上流貴族の地位を継げないようなので大人しく一般人になります

１１１話 情報屋

　情報屋。それは、依頼された人物などを秘密裏に観察し、依頼主にその情報を受け渡すことができる。
　いわゆる探偵やマスコミのようなものである。

　この役職では他人の弱点や情報を知ることができるため、裏社会や特定の貴族と深い関係を持ちまた、情報屋を取り締まろうとしても大抵の場合は貴族などによって守られてしまう。

「特に、ミュルドーは生まれが情報屋の子供で、近くに第五位上流貴族との関係もあったことから下流貴族の中でもよく名前を聞くんですよね」

　セイさんの妹が言う。
　しかし、なぜ今になってミュルドーは貴族会を立ち上げたのだろうか。

「やはり、生徒会をつぶすためか？それでも、わざわざミュルドーがこうやってアトラト学園に来ることが不思議なんだよな……」

　いくら特例卒業生とはいえ三年の時には学園祭後から一回も来ていない人である。
　相当な覚悟を持って来なければならない。

　一体、ミュルドーが何を思って来るようになったのか。
　なんて、考えなくてもすぐにわかることなのかもしれないが……。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿それは、僕への復讐なのではないかと。

　やはり、僕は生徒会に入るべきではなかったのだろうか。
　結果として友人や関係ない人を巻き込んでいる、そんな気がしてならなかったが……。

「シュンさん、最近は元気がなくないですか？」

　そう話しかけてきたのは、ナルヴァだ。

「最近、というか生徒会に入ってからはずっとこんな感じだったと思うけどな」

　いけないいけない、後輩にこんな愚痴なんかを聞かせても意味がない。
　もっと明るくいなければならないなぁ。

「入学式の時にシュンさんに会ったとき、僕はすごい嬉しかったんです。憧れの人に会えたって」

　その目はとても冗談のようには見えなかった。

「僕のどこに憧れたの？」

　少し変な質問をしてしまった。
　でも、ナルヴァはすぐにその質問に答えてしまったため撤回することはできなかった。

「上流貴族なのに、シュンさんはそんなことを感じさせないんです。才能があるのに、謙虚というか……」

　僕が上流貴族だってことは入学する前から知っていたのか。
　実際はただ単に上流貴族という枠組みにとどまりたくなかっただけなのに。

「貴族の人たちは傲慢な人が多いような気がします。だから、上流貴族なのに一般の学校を選んで入ったシュンさんに憧れているんです」

　少しだけ、本当のことを言ってしまおうかとも思った。
　でも、なぜか彼の前では言わないほうがいいような気がしたのだ。

「君が思っているほど、貴族は傲慢じゃないし、僕も凄くない。でも、それでいいのかもしれない。だって、その言葉で僕は少し元気が出たからさ」

　せっかくこうやって僕を慕ってくれている後輩がいるのだ。
　生徒会くらい、僕が守らなければ。