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103話 第五位の貴族
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今から来るのはただのお客様ではない。
権力も財力も魔法も桁違いの上流貴族なのである。
下手なことをすれば社会的に抹殺される可能性すらあるという状況の中だが、それでもこの事態を乗り切らなければならないのだ。
ガラガラガラ……、と馬車を引く音が近づいてくる。
各自所定の位置について上流貴族第五位の様子を見ることにする。
「ようこそお待ちしておりました。ノーゼス公。本日はどのようなご用件で?」
「あまり他所には聞かせたくない話だ、例の部屋に入れてから話す」
「了解いたしました」
どういう話が来るかというのはこの家に住む全員が把握していて、単刀直入に言えば
「ユナをシェイドの嫁として迎え入れたい」
ということである。
上流貴族からの婚約というのは向こうから破棄されない限りは絶対であり、当然ながら反対するというのは普通ならありえないことである。
しかしながら、狙っているのはユナ自身ではなく、神聖魔法を持っているユナなのだ。
フルヤさんもハルカさんも大切な一人娘をそんな所に出したくはないのだろう。
まあ、僕が恋をしてしまったのが婚約騒動の歯止めに拍車をかけている部分ではあるかもしれないのだが。
「シュン、ちょっと来てくれ」
フルヤさんに呼ばれる。
できるだけ相手の気に触れないようにしながら丁重にユナの件を断る必要がある。
なかなか大変な役目だがすでに覚悟はできていた。
「失礼します」
そこにいたのはノーゼス公と、シェイド。
あからさまな憎悪と魔法の強さに一瞬たじろぐものの、ここで逃げてしまったら何の意味もない。
「本日は、どのようなご用件でしょうか?」
「君は僕がどうしたらユナ嬢を手放してくれるか?」
こっちだって上流貴族の端くれである。
出来れば交渉で終われば向こうにとってもこっちにとっても被害が最小限で済む。
しかし、交渉なんかしたところで僕にはユナを手放す気はない。
それどころか、まるでこちらの意見を聞いているように見えて実際はこちらを見下しているのだ。
「手放すって、どういうことでしょうか?まるで物みたいに言うじゃないですか」
僕とシェイドがしばらくにらみ合う。
それを見かねたノーゼス公がなんとかして話をつなごうとする。
「すまない、言い方が悪かったようだ。こちらで用意できるものであれば、精一杯用意する。大量の金貨でも、代わりの女性でも。だから、ユナ嬢の事に関しては手をひいてもらえないだろうか?」
お金で手をひけるほどのものでもないし、替わりもいない。
この世界のどこを探したってユナよりも素敵な人だって物だってあるはずがないのだから。
「ユナさんに対する気持ちは何を言われたとしても変わりません。お引き取りいただけませんか?」
「こっちが下手にでりゃぁいい気にのりやがって……。君さえいなければ話し合いせずともユナ嬢は私のものになるというのに」
「上流貴族だったらそんな横柄なことでも許されるんですねぇ」
「いいかげんにしろよ!こっちは第五位上流貴族の正式な跡継ぎなんだ、分家になる奴なんかと話すこと自体が腹立たしい!」
分家ですか……。
もし仮に、兄がレイシェル姫と結婚した場合、僕は本家を継ぐこともできる。
そもそも、こんな貴族制なんて今すぐにでも廃止してほしい。
優遇される人がいればいるほど、迫害される人も多くなっていくのだ。
「もういいですよね、こんな口調。僕は権力にかこつけて他人の人生を狂わす奴は大嫌いだ」
「そんな綺麗事で世界が成り立つと思うなよ!」
周りを流れている魔法がシェイドの方に流れていくのを感じる。
しかし、その魔法は僕が最初に入った時の強力な憎悪なんかではない。
神聖魔法を利用し、憎悪を正義の感情に変換したのだ。
権力も財力も魔法も桁違いの上流貴族なのである。
下手なことをすれば社会的に抹殺される可能性すらあるという状況の中だが、それでもこの事態を乗り切らなければならないのだ。
ガラガラガラ……、と馬車を引く音が近づいてくる。
各自所定の位置について上流貴族第五位の様子を見ることにする。
「ようこそお待ちしておりました。ノーゼス公。本日はどのようなご用件で?」
「あまり他所には聞かせたくない話だ、例の部屋に入れてから話す」
「了解いたしました」
どういう話が来るかというのはこの家に住む全員が把握していて、単刀直入に言えば
「ユナをシェイドの嫁として迎え入れたい」
ということである。
上流貴族からの婚約というのは向こうから破棄されない限りは絶対であり、当然ながら反対するというのは普通ならありえないことである。
しかしながら、狙っているのはユナ自身ではなく、神聖魔法を持っているユナなのだ。
フルヤさんもハルカさんも大切な一人娘をそんな所に出したくはないのだろう。
まあ、僕が恋をしてしまったのが婚約騒動の歯止めに拍車をかけている部分ではあるかもしれないのだが。
「シュン、ちょっと来てくれ」
フルヤさんに呼ばれる。
できるだけ相手の気に触れないようにしながら丁重にユナの件を断る必要がある。
なかなか大変な役目だがすでに覚悟はできていた。
「失礼します」
そこにいたのはノーゼス公と、シェイド。
あからさまな憎悪と魔法の強さに一瞬たじろぐものの、ここで逃げてしまったら何の意味もない。
「本日は、どのようなご用件でしょうか?」
「君は僕がどうしたらユナ嬢を手放してくれるか?」
こっちだって上流貴族の端くれである。
出来れば交渉で終われば向こうにとってもこっちにとっても被害が最小限で済む。
しかし、交渉なんかしたところで僕にはユナを手放す気はない。
それどころか、まるでこちらの意見を聞いているように見えて実際はこちらを見下しているのだ。
「手放すって、どういうことでしょうか?まるで物みたいに言うじゃないですか」
僕とシェイドがしばらくにらみ合う。
それを見かねたノーゼス公がなんとかして話をつなごうとする。
「すまない、言い方が悪かったようだ。こちらで用意できるものであれば、精一杯用意する。大量の金貨でも、代わりの女性でも。だから、ユナ嬢の事に関しては手をひいてもらえないだろうか?」
お金で手をひけるほどのものでもないし、替わりもいない。
この世界のどこを探したってユナよりも素敵な人だって物だってあるはずがないのだから。
「ユナさんに対する気持ちは何を言われたとしても変わりません。お引き取りいただけませんか?」
「こっちが下手にでりゃぁいい気にのりやがって……。君さえいなければ話し合いせずともユナ嬢は私のものになるというのに」
「上流貴族だったらそんな横柄なことでも許されるんですねぇ」
「いいかげんにしろよ!こっちは第五位上流貴族の正式な跡継ぎなんだ、分家になる奴なんかと話すこと自体が腹立たしい!」
分家ですか……。
もし仮に、兄がレイシェル姫と結婚した場合、僕は本家を継ぐこともできる。
そもそも、こんな貴族制なんて今すぐにでも廃止してほしい。
優遇される人がいればいるほど、迫害される人も多くなっていくのだ。
「もういいですよね、こんな口調。僕は権力にかこつけて他人の人生を狂わす奴は大嫌いだ」
「そんな綺麗事で世界が成り立つと思うなよ!」
周りを流れている魔法がシェイドの方に流れていくのを感じる。
しかし、その魔法は僕が最初に入った時の強力な憎悪なんかではない。
神聖魔法を利用し、憎悪を正義の感情に変換したのだ。
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