上流貴族の地位を継げないようなので大人しく一般人になります

夏樹

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125話 さらわれたユナ

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 フルヤさんが慌てて伝えたのはユナがさらわれたという事。

 誰にどのようにさらわれたのかは分からないが、シェイドが関わっているであろうということは推測できる。

「フルヤさん、今すぐそちらに向かいますね」

 悠長なことは言っていられない。
 すぐにでもユナを探しに行きたいところだが、兄たちはどう思うだろうか。

「ハルカさんには恩がありますし、捜すというのなら私も手助けしたいところです」

「俺もレイには賛成だ。でも、俺たちが捜すには目立ちすぎだろうな、違う角度からなら応援できるよ」

 レイシェルとトリオスは口々に言う。
 黙っていた父親も、静かに言った。

「私が与えれた自由は……ほとんどなかったが、それでもこれだけはシュンに権利がある。愛す人がいるのなら、その人と幸せになってくれ……!」

 もう、僕は覚悟を決めていた。
 ユナは誰が何と言おうとも守り抜く。

「分かりました。あと兄様はシェイド公を探ってみてほしいんです。可能性はあります」

「任せておけよ、シュン」

 頼もしい、僕には兄がついている。

「シュンさん、何かあったらこれ、メッセージ送っていただければ……」

 レイシェルに渡されたのは貴族のカード。

「さあ、早く行け。私からあげられるのは勇気しかないからな」

 父親に背中を押され、僕は空を見上げる。

「それでは、Warpワープ!」

 僕がそういった瞬間に、後ろにいたはずの三人は消えた。


 ワープ先は古谷書店。
 ここにアクセスポイントを作っておいたためどこからでもすぐにこちらに移動ができる。

「フルヤさん、ただいま帰りました」

「シュン、待っていたが来てほしくはなかった……」

 どういうことだ?僕は少しの間状況が呑み込めなかったがすぐにその状況を理解できるようになった。

「壁に耳あり障子に目あり、か。真実はどれだけ隠していても明るみに出てしまう。だが、情報屋にとってこれほどまでに好都合な言葉はない。果たして、誰がその真実を暴いたのか、それは本人にしかわからないからな」

 ミュルドーの声だ。
 どこかに潜んでこちらにカマをかけているのだろうか。

「それと、一つだけ良いこと教えておいてやるよ。無属性魔法秘伝ってのは良いモンだねぇ」

 どうやら、サレスティの「秘伝・式神」と同じように秘伝の中から技を習得したのかもしれない。
 なら、まずはどんな能力なのかを考えなければならないが……。

 唐突に本がこちらに向かって飛んでくる。
 なんとかかわすことができたが、依然相手のいる場所はわからない。

「つまり、秘伝で得たのは透明になる能力だ、違うか?」
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