましたの。 ヒロインの邪魔をせず、 とっとと舞台から退場……の筈だったのに…… なかなか家から離れられないし、 せっかくのチートを使いたいのに、 使う暇も無い。 これどうしたらいいのかしら?

転生したらチートでした

ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...