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113話 ミトラス家

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 両親は、僕のことを貴族にもなれない役立たずとしてしか見ていなかったはずだ。
 なのにこんな時にばっかりまるで僕を心配しているような口ぶりをする。

 そう思ったのは、両親とトリオス、そして僕が家に集まった時だった。

「シュン、おかえりなさい。元気にしてた?」

 母親であることに違いはない。
 しかし、血がつながっている以外のつながりはとても希薄だったし、言葉や行動の節々にも他人と接しているような雰囲気がうかがえた。

「まあ、そこそこ元気だったかな」

 本当に心配しているのであれば、貴族のカードを渡して連絡を取ればいいのだ。
 しかし、それをしないということは別に僕のことを何とも思っていない証拠だった。

「なら、いいのだけれど。シュンは昔から父さんみたいに頑固なところがあるから、大丈夫かなって思ったのだけれど」

 比べないでほしい。
 そもそも、頑固なわけではない。
 自分のやりたいことをやっても誰にも引き止められなかった、それだけのことである。

 幼いころのシュンはどうやら貴族文字を覚えることが苦手で教師たちがお手上げしてしまっただけだし。
 アトラト学園に行く時だってトリオス以外は引き止めてくれる人なんていなかったのだ。

 でも、わざわざそんなことを言うことはない。
 子供は親の言いなりになる玩具じゃないし、子供にだって自分のやりたい事をする権利がある。

「それより、今回の主役は僕じゃなくてトリオスだろ?そっちと話すことはないの?」

「おい、母さんに向かってその口調は失礼だろうが」

 無口な父親が僕に向かって言うのは説教の時くらいのもので、僕ももう慣れっこだった。

「まあ、いいのよ。こういう時期なんだから」

 そう思ってくれた方がいいのかもしれない。
 僕はさっさと自分の部屋に行くことにした。

 自分の部屋に入るのはもう三年ぶり程になるだろうか。
 おそらくこのお屋敷のメイドさんたちが僕がいない時も掃除してくれていたのだろう、僕の部屋は出て行った時とほぼ同じ状態で残っていた。

 特に気になることもなかったため、僕はベットに転がり込んだ。
 相変わらずベッドもふかふかで一流のものなのだろう。

 だが、その感覚はどうにも慣れない。
 すっかり一般市民の感覚が身に沁みついてしまったのかもしれないな……。

 そんなことを考えていると、ドアが三回ノックされる。

「シュン、いいかしら?」

 母親だ。
 なぜ母親が僕の部屋に来るのかは分からなかったが、拒否することはできないだろう。

 というか、そんなことを考えているうちに母親が入ってきてしまっていた。

「シュン、最近シェイド公と仲が悪いみたいじゃない」
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