上 下
52 / 137

52話 生徒会一新

しおりを挟む
 彼女から告げられた言葉はこうだった。

「あなたを、生徒会役員に立候補したいんです」

 どうやら、前年の言語学科から出た役員は全員三年生だったらしくシュレイが新しく言語学科代表役員になったとしても枠がもう一つ空いてしまう。
 そのため、おそらく生徒会と一番関わりが深いであろう僕に白羽の矢が立った、といったところか。

「もっと別の人のほうがいいと思いますよ?」

 それは半分は面倒ごとから逃れようとする気持ちから来ており、もう半分は本気でそう思っていた。
 そもそも、上流貴族の地位を捨てておいて生徒会役員になるなんてそれは僕のプライドが許すはずがない。
 それに、もっとカリスマがあって生徒会に新しい風を吹かせてくれそうな人が言語学科にだって当然いる。ただ、その能力を自分でみいだせずにいるだけではないだろうか。
 そういう人はすでにクラスにいる。

「シュレイ先輩はもう少し人選を吟味してみてもいいのではないでしょうか、当然協力しますよ」

 うーん、とシュレイは首をかしげるが、少しして決意を決めてくれたようだった。

「仕方ない、シュンさん。その代わりやはりいい人がいなければ生徒会役員はシュンさんにやっていただきますよ」

 おそらく役割をしっかりと果たせそうな人が数人いるのでその人物たちに声をかけてみることにしようか。

「あ、あと元生徒会長から伝言だそうです。修業コースイチマルイチで待ってる、と」

 イチマルイチというのはおそらく一○一号室のことなので、そこでなにか話したいことがあるのだろう。
 僕はシュレイ先輩にお礼だけ言うと、修業コースの校舎まで行った。

 目的の教室はすぐに見つかった。

「やあ、シュン。久しぶり、になるかな」

「こちらこそお久しぶりです。えーと……」

 生徒会長の名前は聞いたことがなかった。そんな僕を見かねてなのか彼はこういった。

「元生徒会長で構わないよ。嫌なら好きな名前で読んでくれ。生徒会長になる前は名前はみんな自由に作って呼んでくれていたから」

 なぜ、とききたいがあまり個人的な話になるのも良くないと思い踏みとどまる。その代わり、僕の口からとっさに出たのはこの言葉だった。

「じゃあ、セイ……さんでも良いですか?」

「構わないよ。いい名前じゃないか」

 生徒会長ことセイさん。少し違和感だが、どうやら彼は気に入ってくれているらしい。

「じゃあ、そろそろ本題に入ろうか。学園祭の前日、君は何があったか覚えているはずだ」

「妹さん、のことですか?」

 セイさんは妹好きだったという情報がとっさに出てくる。

「そうだな。詳しく言えば魔法学科で私と同級生だった男の方だが」

 初日から僕にぶつかってきたりと言語学科大っきらいな魔法学科の先輩か。

「彼は結局卒業式も来なかった。あの日から一度も学校には来ていなかったがギリギリ単位が足りてたらしい」

 けど、確か学園祭の後にも試験があったはずだ。それはどうしたのだろうか?

「どうやら、同じことを考えているみたいだ。彼はなぜ、試験を受けていないのに卒業できたのだろうか?」

 セイさんは質問を提示した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...