48 / 137
48話 上流貴族の婚約
しおりを挟む
トリオスの口から婚約なんていう言葉を聞くことになるなんて……。
想定外だった。確かに、トリオスは女性に人気があったし地位もこの国トップクラスですけれども。だからこそ慎重になるのかなと、思っていたがそうでもないらしい。
この国の婚約の制度は特殊で、婚約をする場合には子ではなく親を介して行うことが多い。つまるところ、本人たち同士では決められないわけだ。
この場合、トリオスはいきなり親が承認した人と婚約するわけになるのだから経験とかそんなんじゃ対応できないと思いますけど……。
「それで、婚約相手は誰なんですか?貴族のどこかの家ですか?」
「王室の姫君だ」
ふーん、そっか……、そうなのか!?
いやいやいや、この国のお姫様!?
そんなさらっと言えることじゃないと思いますけど!っていうか仮に弟だったとして一般人がそれを聞いてよろしいのですか?
もはや驚きすぎて声も出なかった。いやまあ、大声でこんな事口走った瞬間に大騒ぎになりそうだけどさ。
「俺も驚いたよ。結婚まではあと三年間あるとはいえ、嬉しいっていうよりも驚きの感情のほうが勝ってる」
そりゃそうだ。というか、相手がお姫様だったら親も喜んで承認するでしょうよ。
ただでさえごちゃごちゃにかき混ぜられた思考の中にさらに情報をぶっこまれて整理は追いついていなかった。
「それでさ、皆忘れてるような気がするけど、僕がお姫様と結婚したとして、生まれてくるのは王家の子なんだ」
とりあえずこの話がいちばん重要そうな顔をしている。脳内にあった思考をすべてどけて、この話のことだけを考えれるようにした。
「つまり、シュンが上流貴族になると、分家じゃなくて本家になる」
この世界は何度僕を上流貴族にさせたがるのだろうか。他の人に言われるのだったら断れるかもしれない。でも、よりにもよって今回この話を持ってきたのは兄である。
「でも俺はシュンの気持ちを尊重したい。俺が解決すべき問題にシュンを絡ませちゃいけない」
だからさ、とさらにトリオスは続ける。
「シュン、頼らせてくれないか?」
家から僕が出ていって、兄が言ってくれた言葉は「頼ってくれ」だった。けれど、兄だって人に頼りたいときもある。僕が兄にちゃんと頼っていかないと兄からも頼られない。
でも、それはきっとこっちも同じなんだ。兄から頼られないと、僕も兄に頼れない。
「兄さんのほうがよっぽど成長してるんじゃないかな」
トリオスはキョトン、とこっちを見たが、すぐに笑顔になる。
「自慢の弟に負けないようにな」
学園祭の二日目は二人で「元気でね」と言って別々の方向へ歩きだして終わった。
色々衝撃的な展開があったものの、兄とのわだかまりのようなものが溶けたような気がする。
僕も兄に負けていられない。いつかきっと、自分で良かったと思える道を歩かなければ。
想定外だった。確かに、トリオスは女性に人気があったし地位もこの国トップクラスですけれども。だからこそ慎重になるのかなと、思っていたがそうでもないらしい。
この国の婚約の制度は特殊で、婚約をする場合には子ではなく親を介して行うことが多い。つまるところ、本人たち同士では決められないわけだ。
この場合、トリオスはいきなり親が承認した人と婚約するわけになるのだから経験とかそんなんじゃ対応できないと思いますけど……。
「それで、婚約相手は誰なんですか?貴族のどこかの家ですか?」
「王室の姫君だ」
ふーん、そっか……、そうなのか!?
いやいやいや、この国のお姫様!?
そんなさらっと言えることじゃないと思いますけど!っていうか仮に弟だったとして一般人がそれを聞いてよろしいのですか?
もはや驚きすぎて声も出なかった。いやまあ、大声でこんな事口走った瞬間に大騒ぎになりそうだけどさ。
「俺も驚いたよ。結婚まではあと三年間あるとはいえ、嬉しいっていうよりも驚きの感情のほうが勝ってる」
そりゃそうだ。というか、相手がお姫様だったら親も喜んで承認するでしょうよ。
ただでさえごちゃごちゃにかき混ぜられた思考の中にさらに情報をぶっこまれて整理は追いついていなかった。
「それでさ、皆忘れてるような気がするけど、僕がお姫様と結婚したとして、生まれてくるのは王家の子なんだ」
とりあえずこの話がいちばん重要そうな顔をしている。脳内にあった思考をすべてどけて、この話のことだけを考えれるようにした。
「つまり、シュンが上流貴族になると、分家じゃなくて本家になる」
この世界は何度僕を上流貴族にさせたがるのだろうか。他の人に言われるのだったら断れるかもしれない。でも、よりにもよって今回この話を持ってきたのは兄である。
「でも俺はシュンの気持ちを尊重したい。俺が解決すべき問題にシュンを絡ませちゃいけない」
だからさ、とさらにトリオスは続ける。
「シュン、頼らせてくれないか?」
家から僕が出ていって、兄が言ってくれた言葉は「頼ってくれ」だった。けれど、兄だって人に頼りたいときもある。僕が兄にちゃんと頼っていかないと兄からも頼られない。
でも、それはきっとこっちも同じなんだ。兄から頼られないと、僕も兄に頼れない。
「兄さんのほうがよっぽど成長してるんじゃないかな」
トリオスはキョトン、とこっちを見たが、すぐに笑顔になる。
「自慢の弟に負けないようにな」
学園祭の二日目は二人で「元気でね」と言って別々の方向へ歩きだして終わった。
色々衝撃的な展開があったものの、兄とのわだかまりのようなものが溶けたような気がする。
僕も兄に負けていられない。いつかきっと、自分で良かったと思える道を歩かなければ。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
侯爵夫人は子育て要員でした。
シンさん
ファンタジー
継母にいじめられる伯爵令嬢ルーナは、初恋のトーマ・ラッセンにプロポーズされて結婚した。
楽しい暮らしがまっていると思ったのに、結婚した理由は愛人の妊娠と出産を私でごまかすため。
初恋も一瞬でさめたわ。
まぁ、伯爵邸にいるよりましだし、そのうち離縁すればすむ事だからいいけどね。
離縁するために子育てを頑張る夫人と、その夫との恋愛ストーリー。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
離縁された妻ですが、旦那様は本当の力を知らなかったようですね?~魔道具師として自立を目指します!~
椿蛍
ファンタジー
【1章】
転生し、目覚めたら、旦那様から離縁されていた。
――そんなことってある?
私が転生したのは、落ちこぼれ魔道具師のサーラ。
彼女は結婚式当日、何者かの罠によって、氷の中に閉じ込められてしまった。
時を止めて眠ること十年。
彼女の魂は消滅し、肉体だけが残っていた。
「どうやって生活していくつもりかな?」
「ご心配なく。手に職を持ち、自立します」
「落ちこぼれの君が手に職? 無理だよ、無理! 現実を見つめたほうがいいよ?」
――後悔するのは、旦那様たちですよ?
【2章】
「もう一度、君を妃に迎えたい」
今まで私が魔道具師として働くのに反対で、散々嫌がらせをしてからの再プロポーズ。
再プロポーズ前にやるのは、信頼関係の再構築、まずは浮気の謝罪からでは……?
――まさか、うまくいくなんて、思ってませんよね?
【3章】
『サーラちゃん、婚約おめでとう!』
私がリアムの婚約者!?
リアムの妃の座を狙う四大公爵家の令嬢が現れ、突然の略奪宣言!
ライバル認定された私。
妃候補ふたたび――十年前と同じような状況になったけれど、犯人はもう一度現れるの?
リアムを貶めるための公爵の罠が、ヴィフレア王国の危機を招いて――
【その他】
※12月25日から3章スタート。初日2話、1日1話更新です。
※イラストは作成者様より、お借りして使用しております。
罠に嵌められたのは一体誰?
チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。
誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。
そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。
しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる