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40話 対立

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 僕は何もしていない。でも、犯人として浮かび上がったのが僕だった。
 冷や汗が流れる。生徒会長が僕に目線を送っているのが分かる。まるで侮蔑するような冷たい目。

「どうやら、そういうことだったようだな。ここまでやっておけば自分が犯人の対象から逃れられると、上流貴族といえど許すわけにはいかないな」

 妹の方を見てみると、彼女も何が何だか分からないという顔で涙目でこっちを向いてくる。泣きたいのはこっちの方だよ。

「さて、どこからどこまでが嘘なんだか。魔法が使えないところは?上流貴族と縁を切ったところは?」

 いよいよマズいことになっている。現時点で魔法は無属性魔法が使えるし、トリオスからもらったカードも今は持ち合わせている。別に嘘をついたわけでもなんでもない。が、そう言い通すにはおそらく嘘に嘘を重ねることになってしまう。
 逃げてもダメ、反抗してもダメ、生徒会長に捕まったら終わり。
 これは八方塞がりってやつじゃないのか?静かに覚悟を決めるしかなさそうだ。

 なら、徹底的にやるしかない。ここで材料は全て揃ってしまったのだ。

「おい、お前の妹がどうなっても良いのか?」

 それは、考えつく中でも最悪の手段だったと思う。でも、これが一番生徒会長には効く。
 僕が魔法を使えると生徒会長に知られてしまった今、今の僕は拳銃を持っていると同義なのだ。当然、拳銃に弾は込められていない。

「この事をバラすようなことがあれば、この子がどうなるかはわからない。それに、おそらくこの話はあなたが関わるべきものではなかった」

 声が震えている。これでは、脅迫の効果も薄いかもしれない。銃を撃てないやつがそんな真似事してんじゃねえぞと。

Effect:FIREエフェクト・火魔法

 誰にも当たらないような位置に魔法を使う。火魔法が空中を這うように飛んだ。
 当然、エフェクトなので当たっても実害はない。ただの飾り物である。
 でも、威嚇には十分すぎるほどのものだった。
 生徒会長が少し怯んだ隙を見て、僕は生徒会長の妹の手を握って逃げた。学校の外まで。

 とりあえず、逃げ切ったけれどどうして僕が出てきてしまったのだろうか。

「僕は命令も脅迫もしていない、はずだよね」

「そ、そうですよ。でも、何かがおかしいんです。記憶が、曖昧になってきてて……」

 彼女は頭を抱える。一体全体彼女のからだの中で何が起きているというのか?


「調子に乗りやがるからそうなるんだよ、元上流貴族さん」

 そこにいたのは、二回ほど僕にぶつかってきた魔法学科の彼だった。
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