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95話 星ほどの数から選ばれた君は

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「セイヨウ!?」

 なぜセイヨウがユナ達を追いかけているのだろうか。
 その答えをハルカさんはすぐに導き出してしまう。

「きっと、星魔法によって友人が敵として認識されるように捻じ曲げられたのだろう。でも、長い期間の間に少しづつ効いていく魔法のはずだから、少なくとも数日はかけられ続けたのだろうな」

 ユナがいる以上、教室で星魔法をかけるのは至難の業だ。
 となれば、やはり犯人は生徒会にいるのだろうか?

「とりあえず、ユナ達を助けようか。ユナは神聖魔法の使い方を知らないはずだ」

 ハルカさんは二階の窓から飛び降りた。
 ヒヤリとしたが魔法の効果なのだろうか、着地の衝撃は受けていないようだった。

 僕は階段を駆け下りて書店から出ようとした。
 カウンターに立っているフルヤさんは慌てている僕を見て言った。

「シュン、ハルカの手助けをしてやってくれないか。あれでも、娘のためなら命だって捧げることをするかもしれない人間なんだからな」

 僕は扉を開く。
 風が吹き込んでくることが分かり、書店内ではいくつかの本がめくれているような音がする。
 不思議と恐怖はなかった。
 もう、愛する人も友人も失いたくはない。

「フルヤさん、分かりましたよ」

 そう言って僕は、風が吹き荒れる店の外へと歩いていったのだった。


 ユナ達を追うようにして風が吹いている。
 ハルカさんの魔法なのか、ただの偶然なのかは分からない。
 ただ、風に乗せられるかのようにユナ達がどんどんこちらに向かってくることは分かった。

「お母さん、シュンくん!」

 ユナがこちらに気づいたのか呼びかけてくる。だが、ハルカさんは遮るように言った。

「早く逃げるんだ!追手はなんとかするから」

 なんとかかんとか逃げ切るユナ達。
 しかし、それを追っているセイヨウにとっても風は追い風なのだ。

光一閃こういっせん!」

 ハルカさんが魔法を放つが、セイヨウはひらりと躱してしまう。
 そのままのスピードで、ハルカさん……ではなく、ユナの方に視線を向けていた。

白光弾びゃっこうだん!」

 今度はセイヨウに当たった。
 だが、ターゲットが変わらない。
 もしや、ようにしているのだろうか?

Change:tgチェンジ・ターゲット

 おそらく、この魔法は一瞬こちらに気をそらす程度の魔法なのだろう。
 これでこちらにターゲットが変更されるのはかなりの博打かもしれない。
 でも、上位級のチェンジ魔法は刷り込み、洗脳ができる代わりにその相手にはかなりの苦痛が与えられるらしい。
 できることならこの魔法でなんとかしてしまいたかったのだ。

「シュン、危ないぞ!」

 ハルカさんの声が聞こえた。
 セイヨウがこちらに向かってきていることは明らかだった。

Give:MEMギブ・メモリー

 記憶を開示できる魔法。
 この状態なら承認がなくてもできるかもしれない。

 案の定、その記憶を手に入れることができた。
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