上流貴族の地位を継げないようなので大人しく一般人になります

夏樹

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26話 ユナの母

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 僕たちが家に入ると女性の声がした。

「ユナ、おかえりなさい」

 僕には誰だかという確証はなかったが、ユナの顔や今までの話を聞いていればなんとなく想像がつく。
 ユナのお母さんのようだ。

「ああ、ユナ。お母さんの帰りが早くなるって伝える前にお母さんが帰ってきた」

 フルヤさんも少し困惑しているらしかったが、その顔には笑顔がきちんとあった。

「早くなってごめんなさいね。それで、あなたはどなた?」

 目線の先には……いや、ユナのお母さんと目が合ったからおそらく僕のことを聞いているのであろう。

「僕は、シュンって言います。先日からこの家に泊まり込みで働かせていただいております」

 ユナのお母さんはじっくりと僕を見る。あたまのてっぺんから足先までじっくりと。ひと通り見終えると、口を開いた。

「私は、ハルカ。ユナの母親で、フルヤの妻。職業は魔法使いね、ユナも魔法が使えるのよ」

 驚いた。言語学科にいるのだから魔法は使えないものなのだと勝手に勘違いをしてしまっていた。確かに、魔法使いの娘なら魔法は使えて当然?僕は見たことがないのでわからないけど。

「シュンくんの前で魔法の話、しないでよ」

 ユナが声を張り上げるのを初めて聞いたかもしれない。
 最初は勢いがあったが、徐々に声が弱くなっていったが。
 それにしても、彼女なりに気を使ってくれているのだろう。

「大丈夫だよ、魔法が使えないことをコンプレックスに思ってはいないから」

 ユナは僕の方を見て少しなにか言いたげだったが、すぐにハルカさんの方を向いてしまった。

「まあ、とりあえずここで話しているのもなんだし、上にあがったらどうだい?お母さんがお土産持ってきたって」

 見かねたフルヤさんが言うと、ユナはフルヤさんの方へ向かっていった。ハルカさんも階段の方へ向かうが、近くに僕がいることに気がつくと小声でこういった。

「シュンくん、あなたには魔法の素質はあるわよ。ただ、あなた自身がそれを使えないようにしてる。私にはそのくらいのことしかわからないけれど」

「いえいえ、お気遣いなさらず」

 僕自身が魔法を使えないようにしている?もちろん、僕はどちらかといえば魔法は使ってみたかったし、使えないようにしたわけではない。
 でも、兄から聞いた話によれば以前の僕は魔法が使えていたらしい。
 僕がこの体に転生したことが問題だったのだろうか。
 でも、転生するのと魔法が使えなくなることに関連性があるのかがいまいちよくわからない。

「あら、そんなに考える必要もないのよ。魔法が使いたいなら、面白いアイテムがあるの」

 ハルカさんはそう言うと、階段を上がっていく。
 僕もそれに着いていくことにした。
 二階に行くと、ハルカさんから本が手渡された。
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