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37話 上流貴族、そして魔法

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 素材を消費することによって魔法を発動させるのは、無属性魔法だけらしい。

 その中でも、特にレアな素材を消費する「RD:Warpランダム・ワープ」はその効果もすごいものだった。

「対象の物、人物、魔法を魔法陣の内側に入れることによって発動する。この魔法でワープしたものはランダムに選ばれた場所に転移する。都市一帯をワープさせた例もある」

 という、規模の大きすぎるものである。
もしも素材消費無しでこれが発動できるとしたらとんでもなくおっかないしもしくは途方も無い年月をこの魔法のために捧げなければならない。
 こんな魔法を誰が考えついたのだろうか。そう思ってページを繰ってみるとこのような文字が目に入ってきた。

Warpワープ系の魔法はアトラト神が創造したものとされ、現在では第三位の上流貴族にのみ受け継がれる魔法である」

 第三位の上流貴族……。確かに、少なくとも分家のアステイモ公は使えそうだった。
 それにしてもアトラト神とはまたすごいつながりである。上流貴族というのはたどっていけば神にもたどり着くらしい。
 いや、じゃあ第二位はどこかと繋がっていたりするのだろうか。答えはすぐに見つかった。

Giveギブ系の魔法はミドラス神が創造したものとされ、現在では第二位の上流貴族にのみ受け継がれる魔法である」

 ミドラス神は記憶をたどっていけば確かに聞いたことがある単語だった。親は何かあった時に「ミドラス神のご加護があらんことを」とか言っていったような気がするからだ。
 どういう神なのかは調べたことはなかったが、こうやって見るとおそらくご先祖様らしいのである。
 てっきり上流貴族は貴族文字と魔法が使えればなれると思っていたのだが、どうやらそれがまったくもって間違いだったらしい。
 それはそれとして、そろそろ外も暗くなってきている。台所からいい匂いもしてきているしそろそろリビングに向かうべきだろうかと本を閉じた。

ーーーーーーーーーー

 僕は、魔法を封じられた。

 彼によって僕の魔法は封じ込まれてしまった。

 僕の意識ごと、封じてしまったから僕にはどうすることもできなかった。

 でも、誰かがそれを解除しようとしている。外からの力で。

 こじ開けるような、包を丁寧にひらくような、少しづつでも確実に。

 それは封じられている僕の魔法を解き放っていっていたのだ。

「やあ、こんなところで何をしているんだ?」

 彼はそういった。でも、これは彼であって彼ではない。

「探しているんだ。僕は……」

 何を?何を探しているのだろう?僕が大切にしてきたのは魔法だろう?

 今すぐ、戻らなければ。

 彼は追いかけてはこなかった。僕はまた、魔法の中に意識を溶け込ませていった。
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