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117話 結婚式前夜

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 明日はついに兄、トリオスの結婚式となる。
 家で働いているメイドたちもいつもよりせわしなく働いているように感じるのは気のせいだろうか?

「シュン、最近は毎日図書館に入り浸ってるって?面白い本でもあったか?」

「まあ、そんなところかな。知識も付くしいい感じ」

「それは良かったなぁ。昔は貴族文字が読めなくて図書館に行くの嫌がっていた時もあったよな。懐かしいな」

 確かに、僕が転移する前のシュンは貴族文字が読めなかった。
 兄も僕の成長に対して嬉しく思ってるのかもしれない。

 ただ、成長ではないのだが……。

「いろいろ迷惑かけてしまって申し訳ない……」

「なんだよ、改まって。そりゃ、兄弟だから迷惑くらいかけるだろ?俺だってシュンに迷惑かけてるよ」

 トリオスは僕に向かって微笑んだ。
 僕もトリオスに向かって微笑み返した。

「でも、まあ結婚が最大の迷惑かもしれないよな。相手方が相手方だしさ……」

「兄様は結婚に対してやっぱり不安とかあるの?」

 純粋な疑問だった。
 いくら上流貴族とはいえ、一国の姫と結婚をするというのは覚悟が必要そうな気もする。

「正直、不安ばっかりだよ。未だに何で僕が愛されてるのかもわからないしさ」

 少し苦笑いをしたように見えたが、次の瞬間には決意をしたような顔になっていた。

「それでも、希望がないとやっていけないじゃん。だから、僕はレイシェルを

 トリオスのそういうところが好きなんだ。
 そういうところを、兄として尊敬しているんだ。

「兄様ならきっとできるよ」

「おう、頑張るよ。シュンも、俺の弟なんだからしっかり自信を持てよ」

 トリオスは励ますように肩をたたいてくれた。
 たたいてくれた所から全身に力がみなぎるように感じられる。

 この一週間はどうやら無駄なものではなく、むしろ僕に必要だったのかもしれない。

ーーーーーーーーーー

「シェイド公、あいつの情報を調べてきました」

「どうだった?ミュルドー」

 ここはシェイドが暮らすバレイヤ家の一室。

「相変わらず属性魔法は使えないようですし、上流貴族の地位も圧力をかければ剥奪できるでしょう」

 情報屋、ミュルドー。
 ノーゼス公の養子となりその情報収集能力は一流のものであった。

「それよりも、不確定ではあるのですが不思議なうわさがあるんですよ」

「どういうことだ?」

「シュンっていう人物はもう一人いるんじゃないかってことです。昔は、貴族文字も読めずにいて、属性魔法が使えたらしいんですよ」

 ミュルドーがそういうと不審そうな顔をシェイドがした。

「ただのデマだとも思ったんですがそれはそれでおかしいんですよ。だって、無属性魔法が使える人は属性魔法の使い手にしかいませんよ?」

 そう言うと、今度はシェイドが言う。

「なら、試してみるか」
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