上 下
59 / 137

58話 情報収集をしよう

しおりを挟む
 レイシェルがドアを締めたタイミングで僕とトリオスは席につく。

 一度何かが起こると色々と連続してしまうため、話の本筋が吹っ飛んでいきそうになる。
 だが、今回の本題は上流貴族の中でなにか変わった動きはあったか、というところである。
 あとこの家の詳しい生い立ちについても聞いてみたかったがそれは時間に余裕があるときにでも。

「それで、今日はどのような用事で?」

 手短に起きたことを説明する。学園祭のことを話すと

「色々起きるなぁ……」

 と少し悲しそうにこちらを見てくる。ワタシコンカイハナニモワルイコトシテマセンヨ?

「けど、婚約したとか養子に入ったとかそういう話は聞いてないと思うけどなぁ、それくらいの規模の話なら人づてにくらいには聞きそうだし……」

 確かに上流貴族は数が少ないので何かあればすぐに出来事が広まってしまう。おそらく僕が家を出たのも共通認識としてあるんだろうな。レイさんは知らなかったみたいだけど。

 生徒会長の調べでは婚約するか養子に入るかどちらかの可能性で上流貴族になることが出来ると言っていたがそもそももしかしたら他に可能性があるかもしれないし、なんなら上流貴族にならなくても試験を受けずに卒業できる可能性はあるかもしれない。

「それにしても、試験を受けずに卒業か……。アステイモ公なら何か教えてくれるかな?」

 あ、時々見せる兄の悪い顔。トリオスはカードを持つと紋章のところを長く触る。

 ついでに確認しておくが、やはり僕の持っているトリオスのカードとはデザインと色が違う。
 おそらくそれぞれの家によって違うのだろう。

「あ、先日はどうも。アトラト学園のことなんですけど……」

 いつも弟がお世話になります、弟も元気そうで何よりです、え、シュンが生徒会役員に?

「推薦されたんですか?」

 されてないよ?ちゃんとお断りしたはずだけれど……。

「なってくれると嬉しい、ですか。それは思いますよ?」

 思うんですか。
 いや、僕はそんなのなるつもりないけど……。

「今回の用事はそうじゃないんですけど……、昨年って特例卒業あったんですか?」

 特例卒業とは卒業条件を満たしていなかったとしても別の何らかの要因で卒業が認められる時のことを指すらしい。
 ちなみに僕が上流貴族になるっていって貴族学校に通ったらその年の卒業もしくは自分の卒業の年に卒業することが出来るというご都合主義の極みみたいな事ができる。

 そして、昨年はそのご都合主義の極みを使った人物が一人だけいた。

 彼だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...