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17話 生徒会長の本当の顔

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 生徒会長は妹がお好き。

 なんだかそういうタイトルの漫画がありそうだ。そんな事を考えつつ、クレミアの言うことにそっと耳を傾ける。
 愚痴は基本的にうんうんと頷いて聞いていればそれで良いものだ。意見を求められたら別として。

「なんというか、確かに兄だから妹を守るのは当然っていう意見はもっともなんだけどあれは過保護だよねー」
 
 にしたってあんなにしっかりとした生徒会長が妹にデレデレという状況が想像できない。機会があったらぜひ拝見してみたいものだ。

「と言いますかさー、シュンくんには兄弟とかいたりするんですか?」

「兄がいますね。頼れる兄ですよ」

 事実僕がこの学校に通い始めてからすでに頼ってしまっているため最近はさらに頼れる兄だと思うようになった。

「私は一人っ子なんですよー、羨ましいなー」

 クレミアさんの気の抜けた愚痴を聞いているとこの人が生徒会書記であることを忘れそうになってしまう。そもそもこんな愚痴入学して二日目の人に聞かせるものでもないでしょ。

「まあ嘆いていたって仕方ないですよね、実際兄ができるわけでもないしそれよりもそろそろ帰ろうか」

 言われてみれば外の景色は夕焼けに照らされて赤みがかっている。夕焼けなんて意識したのはいつぶりだろうか?

 古谷書店に帰ってくるとユナが本棚を掃除していた。
 昨日の夜以来、ユナは恥ずかしいのか僕に話しかけてくれることはほとんどなかった。ので、とりあえず挨拶からしてみようと思う。

「ただいま」

「おかえりなさい」

「疲れた」

「お疲れさまです」

 うん、すっごく他人行儀。
 まあ元はと言えば他人だから別にいいんだけれどもなんというかちょっとこそばゆい。

「すごかった。ヤキニクテイショク」

「え……え!?」

 もっとこそばゆい。
 なんでいきなりそういう事を言っちゃうかな、本当に一瞬なんて言われたかわからなかったよ。

「あ、あれはたまたま読んだだけだからさ、すごくもなんとも……」

 貴族だと相手はわかっているのだから別に言い訳をしなくてもいいのだがそれに気がついたのは言い始めてから少し経ったときのことだったから仕方ない。

「私、貴族言語が苦手でさ、あの文字を見てもさっぱりわからなかったの。けど、シュンくんがそれを簡単そうに訳したからシュンくんってやっぱりすごいなって」

 そういう彼女の目がキラキラしているからおそらく本音なのだろう。ユナは信じてもいいと思うけどまだ疑ってしまうのは僕の悪いくせなのだろう。

「でも、生徒会に呼ばれたって聞いて心配もしちゃった」

 あら、筒抜けでございましたか。あの先生の声一枚壁挟んだくらいじゃ秘密事項を話すにしては薄すぎますよね。
 まあ、けど心配かけたのだとしたのならば少し申し訳ない。

「心配なんてしなくていいよ、でもありがとう」

「一緒に住んでいるんだから心配くらいはさせてよ」

「あ、ごめん」

「謝らなくていいの、それにありがとうはこっちの台詞だよ」

 その言葉に不覚にもときめいてしまった。
 いや、もしかしたら別にただただときめいてしまっただけかもしれないが。

 僕は今、おそらくユナに恋をしてしまっている。
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