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8.人間はいつだってやり直せる。代償付きで。
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皆さんこんにちはこんばんはおはようございます!有頂天の吉原ヒナです!
ふふん、何で有頂天かというと、なんとなんと、今日が初めてのお給料日なんです!前の会社は給料貰う前に辞めちゃったし、これが初任給なんです!あぁ…労働の喜び…素晴らしい…!
「はいヒナさん、口座に振り込んどいたから、二百万。基本給プラスボーナスでもう百万ね。」
「にっ、ひゃぁっ、くぅっ、むぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁあああああああああああああんん???!!!キィィィィュゥゥゥウウウウウアアアアアアアアアアアアアアアアッッッハァァァァァアアアアアアアアアアイイ!!!!!ふっつぅぅぅううううの新卒がぁぁぁ、いっちねんかかる金額ぅぅぅ、一月でぇぇぇぇ稼いじゃぁぁぁぁああああっっっとぅぅぅぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!さいっっっこぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」
二十歳そこそこが一月で二百万、例え身体を売っても到達できない稼ぎだったろう。良かったね。
「いいんだよねサカ?これで?」
「…あーああああ、いいぜえい、どおおおーでもお。」
「何なのそれ。もっと責任感持ってよ。社長なんだから。」
「そぉーうですよぉ!せっかくの初任給なんですからぁ!もっと元気いっぱいに渡してくださいよぉ!あ、ひょっとしてぇ、私みたいな小娘に大金払うのが惜しくなってるんですか?今更?でもざぁんねぇん、もう振り込まれちゃいましたからねぇー。一生返しませぇん、べぇー!」
「いやまぁ、サカの後片付けだったりアジトの掃除だったりの雑用しかやらせてないけど、それでも費用対効果でみたら、ギリマイナスくらいで済んでるんじゃない?」
「あ、マイナスなんですか、そりゃそうですか。でもいいんです!お金は嘘をつきません!もっともっと貰えるように、これからも頑張りますから!よろしくお願いしますね、社長ぉ!」
「おーおおう、勝手にしやがれえい。」
サカは朝からこんな調子。イマイチテンションが低い。
「社長ぉ、どうしたんですか?いつもの元気が無くて逆に怖いですけど。糖分の摂り過ぎで血液までドロドロになったんですか?もう死んじゃうんですか?」
「確かにちょっと変だね。大人し過ぎ。本当に何かあったの?」
「いんーーーやあああ?別になあああんもおねええええいぜえええい。ただまあああ、ちょおおおっとお気になることがあ増えてえちょおおおいと考え込んでえるだけだあああよ。」
「社長でも考える頭の余地があるんですねぇ。」
「無いことは無いでしょ。まぁ大したことないならいいけど。」
「ううーん、でもなあああ、気がちょおびいっとおおもてえええのはあ、ガチだわなあああ。」
がしがし
サカは頭を掻いて、二人に向き直る。
「っまあああああああ、考えてえもしょおおおがあああねえええかああああーあああ。おおおいおいおいおめえらあああ、ちょっとお付き合えええええええい。」
「え…?付き合えって…?」
トクン
ヒナの胸の奥が温かくなる。
「うるさいうるさい何に?どこに?」
「気晴らしいだあああーああよおおおう。買い物だあわああああいなあ。」
「へ?」
「ほ?」
サカ一行、ぶらりショッピングに行く。
東京、立川。
巨大ショッピングモール、罵莉・塔堂。
「社長もこういう庶民的なとこ来るんですねぇ。『俺ちゃあああんにはこおんな庶民愚民が来るようなところにゃあああ似い合わなあいのよおおおう』とか言って馬鹿にしそうなのに。ザギンでシースーしかしなさそうですけどねぇ。」
「バッッッキャアアアアロオオオオオがあああああいやあ。たっけえええものにしかあ目がいかねえええのはあ二流もお二流よおおお。真の一流はなあああああ?こおおおーいうところのお良さおも汲み取おり差し込おみいすうるものなのさああああよ。」
「それに最近のショッピングモールってただ安いもの売ってるだけじゃないしね。アパレルでもジュエリーでもグルメでも何でも、高級ブランドからのテナントも多くなってて、高級志向のスペースも増えてきているよ。子供や家族連れだけをターゲットにする時代は終わったよ。これからは独身で金を貯め込んでる人の消費先にもなるのがこういうショッピングモールの在り方なのさ。」
「そおおおうともお、案外馬鹿にしちゃあああいけねえええんだぜえい、モールの底力ってえええのはよおおお。」
「へぇぇぇ、最近はそうなんですかぁ。あんまり行ったことないから分かんなかったなぁ。それで、ここで何買うんです?私、さっきの給料ほとんど送金しちゃったから、お金無いですよ?」
「勿体無い。全部自分のにしちゃえばいいのに。実家なんて捨ててさ。」
「なぁんでそういうこと言うんですかぁ?血の繋がりってなかなかにしつこいんですよぉ。捨てたくても捨てれない、そんなもんなんですぅ。私は情に厚いんですぅ。」
「もう呪いじゃんそんなの。まぁ自分が納得してるなら良いけどさ。で?結局何買うの?」
「まああああ、てっきとおーにだわなああああ。ただの気晴らし冷やかし嫌がらしだからなあああ。まああああ欲しいもんっちゃあああああなっくはあねえええけんどよおおお。おめえらあも考えとけえええい。」
「え?!タダですか奢りですかぁ?!それはつまりつまるところ、社長が何でも好きなもの買ってくれるってことでぇいいんですかぁ???!!!」
「おおおおおーうよお。漢に二言は無いんだぜえい。まあでもお?手心はあ?加えてもらってもおおおいいかもなあああ?せえーぜえー五十万くらいにしとけよおおお。無駄あに身の丈えに合わねえええもん買ってもおおお、その後おの人生でえええ、審美があああんをお曇らせっらあああだけえいだからなあああ。」
「でも奢り、奢りなんですよねぇぇぇ???!!!いぃぃぃいいいいやっっっっふぉぉぉぉおおおおおおおいいい!!!!宝石時計大換金んん!!!!」
ばんざーい、ばんざーい
「本当に珍しいね。奢りだなんて。どういう風の吹き回し?」
「なあああーに、本当になんでもねえんだあああよ。ただなあ…」
「ただ?」
「できるときにできることを、ってえやつだあああなあ。」
「…?意味分かんない。まぁいいや。僕も買ってもらうからね。」
「好きにいしろおい。」
「社長ぉー!ソートさぁん!行きましょうよぉぉぉー!!!」
ぴょんこぴょんこ
ヒナはさっさと入り口の前まで行き、飛び跳ねている。
「全くがめついんだか無邪気なんだか。」
「ヒイイイイナアアアアア、はやるんじゃあああねえいやあああい。夕暮れえええ前のおおおおショッピンギイモオールは戦場だぜえええい?」
「またまた戦争だなんてそんなそんな…ちょっと混んでるだけでしょ?大げさですねぇ。」
入場。
ドドドドドドドドドドドドドドドド
ィィィィイイイイイイイイイイイイエエエエエエエエエエエエエエエエ
ギィィィィヤァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
キョェェェェェエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアア
チョァァァァァァアアアアアアアアアアアアアッッッスゥゥゥウウウウ
奇声を上げて駆けて行くババアの群れ。その行先とは。
食料品売り場。
「離しなさいよぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!!そのゴーヤーはぁぁぁぁ、あたしいんのカゴに入ってたやつだろうがぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!!!!」
「うっっっせぇぇぇぇぇえええええええええええバッッッバァァァァアアアアアアアアアアア!!!!レジを通すまでが特売だろうがああああああああああああああああ!!!!!そんなに惜しけりゃあ、腕に縫い付けるくらいの覚悟決めんかああああああああああいい!!!!!!」
「おんめえええええもおおおおブアッッッッブアアアアアアアアどぅぅぅううううあああああああるぅぅぅぅううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおがああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!家にはなぁぁぁ、育ち盛りぃのおクソガキがぁぁぁぁああああ、三人いんだよぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!栄養バランス考えてぇ、腹いっぱいにさせにゃああああならんのだぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!!!離しやがれクソバンババアアアアアアアアアアアアアアアアアンン!!!!!」
「はいぃぃぃーーーーーーー!!!!!家は五人いますぅぅぅぅううううううう!!!!!はい家族バトルあたっしの勝ちぃぃぃいいいいいいいいい!!!!!!あたしの方が良妻賢母ぉぉぉおおおおおお!!!!!分かったらぁさっさと譲りやがれクソンソンブァァァァブァアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!」
「なんだとぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!家のはみぃぃぃいいいいいんなああ男なんんだよぉぉぉおおおおおお!!!!しかも全員中学と高校ぉぉぉおおおおおお!!!!食欲やべぇぇぇぇぇえええええんんだよぉぉぉおおおおおおあいつらぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!家の食料ぜぇぇぇぇえええええんぶぅ食い尽くしやがんのぉぉぉおおおおおおおお!!!!!柱までかじってんのぉぉぉおおおおおお!!!!家が壊れちゃうのぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!」
「家もぉぉぉぉおおおおお!!!!男三女二ぃぃぃいいいいいい!!!!あいつら好き嫌い多過ぎなのぉぉぉおおおおおおおお!!!!!やれ人参がダメ、茄子がダメ、こっちはピーマンがダメ、ブロッコリーがダメ、そっちは豆嫌い、肉増やせだの何だの言ってくる、あっちはご飯食べたくない、お菓子食べたからいらないだの言ってくる、向こうは魚が嫌、骨全部抜いて、米が硬い、もっと柔らかくして、んで旦那は米硬めが好きで、毎食の後にコーヒー飲みたがる…っっっっっっっっしぃぃぃいいいいいいいいっっっっっるぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁあああああああああんぬぅぅぅぇぇぇぇええええええよぉぉぉおおおおおおおおおあああああああああああああ!!!!!どぅぅぅぅぁぁぁぁっっっったらぁぁぁぁああああああああ、てぇぇぇぇぇええええええんむぅぅぅぇぇぇぇえええええるぅぅぅぅうううううあああああがあああああああああっっっっ、くぅぅぅうううううあああああああっっっっっっっっとぅぅぅぅぅぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええにぃぃぃいいいいいいいい作ぅぅぅううううううううううれぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええあああああああああああああああああああああああがあああああああああああああ!!!!!!」
「分っっっっっかるぅぅぅううううううわああああああああああああああ!!!!!あいっっっつるぁぁぁぁあああああああっ、飯作ってもらうのがぁぁぁぁああああああ当ぅぅぅぅっっっっ然だとおおおおおおおおお思いやがってぇぇぇぇぇええええええええ!!!!!!そんっっっっのおおおおおくせぇぇぇぇえええええええ!!!!!文句ばぁぁぁぁぁっっっっっっかりぃぃぃいぃいいいいいい言いやがるぅぅぅううううううううああああああああああああああああああ!!!!!あたっしぃぃぃいいいいはあああああああ!!!!!めっっっしつかぁぁぁぁぁあああああいいいいじゃあああああああ、ぬぅぅぅううううううえええええええええええええんんだぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああいおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「うんうん、そうよねぇそうよねぇ!母の辛さなんて誰も分かってくれないわよねぇ!だからこのゴーヤとあとその卵とじゃがいもも貰っていくわね。」
「そうよぉ母は孤独の戦士なんだから!せめて私たちは手を取り合っていかないと!だから一つもやるわけねぇだろコラボケカスクソ。」
ふんがぁぁぁぁああああああ!!!
ふんぎぃぃぃぃいいいいいい!!!
醜いやり取りをしていると、
シュッ
シュシュッ
「…?あ、あら?!私のカゴの中が、すっからかん?!」
「あれ?!私も?!どうして…」
ふっふっふっ
二人の先には、ピンク髪の派手なガチババアが。両腕に下げたカゴにはぎっしり特売品が詰まってる。
「特売で立ち話するお馬鹿さんがいるもんかい。まだまだ青いガキどもめが。あたっしゃあの養分になるがいいのさ。」
ダッ
急いでその場を離れるガチババア。真っ直ぐレジへ。
「「待っっっっっちやがれぇぇぇぇええええええええええクッッッッソオオオオブゥゥゥァァァアアアアアアブゥゥゥゥァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」」
「へーんだ、年の功舐めんじゃないよぉ!あんたらみたいに争ってるとこを、ぜぇーんぶ横取りすんのが生きがいなのさぁ!死ぬまで遊ばせてもらうからねぇ!」
ヒィーッハッハッハッハッハァ
ギャァァァアアアアアアアアアアアアアアア
ワァァァァアアアアアアアアアアアアアアア
こんな感じの争いが随所で繰り広げられていた。
その隅で呆然と立ち尽くすヒナたち。
「六波羅さんだ、こんなとこまで来てるんだね。」
「な、なんですかこの世の地獄を煮詰めて濾した残りカスみたいなこの惨劇は…」
「平日はあメインタアーゲッツが主婦だからあああーよお、日用品とかのお特ばあいがあ、そっこそこそこそこやあってえんだよおなあああ。かけーを支えるう主婦にとっちゃあ戦場にもお地獄にもおなるわあなあああ。」
「にしても酷いねこりゃ。ルールも何もあったもんじゃない。商品まで踏み潰しちゃってるし、モラルの欠片も無いよ。こんなのに育てられる子供も憐れだね。」
「うんんーにゃあああ?子供も子供でえええたっくましいいいぞおおお?俺ちゃあんもこっこには用はねえええしいいい、他に行ってみっかあああ。」
楽器販売店。
「ちょっとちょっと君たち、ピアノはもっと丁寧に扱って…」
バァァァーン♪
ガジャァーン♪
小学生低学年くらいの子供たちがピアノを素手でべたべた触り、鍵盤をグーパンでひっ叩いている。
「うるっっっっすぅぅぅうううううえええええええええええええええええ!!!!!おんれのをおおおお、ひょぉぉぉーーーーーげぇっんのぉぉぉおおおお、じっっっゆぅぅぅうううううううううをおおお、じゃっっっむぅぅぅぁぁぁああああああすんんじゃぁぁぁぁーーーーーーあああああぬぅぅぅぇぇぇぇええええええええええ!!!!!」
「こっこを直で叩いた方がぁ、いいーいいいいい音鳴るぜええええええ!!!!」
子供たち皆んなで弦を直接叩き始めた。
べァァァァアアアアアーン♪
グワワワワワァアアアーン♪
「ちょ、ちょっとお…!」
ギャァァァァアアアアーン♪
ブッ、ブツ…
バツバツバツバツバツ、バッツゥゥゥン
「ぎぃぃぃやぁぁぁああああああああ???!!!弦が、弦が全部切れたあぁぁぁああああああああああああ???!!!」
「やっべ壊れた、逃げるぞ!」
わーきゃー
蜘蛛の子を散らすようにさっさと姿を消した。
書店。
「なんでぇいこれぇ、水着ばっかりで、全然裸ねぇじゃん、こんなんじゃコーフン、しねぇよぉ!俺のビッグマグナムも元気が出ねぇぜぇ!」
「こいつ顔ぶっさいくぅー!おっぱいでけぇだけじゃん、そんなら乳首くらい見せろよなぁ!」
「何が秘密の袋閉じだよぉ、ただのセミヌードじゃんかぁ!こんなんじゃ世間は許してくれませんよぉ!」
ビリビリ、ビリィ
子供たちが本棚に寝転びながらグラビア雑誌を無造作に読んでいる。
「こらぁ!クソガキどもぉ!土足で本を踏むんじゃねぇっつったろがぁ!!!あと買ってもねぇのに袋閉じ破るんじゃねぇぞぉ!!!」
「ふんだ、これなら親父のAV観てた方がマシだったよぉ!」
「バイバイジジイ、また荒らしに来るからねぇ!」
「あんの野郎どもぉ、本当に困ったもんだ…」
キャッキャッ
楽しそうに逃げていった。
ゲームセンター。
メダルゲームコーナー。
小学校高学年くらいの子。
「おいおいこの台の設定どうなってんだよぉ?!もう当たるはずだろうがぁ普通はよぉ?!んだよこれ、詐欺じゃねぇか詐欺ぃ!犯罪だろ!知らねぇのか犯罪って?!ガキでも知ってるぞ普通はよぉ?!警察呼んでやるからなぁ、覚えとけぇ!」
ガァァァン
ゲーム機を蹴っ飛ばして去って行った。
音楽ゲームコーナー。
高校生くらいの子。
「きぃぃぃいいいいいい!なぜ拙僧のあのパーフェクトなプレイで、パーフェクトになってないのでござるかぁぁぁああああ?!この手袋が悪いわけではござらん、よなぁぁぁああああ?!ハッ?!だったら、ここのパネル感度が悪いのでは?!ほら、やっぱり、ここだけ熱がこもってない!なんだ、壊れてるのでござるなぁ!どれ、拙僧がぁ、叩いて直してあげるでごわすよぉ、フンッ!」
バンッ
「フンフンフンフンッ!」
バンバンバンバンッ
「フンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフン」
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッ
バンバンバンッ…
ボォン
プシュゥゥゥー
「んんん?なんだ、本当に壊れてしまったでござるか。何も映らんくなりもうした。まぁいい。拙僧の貴重な百円を吸った罰でござる。これくらいは至極当然。さて、他の台に移るとするでござる。次は壊れてないといいのでござるが…」
スタスタスタ
UFOキャッチャーコーナー。
中学生くらいの子たち。
「これ取り出し口から中に入れるじゃあん、全部取ろうぜぇ!」
「取ろう取ろう!棚のやつも、ディスプレイも全部取ろう!」
「ん、あれこれ、引っ掛かって取れない、出せないよぉ、うぜぇなぁ!」
「どけどけどけい、ぶち割ったらぁ!せーのぉっ、」
ガッシャァァァン
椅子をぶん投げてUFOキャッチャーのガラスを割った。
「ちょw流石に犯罪じゃんw笑えるw」
「いいだろこんくらいw取れない設定してる店の方が悪いんだしw」
「オモロw写真撮ってSNSに上げよwバズり間違い無しw」
「いいねwUFOキャッチャーの台全部割って景品取るチャレンジw」
ウェェェーイw
渡り通路になぜかあるマッサージチェア。
高校生のカップル。
「あ♡ちょっと♡こんなとこで盛らないでよ♡いやんもう♡どこをマッサージしてるのぉ♡皆んなに見られちゃってるぅ♡」
「はぁはぁ…いいじゃないかぁ…ゆなたんの可愛いところ…皆んなに見てもらお…?」
「キャッ♡ちょっと、服脱がせないで服脱がせないでって…あらやだぁ♡もーうガチガチになってるぅ♡キャー♡」
「はぁはぁ…僕たんもう我慢できないよぉ…ゆなたんの下に原点回帰させて?いいよね?しちゃうよ?回帰しちゃうよ?」
「あん♡ちょっと♡皆んな見てるってばぁ♡あっ、もう、擦りつけないでよぉ♡もう、やるなら、早くしてぇ…?」
「うおおおおおおおおおお!ゆなたぁぁぁぁあああああああああん!」
ずっぷし
「あああああああああああん♡♡♡」
子供たちの狂喜乱舞の様に動揺を隠せないヒナ。
「な、なんですかこれは…?猿の惑星にでも来ちゃったんですか…?本当に人間…?」
「…流石に絶句するよ。今時の子供ってこんな感じなの?犯罪者じゃん、すべからく。」
「まああーあああ、親に連れられてきた子供の暇潰しちゃああああ、店を冷やかすうしかあねえええからなああああ。それと放課あ後おにい時間が余って余って余ってえしっかたがたがたねえバカアップルウどもお。きちゃない交尾なんて見たくもねえっつうのお。」
タタタタタタ
ッパァン
「ひぎぃ?!」
誰かがヒナの尻をひっぱたいた。
ガキどもが傍を走り去っていく。
「どうだどうだどうだった?生の女のケツ?気持ちいい?その指舐めていい?」
「ううん、大したことなかった!柔らかくもないし、カチカチだった!カチカチ山だ!」
「カチカチ山なの?」
「カチカチ山!」
「「やーい、カチカチ山ぁ!」」
「こらぁぁぁああああああ!!!私はまだ成長中なのぉぉぉおおおおお!!!今に見てなさぁい、出るとこ出るんだからぁぁぁああああああ!!!!」
キャハハハ
ガキどもは去って行った。
「うぅ…居心地最悪ですぅ…買うもの買って出て行きましょうよぉ…」
「そだね。何買うの?」
「まずはあああああ、玩具屋だよおおおおい。予約してたあああカードパックを取りに行かあああなああああ。」
「え、サカカードゲームやるんだ、意外。結構やるの?」
ソートが食いついてきた。
「いんやあ?ただよお、金の無いガキどももしくは世の中のやちゅらにい、自慢したろおかあああと思ってよお、買い集めてるだけだぜえええい。ルールもへったくれも知らねえええゲームだあああい。」
「なんだ…そうか、そりゃそうか。」
ソート、がっかり。
「ほら幾三お。玩具屋に出向だあい。」
玩具屋。
「でも玩具屋なんて荒れに荒れてるんじゃないの?まともに買い物できる気がしないけど。」
「いやあそれがそうでもねえんだよなあ。ほれみれえい。」
サカが指差す先には玩具屋、その入り口と店内には、
ズォォォォン
ミリタリースーツを着込んで銃を携帯している屈強な男たちが巡回していた。
そのおかげか、店内とその周辺は落ち着いている。
「ええええええ?!なんですかぁ、この厳重な警備ぃ?!」
「昨今のカードの値上がりとかあ、ゲームハードのお品薄とかあ、転売ヤー撲滅なんかをお鑑みてえ、とおーうとおーう全国の玩具屋があ、傭兵を雇うようにいなったんだあーああよお。あれも実銃じゃあねえ、シリコンの弾があ出るだけだがなあ、暴徒の鎮圧にゃあー十分らしいいいぜい。」
「そうなんだ。でも確かに問題だからね。買いに来る皆んなも殺気立っちゃうし。このくらいやらないと駄目なのかもね。」
「そうは言っても限度がある気はしますけどぉ…」
「まああーあああいいやあい。さっさと受け取るかあああ。」
入店。
カウンターで、
「おおおーいおいおいおい。ちょっとおそこのお兄さあん。カード予約してたあああサカツキだけんどもおおお。」
「あ、はい、ご予約のお客様ですね。少々お待ちください…あ、はいはいこれですね。今持ってきます。」
パタパタパタ
店員の戻り待ち。
「社長が『サカツキ』って名前なのちょいちょい忘れそうになりますよね。」
「僕も。サカとしか呼ばないし。」
「ところでその、社長の下の名前ってソートさん、知ってます?『サカツキ』って苗字ですよね?」
「ううん、僕も知らないんだよね。それとなく聞いたことはあるんだけど、なんかはぐらかされちゃって…」
「なあああんでえええ、おめえらあなんぞにい、教えてやらにゃあーいかんのでえい。」
「いや別に知りたくもないけどさ。一応気になるじゃん。」
「でもそれで言えばソートさんの本名も気になりますけど…え、てか私だけじゃないですか?フルネーム公表してるの?いやだぁ、恥ずかしい!二人も公表してくださいよぉ!」
「嫌だね。」
「知りたきゃ勝手に調べればいいだろがあい。」
「もぉぉぉ!分かりましたよ、もういいです!」
バタバタバタ
店員が慌ただしく戻ってきた。
「お待たせしました…いや、あの、ご予約いただいた商品なんですが…」
「あああん?無かったのか?」
店員は手に何も持ってない。
「いやあるのはあるんですが…それが…」
「Don't move!」
突如過ぎる英語が店内に響いた。
「おん?」
「え?」
「面倒事の予感…はぁ。」
声のする方向に行ってみると、傭兵たちが小学校中学年くらいの子を三人、ふんじばって拘束していた。
「くそぉ、捕まるなんて…!」
「やっぱり無理だったんだよ、こんな厳戒体制を突破するなんてぇ!」
「私たちの人生終わりだぁぁぁ!うぁぁぁーーーーん!」
綺麗な目をした男の子、ちょっと太めで糸目の男の子、何の変哲もない女の子の計三人。
「諦めるなよ!俺たち三人、転売で食っていくって誓ったじゃんか!これをその一歩にするって、約束したろ?!」
綺麗な男の子の小脇にはキラキラしたカードパックがあった。
「あ!あれがもしかして、社長のですかぁ?!」
「まちげえねえなあああ。グレモンカードのフェラスタルBIG Analystsパックだあああよお。」
「きもい名前。」
「Don't move! Don't move! F〇ck you bitch! I can kill you! Fu〇k!」
「うぁぁぁーーーーん!動いてないのに動くなとか言ってくるしぃぃぃーーーー!なんか殺すとかおっかないこと言うしぃぃぃいいいいいい!終わりなんだぁぁぁぁあああああ!」
「諦めんなぁぁぁああああああああ!!!くっそ、こんなのぉ…!」
綺麗な男の子が身を捩って拘束から逃れようとするが、
「Don't move! Don't move! Don't move!」
ガッ
ガッツン、ガッツゥン、ガァッツゥン
「げっ、げはっ、ごはぁっ!」
傭兵は綺麗な男の子の身体を掴み、持ち上げ、何度も地面に叩きつけた。
「うわぁぁぁーーーー!怖過ぎるよぉぉぉーーー!てか英語それしか知らないんじゃないのぉぉぉーーー?!かっこいいから何となく英語喋れる風にしてるだけじゃないのぉぉぉーーーー???!!!」
ピタッ
傭兵たち全員の動きが止まる。
ツゥー
全員の額から冷や汗が流れる。
「図星だね。」
「図星ですねぇ。」
「ばっかでえい。」
「「「「「Don't move! Get away! Mother-f〇ucker! Power-bunger! Oh my pussy jungle! Netflix and chill!」」」」」
「うわぁぁぁーーーー!切れたぁぁぁーーーー!怖いよぉーーーー!」
「ねぇ店員さん、この子たちどうなるんです?」
「多分、この人たちに折檻受けた後警察にポイ、ですかね。まぁただでは済まないでしょうね。一生消えない傷が身体に残るでしょう。」
「嫌ぁぁぁーーーー!ママァァァーーーー!」
「くっそぉぉぉぉおおおおおおおおあああああああ!!!!!」
ザッザッザッ
サカが子供たちに歩み寄る。
「おーうおーうおおおーう。まあったくう、何してんでえい。」
子供たちがサカの方を向く。
すると、次第に目の輝きを取り戻して、
「…?!ボス?!ボスじゃないですかぁ?!」
「ボスゥーーー!ごめんなさぁぁぁい!ボスのものとは知らなかったんですぅぅぅ!」
「許してぇぇぇー!あぁぁぁーん!」
「え、サカ、何、知り合いなの?」
「知り合いってほどでもねぇけどさぁ、こないだ、一か月くらい前かあ、この玩具屋に来たときなあああ?」
ポワンポワンポワワワ~ン
回想タイム。
**********
「なんだかなあ、やけえに騒がしいとお思ったらあ、カードの大会だかなんだかあやってたのよおーう。」
「あぁ、たまに小売店で小さな大会みたいなのやるよね。優勝したらそこそこのプロモカードとかプレイマットとか貰えるやつ。」
「そおそ。んでえ、興味本位いでえ覗いたらなあ、案のじょお、ガキばっかしでえ賑わってたんだがなあああ?そんなかにい一人い、おおっきいお友達があいたんじょお。」
「?おっきいお友達?」
「こどおじだよ。とっくに成人してるのに童心をいつまでも捨てられないでしがみついてる人のこと。」
「まあああそいつがよお、めっぽおおおつえええんだわあ。ガキどもが泣きながら喚きながらあ負けてくんだわあああ。」
「資金力も違うし、経験量も違うだろうから、そりゃそうなるよね。」
「んで結局そいつがあ優勝してえ、そしたらあ、なんーかあ店員と揉め出したあああーわけよおーう。」
『何で何で?僕優勝ですよね?その事実に嘘偽りは無いのですが?早く景品を渡してもらえます?忙しいんですよ僕も。もしかして遅延行為ですか?そうなんですか?やめてくれませんかそういうの?大人として恥ずかしくないんですか?』
『いや、今回は渡しますけど、あのですね、もうこれ以降参加はご遠慮いただきたいんです。』
『え、何でですか?僕何かルール違反しましたか?してないですよね?』
『いやそうではなく、この大会はですね、子供たち、小さな子たちに向けたものなんです。』
『え、年齢制限無いじゃないですか。あるならそう書くのが普通ですよね?え、なんか僕が悪いふうにするのやめてもらえます?そっちの落ち度なんで、はい。反省してください。』
『まぁ、あえては書いてないんですけど、その、雰囲気というか、子供たちしかいないところを、こう察してほしいというか…』
はぁー
おっきなお友達がおっきな溜息をつく。
『もういいですいいです分かりました。これ以上は話し合いの無駄です。これからは来ませんから。それでいいですよね?勘弁してほしいなぁ、運営の責任を参加者に押し付けるの。これだからどんなカードの大会も盛り上がらなくなって廃れていくんだよ。第一…』
『うっせえええわあああーいい。』
ドッグシャアアアアン
前蹴り一発。
『ぷげぇらぁっ?!』
おっきなお友達はおっきな物音を立てて倒れ込んだ。
『は?は、は、は、は?!なんだ、なんなんです?お前?』
『たあだの通りすがりだよおおおおおい。なんかあうじうじうーじ宇治うじいと文句垂れ流してえいるうやからあがいたかあらあよお、イラあついてえ、ちょいとおコカしてえやったあああだけだよおおおーうっとお。』
『は、は?!コカしただけ?!こんなにぶっ飛ばしておいて?!ふ、ふざけるな、ふざけるなぁ!ぼ、暴力だ、犯罪だ、け、け、警察に言ってやるから、なぁ?!そ、それに、おい、傭兵ども!こいつを抑えろよ!なんでぼーっと突っ立ってんだよ!仕事しろよ!怠慢がぁ!』
『なんでえ突っ立ってるかあ教えたろかあああい?そりゃなあ、内心スカアッとしてんのさーああ。うだうだうだ宇多田世迷言をぬかしてえるうクッソオ野郎にいなあーああ。』
『は?そ、そんな…』
おっきなお友達が傭兵たちに目をやるが、誰も目を合わせてくれない。
『分かったかあああ?確かにおんめえはなんのルウールウもお破ってねえええ、善人なんかもしれねえええ。でも、なあ?時としてえ、世論はあああ、法律を超越するってえこったあああ。』
『そんな、馬鹿な…』
『ほら、これ優勝の景品。あげますから、もう来ないでくださいね。』
『…ぅぅ、うううわぁぁぁぁあああ~~~~~~ん!!!!マッマァァァァアアアアアアア~~~~~~!!!!!皆んなが虐めてくるぅぅぅうううううううう~~~~~~!!!!!えぇぇぇぇええええ~~~~~んん!!!!!』
おっきなお友達は景品を持って逃げ去っていった。
『ねぇねぇ、お兄さん、凄いね!かっこいい!』
いつの間にか子供たちがサカを取り囲んでいた。
『はあああん?』
『あの臭いおじさんを追っ払っちゃうなんて!正直かなり鬱陶しかったんだよ!』
『うんうん!頼んでもないのにコーチングとか言ってデッキを覗いてきて、あれはダメこれはダメって、めっちゃウザかった!』
『それにたまに女子がいるとはぁはぁ言って近づいてって、肩とか触ってくんだぜ、羨まし、じゃない、気持ち悪い!』
『そのくせルールはいっぱしに守ろうとするから、なかなか叩き出す理由が無かったんだ!そこをもう、暴力で解決するなんて!誰にもできることじゃないよ!』
『おおおい、褒めてえんのかどうかあ分からあん言い回しいすんじゃあねえよお。』
『これでここの治安は守られたよ!ありがとう!お兄さんは、ここのボスだ!』
『そうだそうだ!ボスだボス!』
『『『『『ボース!ボース!ボース!ボース!』』』』』
『勝手えに盛り上がりやがってえええ、たあああっくよおおお。』
「なるほど、経緯はともかく、子供たちを救った形になったんですね。それでボスって呼ばれてると。」
「実質そのおっきなお友達と変わらない気もするけど。」
「はあああーーーーーーーあああああん???ぜんっっっぜえええん違うねえええ!!!おみゃーーーにはこんのおおお俺ちゅわああああんがあああ、あんっっっなああああああおゴミとおおおおおおお、同一不可避に見えるんかああああああああーあああああんあんああん???」
「ごめんて。とにかく、そういうことがあったのね。ほら、回想終わろう。」
**********
場面は戻り、綺麗な男の子が続ける。
「…ボスのだって知らなかった。知ってたら、盗もうなんてしなかった…」
ザッ
サカが屈んで目線を合わせてやる。
「あああん?ちっげええええだろうがああああいやいやいやいのおおお康介えええ。俺ちゃあんのじゃあああ無かったらあああ、何でもおかんでもお、盗んでいいってかあああ?ちっげえええよなああ?そんなもおん、絶てえええに分かってえるはずだよなあああ?」
「…」
綺麗な男の子は目を伏せる。
「おめえええらはあどおーだあ?」
他二人にも問いかける。
「悪い、悪いですぅぅぅうううう!」
「ごめんなさぁぁぁい!」
「ふうんふうん、盗みはおめえらあにとっっっちゃああーああ悪いいことじゃあねえええんのかもしんねえええ。でもなあ?世論でもお、法律でもお、悪いことってえ決まっちゃってんだわさあああ。んでええーえええなあ?それでなあ?えええ捕まっちゃったんならあああ?罰を受けるうのもお致しっかたあねえええよおなあ?」
「…」
「うぅ…」
「ぐすん…」
「でもおおお?人間誰しもおおお?間違えるこったあ、あっああああああーーらあああなあああ?そんなあ一時のお間違いおおお、全くう許してえやらにゃあああい世の中じゃあああいけにゃあああいと思うんじゃああああああい?な?」
「え…?」
三人を優しく見下ろす。
「それにい、おんめえらはまんだまんだあわっかあああああいい。いっくら筋子とびっこいくらでえええもおやりぬあおしいがきっくわあああなあああ。」
「許して、もらえるの…?」
「本当に…?」
「嘘…?」
「どおっだああああ?もいっちっどお、ちゃあああんと生きていくってえ、ゆあっくそおっくうできっかあああ?」
「はいはいはぁい!約束しますぅ!」
「今度からはちゃんとしますぅ、良い子になりますぅ!」
「…次は、ちゃんとやる。」
綺麗な男の子が顔を上げる。その瞳は静かに燃えていた。
「次こそは、ちゃんと情報仕入れて、深夜から場所取って並んで、それで、正々堂々、転売の仕入れをする!」
「ホントかあああ?」
「うん、ボスに誓う!」
きひぃっ
「いいいーいいい目ン玉だあああ。取って食っちゃいたくなるくれえええになあああ。ま、せいぜい頑張りなあっとお。」
「良かったぁ、助かったぁ!」
「ありがとうボスゥ!」
「次は、次こそは…!」
「そんじゃあまあ、こいつは返してもらってえ。」
ひょい
綺麗な男の子がしれっと腹の下に隠していたカードパックを取り戻す。
「え?あ、当然か、うん…」
「んじゃああんたたちい、あっとはよろしくねえええん。」
「「「「「Yes, we can!」」」」」
ガッバッ
傭兵たちが子供たちを抱えて移動を始める。
「は?え?は?え?は?え?蠅?」
「ええええ、え?」
「何で何で何で?え、許されたんじゃ、ないの?え、ボ、ボスゥ?」
「ボスって、ねぇボスってばぁ?!話が、違うよぉぉぉおおおおお?!」
「はああああああーああああんあんあんあああんあんあああん???おんめえらこそお、俺ちゃあんのはなあし聞いてなかあったんかああああああ?上にスクロオオオールしてえ、確認してみやがれえええ。罰は受けろってえええ言ってるよなああ?俺ちゃあんが言ったのはあ、罰を受っけた後おの話だぜええええ?」
「え、でもそんな、違うじゃん?!許してあげようみたいな綺麗な流れだったじゃん?!そういう感じだったじゃあああああああんん????!!!!」
「ピーピーピーピービービーうんるせえええのお。なあああにがあ転売屋亜だあああああい。この世でえいっちべえん塵芥のおおお生業じゃあねえのおおお。そんなやあーつさっさあとお地獄にい落ちればいいのおよおおおーん。あんたらあああ、しいっかりい折檻してくれよおおお。二っ度っとお二足歩っこおーできんねえええくれえええになああああ。」
「「「「Yes, sir! Let's go execution!」」」」」
「あ、お代は前に貰ってますね。じゃあ大丈夫です。ありがとうございました。」
「おおおおーうおう。じゃあああなあああ。」
「嫌だぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!てかこいつら日本語分かってんじゃねぇぇぇええええええかあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「離してよぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!まだ二足歩行していたぁぁぁぁああああああああああああああああああいいいい!!!!!!!四足歩行は嫌ぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!!!人が人でいられなくなる臨界点を越えてるぅぅぅぅぅうううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!」
「メェェェェァァァアアアアンンメェェェェァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアウウアウアウアウアウアウアウアウアウアウアウアウアウアウアウアウウウウウアアウアウアウアウアウアウアウアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
「ボ、ボスッ、ボスゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!これっだかっらぁ、おぉぉぉぉっっっっっとぅぅぅぅぅぁぁぁぁなぁぁぁぁぁぁああああああああうぅぅぅぅわぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああ、はああああああああああああああああああああああああっっっ、きィィィィィィイイイイイイイイイいrrrrrrrrrrrrるるるぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっっっっっっっっっっどぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああっっっっっふぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁあああああああああっっっっっっはぁぁぁぁぁあああああああっっっっっはぁぁぁぁぁあああああああっっっっっフゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
三人の鳴き声が残響する中、傭兵たちと共に虚しく通路の陰に消えていった。
その後三人がどうなったかは誰も知らない。
退店。
「やっと買えたねぇ。結構時間掛かっちゃったよ。」
「なんだか疲れちゃいましたぁ。けど、まだ回るとこあるんですよね?」
「いんやあああまあああ、あああーるけえどおんよおおお、まっさかあカードのおくだりまででえええ、こおーんなあに文字数かかるとはあああ思ってえなかったあよなああああ。」
「そうですねぇ、いつもならもう終わるところですよ。」
「しゃあああーねえ、後はあああ次回に回すかあああ。じゃあ、そゆことでえ、よろしくりいいいーいいい。」
「え、続くの?この箸休め回?」
すみません、文章量が多くなり過ぎたので二回に分けます。
次回、「和菓子屋の心」と「ヒナの武器調達」を書いていきます。
よろしくお願いいたします。
ふふん、何で有頂天かというと、なんとなんと、今日が初めてのお給料日なんです!前の会社は給料貰う前に辞めちゃったし、これが初任給なんです!あぁ…労働の喜び…素晴らしい…!
「はいヒナさん、口座に振り込んどいたから、二百万。基本給プラスボーナスでもう百万ね。」
「にっ、ひゃぁっ、くぅっ、むぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁあああああああああああああんん???!!!キィィィィュゥゥゥウウウウウアアアアアアアアアアアアアアアアッッッハァァァァァアアアアアアアアアアイイ!!!!!ふっつぅぅぅううううの新卒がぁぁぁ、いっちねんかかる金額ぅぅぅ、一月でぇぇぇぇ稼いじゃぁぁぁぁああああっっっとぅぅぅぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!さいっっっこぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」
二十歳そこそこが一月で二百万、例え身体を売っても到達できない稼ぎだったろう。良かったね。
「いいんだよねサカ?これで?」
「…あーああああ、いいぜえい、どおおおーでもお。」
「何なのそれ。もっと責任感持ってよ。社長なんだから。」
「そぉーうですよぉ!せっかくの初任給なんですからぁ!もっと元気いっぱいに渡してくださいよぉ!あ、ひょっとしてぇ、私みたいな小娘に大金払うのが惜しくなってるんですか?今更?でもざぁんねぇん、もう振り込まれちゃいましたからねぇー。一生返しませぇん、べぇー!」
「いやまぁ、サカの後片付けだったりアジトの掃除だったりの雑用しかやらせてないけど、それでも費用対効果でみたら、ギリマイナスくらいで済んでるんじゃない?」
「あ、マイナスなんですか、そりゃそうですか。でもいいんです!お金は嘘をつきません!もっともっと貰えるように、これからも頑張りますから!よろしくお願いしますね、社長ぉ!」
「おーおおう、勝手にしやがれえい。」
サカは朝からこんな調子。イマイチテンションが低い。
「社長ぉ、どうしたんですか?いつもの元気が無くて逆に怖いですけど。糖分の摂り過ぎで血液までドロドロになったんですか?もう死んじゃうんですか?」
「確かにちょっと変だね。大人し過ぎ。本当に何かあったの?」
「いんーーーやあああ?別になあああんもおねええええいぜえええい。ただまあああ、ちょおおおっとお気になることがあ増えてえちょおおおいと考え込んでえるだけだあああよ。」
「社長でも考える頭の余地があるんですねぇ。」
「無いことは無いでしょ。まぁ大したことないならいいけど。」
「ううーん、でもなあああ、気がちょおびいっとおおもてえええのはあ、ガチだわなあああ。」
がしがし
サカは頭を掻いて、二人に向き直る。
「っまあああああああ、考えてえもしょおおおがあああねえええかああああーあああ。おおおいおいおいおめえらあああ、ちょっとお付き合えええええええい。」
「え…?付き合えって…?」
トクン
ヒナの胸の奥が温かくなる。
「うるさいうるさい何に?どこに?」
「気晴らしいだあああーああよおおおう。買い物だあわああああいなあ。」
「へ?」
「ほ?」
サカ一行、ぶらりショッピングに行く。
東京、立川。
巨大ショッピングモール、罵莉・塔堂。
「社長もこういう庶民的なとこ来るんですねぇ。『俺ちゃあああんにはこおんな庶民愚民が来るようなところにゃあああ似い合わなあいのよおおおう』とか言って馬鹿にしそうなのに。ザギンでシースーしかしなさそうですけどねぇ。」
「バッッッキャアアアアロオオオオオがあああああいやあ。たっけえええものにしかあ目がいかねえええのはあ二流もお二流よおおお。真の一流はなあああああ?こおおおーいうところのお良さおも汲み取おり差し込おみいすうるものなのさああああよ。」
「それに最近のショッピングモールってただ安いもの売ってるだけじゃないしね。アパレルでもジュエリーでもグルメでも何でも、高級ブランドからのテナントも多くなってて、高級志向のスペースも増えてきているよ。子供や家族連れだけをターゲットにする時代は終わったよ。これからは独身で金を貯め込んでる人の消費先にもなるのがこういうショッピングモールの在り方なのさ。」
「そおおおうともお、案外馬鹿にしちゃあああいけねえええんだぜえい、モールの底力ってえええのはよおおお。」
「へぇぇぇ、最近はそうなんですかぁ。あんまり行ったことないから分かんなかったなぁ。それで、ここで何買うんです?私、さっきの給料ほとんど送金しちゃったから、お金無いですよ?」
「勿体無い。全部自分のにしちゃえばいいのに。実家なんて捨ててさ。」
「なぁんでそういうこと言うんですかぁ?血の繋がりってなかなかにしつこいんですよぉ。捨てたくても捨てれない、そんなもんなんですぅ。私は情に厚いんですぅ。」
「もう呪いじゃんそんなの。まぁ自分が納得してるなら良いけどさ。で?結局何買うの?」
「まああああ、てっきとおーにだわなああああ。ただの気晴らし冷やかし嫌がらしだからなあああ。まああああ欲しいもんっちゃあああああなっくはあねえええけんどよおおお。おめえらあも考えとけえええい。」
「え?!タダですか奢りですかぁ?!それはつまりつまるところ、社長が何でも好きなもの買ってくれるってことでぇいいんですかぁ???!!!」
「おおおおおーうよお。漢に二言は無いんだぜえい。まあでもお?手心はあ?加えてもらってもおおおいいかもなあああ?せえーぜえー五十万くらいにしとけよおおお。無駄あに身の丈えに合わねえええもん買ってもおおお、その後おの人生でえええ、審美があああんをお曇らせっらあああだけえいだからなあああ。」
「でも奢り、奢りなんですよねぇぇぇ???!!!いぃぃぃいいいいやっっっっふぉぉぉぉおおおおおおおいいい!!!!宝石時計大換金んん!!!!」
ばんざーい、ばんざーい
「本当に珍しいね。奢りだなんて。どういう風の吹き回し?」
「なあああーに、本当になんでもねえんだあああよ。ただなあ…」
「ただ?」
「できるときにできることを、ってえやつだあああなあ。」
「…?意味分かんない。まぁいいや。僕も買ってもらうからね。」
「好きにいしろおい。」
「社長ぉー!ソートさぁん!行きましょうよぉぉぉー!!!」
ぴょんこぴょんこ
ヒナはさっさと入り口の前まで行き、飛び跳ねている。
「全くがめついんだか無邪気なんだか。」
「ヒイイイイナアアアアア、はやるんじゃあああねえいやあああい。夕暮れえええ前のおおおおショッピンギイモオールは戦場だぜえええい?」
「またまた戦争だなんてそんなそんな…ちょっと混んでるだけでしょ?大げさですねぇ。」
入場。
ドドドドドドドドドドドドドドドド
ィィィィイイイイイイイイイイイイエエエエエエエエエエエエエエエエ
ギィィィィヤァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
キョェェェェェエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアア
チョァァァァァァアアアアアアアアアアアアアッッッスゥゥゥウウウウ
奇声を上げて駆けて行くババアの群れ。その行先とは。
食料品売り場。
「離しなさいよぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!!そのゴーヤーはぁぁぁぁ、あたしいんのカゴに入ってたやつだろうがぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!!!!」
「うっっっせぇぇぇぇぇえええええええええええバッッッバァァァァアアアアアアアアアアア!!!!レジを通すまでが特売だろうがああああああああああああああああ!!!!!そんなに惜しけりゃあ、腕に縫い付けるくらいの覚悟決めんかああああああああああいい!!!!!!」
「おんめえええええもおおおおブアッッッッブアアアアアアアアどぅぅぅううううあああああああるぅぅぅぅううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおがああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!家にはなぁぁぁ、育ち盛りぃのおクソガキがぁぁぁぁああああ、三人いんだよぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!栄養バランス考えてぇ、腹いっぱいにさせにゃああああならんのだぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!!!離しやがれクソバンババアアアアアアアアアアアアアアアアアンン!!!!!」
「はいぃぃぃーーーーーーー!!!!!家は五人いますぅぅぅぅううううううう!!!!!はい家族バトルあたっしの勝ちぃぃぃいいいいいいいいい!!!!!!あたしの方が良妻賢母ぉぉぉおおおおおお!!!!!分かったらぁさっさと譲りやがれクソンソンブァァァァブァアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!」
「なんだとぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!家のはみぃぃぃいいいいいんなああ男なんんだよぉぉぉおおおおおお!!!!しかも全員中学と高校ぉぉぉおおおおおお!!!!食欲やべぇぇぇぇぇえええええんんだよぉぉぉおおおおおおあいつらぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!家の食料ぜぇぇぇぇえええええんぶぅ食い尽くしやがんのぉぉぉおおおおおおおお!!!!!柱までかじってんのぉぉぉおおおおおお!!!!家が壊れちゃうのぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!」
「家もぉぉぉぉおおおおお!!!!男三女二ぃぃぃいいいいいい!!!!あいつら好き嫌い多過ぎなのぉぉぉおおおおおおおお!!!!!やれ人参がダメ、茄子がダメ、こっちはピーマンがダメ、ブロッコリーがダメ、そっちは豆嫌い、肉増やせだの何だの言ってくる、あっちはご飯食べたくない、お菓子食べたからいらないだの言ってくる、向こうは魚が嫌、骨全部抜いて、米が硬い、もっと柔らかくして、んで旦那は米硬めが好きで、毎食の後にコーヒー飲みたがる…っっっっっっっっしぃぃぃいいいいいいいいっっっっっるぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁあああああああああんぬぅぅぅぇぇぇぇええええええよぉぉぉおおおおおおおおおあああああああああああああ!!!!!どぅぅぅぅぁぁぁぁっっっったらぁぁぁぁああああああああ、てぇぇぇぇぇええええええんむぅぅぅぇぇぇぇえええええるぅぅぅぅうううううあああああがあああああああああっっっっ、くぅぅぅうううううあああああああっっっっっっっっとぅぅぅぅぅぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええにぃぃぃいいいいいいいい作ぅぅぅううううううううううれぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええあああああああああああああああああああああああがあああああああああああああ!!!!!!」
「分っっっっっかるぅぅぅううううううわああああああああああああああ!!!!!あいっっっつるぁぁぁぁあああああああっ、飯作ってもらうのがぁぁぁぁああああああ当ぅぅぅぅっっっっ然だとおおおおおおおおお思いやがってぇぇぇぇぇええええええええ!!!!!!そんっっっっのおおおおおくせぇぇぇぇえええええええ!!!!!文句ばぁぁぁぁぁっっっっっっかりぃぃぃいぃいいいいいい言いやがるぅぅぅううううううううああああああああああああああああああ!!!!!あたっしぃぃぃいいいいはあああああああ!!!!!めっっっしつかぁぁぁぁぁあああああいいいいじゃあああああああ、ぬぅぅぅううううううえええええええええええええんんだぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああいおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「うんうん、そうよねぇそうよねぇ!母の辛さなんて誰も分かってくれないわよねぇ!だからこのゴーヤとあとその卵とじゃがいもも貰っていくわね。」
「そうよぉ母は孤独の戦士なんだから!せめて私たちは手を取り合っていかないと!だから一つもやるわけねぇだろコラボケカスクソ。」
ふんがぁぁぁぁああああああ!!!
ふんぎぃぃぃぃいいいいいい!!!
醜いやり取りをしていると、
シュッ
シュシュッ
「…?あ、あら?!私のカゴの中が、すっからかん?!」
「あれ?!私も?!どうして…」
ふっふっふっ
二人の先には、ピンク髪の派手なガチババアが。両腕に下げたカゴにはぎっしり特売品が詰まってる。
「特売で立ち話するお馬鹿さんがいるもんかい。まだまだ青いガキどもめが。あたっしゃあの養分になるがいいのさ。」
ダッ
急いでその場を離れるガチババア。真っ直ぐレジへ。
「「待っっっっっちやがれぇぇぇぇええええええええええクッッッッソオオオオブゥゥゥァァァアアアアアアブゥゥゥゥァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」」
「へーんだ、年の功舐めんじゃないよぉ!あんたらみたいに争ってるとこを、ぜぇーんぶ横取りすんのが生きがいなのさぁ!死ぬまで遊ばせてもらうからねぇ!」
ヒィーッハッハッハッハッハァ
ギャァァァアアアアアアアアアアアアアアア
ワァァァァアアアアアアアアアアアアアアア
こんな感じの争いが随所で繰り広げられていた。
その隅で呆然と立ち尽くすヒナたち。
「六波羅さんだ、こんなとこまで来てるんだね。」
「な、なんですかこの世の地獄を煮詰めて濾した残りカスみたいなこの惨劇は…」
「平日はあメインタアーゲッツが主婦だからあああーよお、日用品とかのお特ばあいがあ、そっこそこそこそこやあってえんだよおなあああ。かけーを支えるう主婦にとっちゃあ戦場にもお地獄にもおなるわあなあああ。」
「にしても酷いねこりゃ。ルールも何もあったもんじゃない。商品まで踏み潰しちゃってるし、モラルの欠片も無いよ。こんなのに育てられる子供も憐れだね。」
「うんんーにゃあああ?子供も子供でえええたっくましいいいぞおおお?俺ちゃあんもこっこには用はねえええしいいい、他に行ってみっかあああ。」
楽器販売店。
「ちょっとちょっと君たち、ピアノはもっと丁寧に扱って…」
バァァァーン♪
ガジャァーン♪
小学生低学年くらいの子供たちがピアノを素手でべたべた触り、鍵盤をグーパンでひっ叩いている。
「うるっっっっすぅぅぅうううううえええええええええええええええええ!!!!!おんれのをおおおお、ひょぉぉぉーーーーーげぇっんのぉぉぉおおおお、じっっっゆぅぅぅうううううううううをおおお、じゃっっっむぅぅぅぁぁぁああああああすんんじゃぁぁぁぁーーーーーーあああああぬぅぅぅぇぇぇぇええええええええええ!!!!!」
「こっこを直で叩いた方がぁ、いいーいいいいい音鳴るぜええええええ!!!!」
子供たち皆んなで弦を直接叩き始めた。
べァァァァアアアアアーン♪
グワワワワワァアアアーン♪
「ちょ、ちょっとお…!」
ギャァァァァアアアアーン♪
ブッ、ブツ…
バツバツバツバツバツ、バッツゥゥゥン
「ぎぃぃぃやぁぁぁああああああああ???!!!弦が、弦が全部切れたあぁぁぁああああああああああああ???!!!」
「やっべ壊れた、逃げるぞ!」
わーきゃー
蜘蛛の子を散らすようにさっさと姿を消した。
書店。
「なんでぇいこれぇ、水着ばっかりで、全然裸ねぇじゃん、こんなんじゃコーフン、しねぇよぉ!俺のビッグマグナムも元気が出ねぇぜぇ!」
「こいつ顔ぶっさいくぅー!おっぱいでけぇだけじゃん、そんなら乳首くらい見せろよなぁ!」
「何が秘密の袋閉じだよぉ、ただのセミヌードじゃんかぁ!こんなんじゃ世間は許してくれませんよぉ!」
ビリビリ、ビリィ
子供たちが本棚に寝転びながらグラビア雑誌を無造作に読んでいる。
「こらぁ!クソガキどもぉ!土足で本を踏むんじゃねぇっつったろがぁ!!!あと買ってもねぇのに袋閉じ破るんじゃねぇぞぉ!!!」
「ふんだ、これなら親父のAV観てた方がマシだったよぉ!」
「バイバイジジイ、また荒らしに来るからねぇ!」
「あんの野郎どもぉ、本当に困ったもんだ…」
キャッキャッ
楽しそうに逃げていった。
ゲームセンター。
メダルゲームコーナー。
小学校高学年くらいの子。
「おいおいこの台の設定どうなってんだよぉ?!もう当たるはずだろうがぁ普通はよぉ?!んだよこれ、詐欺じゃねぇか詐欺ぃ!犯罪だろ!知らねぇのか犯罪って?!ガキでも知ってるぞ普通はよぉ?!警察呼んでやるからなぁ、覚えとけぇ!」
ガァァァン
ゲーム機を蹴っ飛ばして去って行った。
音楽ゲームコーナー。
高校生くらいの子。
「きぃぃぃいいいいいい!なぜ拙僧のあのパーフェクトなプレイで、パーフェクトになってないのでござるかぁぁぁああああ?!この手袋が悪いわけではござらん、よなぁぁぁああああ?!ハッ?!だったら、ここのパネル感度が悪いのでは?!ほら、やっぱり、ここだけ熱がこもってない!なんだ、壊れてるのでござるなぁ!どれ、拙僧がぁ、叩いて直してあげるでごわすよぉ、フンッ!」
バンッ
「フンフンフンフンッ!」
バンバンバンバンッ
「フンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフン」
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッ
バンバンバンッ…
ボォン
プシュゥゥゥー
「んんん?なんだ、本当に壊れてしまったでござるか。何も映らんくなりもうした。まぁいい。拙僧の貴重な百円を吸った罰でござる。これくらいは至極当然。さて、他の台に移るとするでござる。次は壊れてないといいのでござるが…」
スタスタスタ
UFOキャッチャーコーナー。
中学生くらいの子たち。
「これ取り出し口から中に入れるじゃあん、全部取ろうぜぇ!」
「取ろう取ろう!棚のやつも、ディスプレイも全部取ろう!」
「ん、あれこれ、引っ掛かって取れない、出せないよぉ、うぜぇなぁ!」
「どけどけどけい、ぶち割ったらぁ!せーのぉっ、」
ガッシャァァァン
椅子をぶん投げてUFOキャッチャーのガラスを割った。
「ちょw流石に犯罪じゃんw笑えるw」
「いいだろこんくらいw取れない設定してる店の方が悪いんだしw」
「オモロw写真撮ってSNSに上げよwバズり間違い無しw」
「いいねwUFOキャッチャーの台全部割って景品取るチャレンジw」
ウェェェーイw
渡り通路になぜかあるマッサージチェア。
高校生のカップル。
「あ♡ちょっと♡こんなとこで盛らないでよ♡いやんもう♡どこをマッサージしてるのぉ♡皆んなに見られちゃってるぅ♡」
「はぁはぁ…いいじゃないかぁ…ゆなたんの可愛いところ…皆んなに見てもらお…?」
「キャッ♡ちょっと、服脱がせないで服脱がせないでって…あらやだぁ♡もーうガチガチになってるぅ♡キャー♡」
「はぁはぁ…僕たんもう我慢できないよぉ…ゆなたんの下に原点回帰させて?いいよね?しちゃうよ?回帰しちゃうよ?」
「あん♡ちょっと♡皆んな見てるってばぁ♡あっ、もう、擦りつけないでよぉ♡もう、やるなら、早くしてぇ…?」
「うおおおおおおおおおお!ゆなたぁぁぁぁあああああああああん!」
ずっぷし
「あああああああああああん♡♡♡」
子供たちの狂喜乱舞の様に動揺を隠せないヒナ。
「な、なんですかこれは…?猿の惑星にでも来ちゃったんですか…?本当に人間…?」
「…流石に絶句するよ。今時の子供ってこんな感じなの?犯罪者じゃん、すべからく。」
「まああーあああ、親に連れられてきた子供の暇潰しちゃああああ、店を冷やかすうしかあねえええからなああああ。それと放課あ後おにい時間が余って余って余ってえしっかたがたがたねえバカアップルウどもお。きちゃない交尾なんて見たくもねえっつうのお。」
タタタタタタ
ッパァン
「ひぎぃ?!」
誰かがヒナの尻をひっぱたいた。
ガキどもが傍を走り去っていく。
「どうだどうだどうだった?生の女のケツ?気持ちいい?その指舐めていい?」
「ううん、大したことなかった!柔らかくもないし、カチカチだった!カチカチ山だ!」
「カチカチ山なの?」
「カチカチ山!」
「「やーい、カチカチ山ぁ!」」
「こらぁぁぁああああああ!!!私はまだ成長中なのぉぉぉおおおおお!!!今に見てなさぁい、出るとこ出るんだからぁぁぁああああああ!!!!」
キャハハハ
ガキどもは去って行った。
「うぅ…居心地最悪ですぅ…買うもの買って出て行きましょうよぉ…」
「そだね。何買うの?」
「まずはあああああ、玩具屋だよおおおおい。予約してたあああカードパックを取りに行かあああなああああ。」
「え、サカカードゲームやるんだ、意外。結構やるの?」
ソートが食いついてきた。
「いんやあ?ただよお、金の無いガキどももしくは世の中のやちゅらにい、自慢したろおかあああと思ってよお、買い集めてるだけだぜえええい。ルールもへったくれも知らねえええゲームだあああい。」
「なんだ…そうか、そりゃそうか。」
ソート、がっかり。
「ほら幾三お。玩具屋に出向だあい。」
玩具屋。
「でも玩具屋なんて荒れに荒れてるんじゃないの?まともに買い物できる気がしないけど。」
「いやあそれがそうでもねえんだよなあ。ほれみれえい。」
サカが指差す先には玩具屋、その入り口と店内には、
ズォォォォン
ミリタリースーツを着込んで銃を携帯している屈強な男たちが巡回していた。
そのおかげか、店内とその周辺は落ち着いている。
「ええええええ?!なんですかぁ、この厳重な警備ぃ?!」
「昨今のカードの値上がりとかあ、ゲームハードのお品薄とかあ、転売ヤー撲滅なんかをお鑑みてえ、とおーうとおーう全国の玩具屋があ、傭兵を雇うようにいなったんだあーああよお。あれも実銃じゃあねえ、シリコンの弾があ出るだけだがなあ、暴徒の鎮圧にゃあー十分らしいいいぜい。」
「そうなんだ。でも確かに問題だからね。買いに来る皆んなも殺気立っちゃうし。このくらいやらないと駄目なのかもね。」
「そうは言っても限度がある気はしますけどぉ…」
「まああーあああいいやあい。さっさと受け取るかあああ。」
入店。
カウンターで、
「おおおーいおいおいおい。ちょっとおそこのお兄さあん。カード予約してたあああサカツキだけんどもおおお。」
「あ、はい、ご予約のお客様ですね。少々お待ちください…あ、はいはいこれですね。今持ってきます。」
パタパタパタ
店員の戻り待ち。
「社長が『サカツキ』って名前なのちょいちょい忘れそうになりますよね。」
「僕も。サカとしか呼ばないし。」
「ところでその、社長の下の名前ってソートさん、知ってます?『サカツキ』って苗字ですよね?」
「ううん、僕も知らないんだよね。それとなく聞いたことはあるんだけど、なんかはぐらかされちゃって…」
「なあああんでえええ、おめえらあなんぞにい、教えてやらにゃあーいかんのでえい。」
「いや別に知りたくもないけどさ。一応気になるじゃん。」
「でもそれで言えばソートさんの本名も気になりますけど…え、てか私だけじゃないですか?フルネーム公表してるの?いやだぁ、恥ずかしい!二人も公表してくださいよぉ!」
「嫌だね。」
「知りたきゃ勝手に調べればいいだろがあい。」
「もぉぉぉ!分かりましたよ、もういいです!」
バタバタバタ
店員が慌ただしく戻ってきた。
「お待たせしました…いや、あの、ご予約いただいた商品なんですが…」
「あああん?無かったのか?」
店員は手に何も持ってない。
「いやあるのはあるんですが…それが…」
「Don't move!」
突如過ぎる英語が店内に響いた。
「おん?」
「え?」
「面倒事の予感…はぁ。」
声のする方向に行ってみると、傭兵たちが小学校中学年くらいの子を三人、ふんじばって拘束していた。
「くそぉ、捕まるなんて…!」
「やっぱり無理だったんだよ、こんな厳戒体制を突破するなんてぇ!」
「私たちの人生終わりだぁぁぁ!うぁぁぁーーーーん!」
綺麗な目をした男の子、ちょっと太めで糸目の男の子、何の変哲もない女の子の計三人。
「諦めるなよ!俺たち三人、転売で食っていくって誓ったじゃんか!これをその一歩にするって、約束したろ?!」
綺麗な男の子の小脇にはキラキラしたカードパックがあった。
「あ!あれがもしかして、社長のですかぁ?!」
「まちげえねえなあああ。グレモンカードのフェラスタルBIG Analystsパックだあああよお。」
「きもい名前。」
「Don't move! Don't move! F〇ck you bitch! I can kill you! Fu〇k!」
「うぁぁぁーーーーん!動いてないのに動くなとか言ってくるしぃぃぃーーーー!なんか殺すとかおっかないこと言うしぃぃぃいいいいいい!終わりなんだぁぁぁぁあああああ!」
「諦めんなぁぁぁああああああああ!!!くっそ、こんなのぉ…!」
綺麗な男の子が身を捩って拘束から逃れようとするが、
「Don't move! Don't move! Don't move!」
ガッ
ガッツン、ガッツゥン、ガァッツゥン
「げっ、げはっ、ごはぁっ!」
傭兵は綺麗な男の子の身体を掴み、持ち上げ、何度も地面に叩きつけた。
「うわぁぁぁーーーー!怖過ぎるよぉぉぉーーー!てか英語それしか知らないんじゃないのぉぉぉーーー?!かっこいいから何となく英語喋れる風にしてるだけじゃないのぉぉぉーーーー???!!!」
ピタッ
傭兵たち全員の動きが止まる。
ツゥー
全員の額から冷や汗が流れる。
「図星だね。」
「図星ですねぇ。」
「ばっかでえい。」
「「「「「Don't move! Get away! Mother-f〇ucker! Power-bunger! Oh my pussy jungle! Netflix and chill!」」」」」
「うわぁぁぁーーーー!切れたぁぁぁーーーー!怖いよぉーーーー!」
「ねぇ店員さん、この子たちどうなるんです?」
「多分、この人たちに折檻受けた後警察にポイ、ですかね。まぁただでは済まないでしょうね。一生消えない傷が身体に残るでしょう。」
「嫌ぁぁぁーーーー!ママァァァーーーー!」
「くっそぉぉぉぉおおおおおおおおあああああああ!!!!!」
ザッザッザッ
サカが子供たちに歩み寄る。
「おーうおーうおおおーう。まあったくう、何してんでえい。」
子供たちがサカの方を向く。
すると、次第に目の輝きを取り戻して、
「…?!ボス?!ボスじゃないですかぁ?!」
「ボスゥーーー!ごめんなさぁぁぁい!ボスのものとは知らなかったんですぅぅぅ!」
「許してぇぇぇー!あぁぁぁーん!」
「え、サカ、何、知り合いなの?」
「知り合いってほどでもねぇけどさぁ、こないだ、一か月くらい前かあ、この玩具屋に来たときなあああ?」
ポワンポワンポワワワ~ン
回想タイム。
**********
「なんだかなあ、やけえに騒がしいとお思ったらあ、カードの大会だかなんだかあやってたのよおーう。」
「あぁ、たまに小売店で小さな大会みたいなのやるよね。優勝したらそこそこのプロモカードとかプレイマットとか貰えるやつ。」
「そおそ。んでえ、興味本位いでえ覗いたらなあ、案のじょお、ガキばっかしでえ賑わってたんだがなあああ?そんなかにい一人い、おおっきいお友達があいたんじょお。」
「?おっきいお友達?」
「こどおじだよ。とっくに成人してるのに童心をいつまでも捨てられないでしがみついてる人のこと。」
「まあああそいつがよお、めっぽおおおつえええんだわあ。ガキどもが泣きながら喚きながらあ負けてくんだわあああ。」
「資金力も違うし、経験量も違うだろうから、そりゃそうなるよね。」
「んで結局そいつがあ優勝してえ、そしたらあ、なんーかあ店員と揉め出したあああーわけよおーう。」
『何で何で?僕優勝ですよね?その事実に嘘偽りは無いのですが?早く景品を渡してもらえます?忙しいんですよ僕も。もしかして遅延行為ですか?そうなんですか?やめてくれませんかそういうの?大人として恥ずかしくないんですか?』
『いや、今回は渡しますけど、あのですね、もうこれ以降参加はご遠慮いただきたいんです。』
『え、何でですか?僕何かルール違反しましたか?してないですよね?』
『いやそうではなく、この大会はですね、子供たち、小さな子たちに向けたものなんです。』
『え、年齢制限無いじゃないですか。あるならそう書くのが普通ですよね?え、なんか僕が悪いふうにするのやめてもらえます?そっちの落ち度なんで、はい。反省してください。』
『まぁ、あえては書いてないんですけど、その、雰囲気というか、子供たちしかいないところを、こう察してほしいというか…』
はぁー
おっきなお友達がおっきな溜息をつく。
『もういいですいいです分かりました。これ以上は話し合いの無駄です。これからは来ませんから。それでいいですよね?勘弁してほしいなぁ、運営の責任を参加者に押し付けるの。これだからどんなカードの大会も盛り上がらなくなって廃れていくんだよ。第一…』
『うっせえええわあああーいい。』
ドッグシャアアアアン
前蹴り一発。
『ぷげぇらぁっ?!』
おっきなお友達はおっきな物音を立てて倒れ込んだ。
『は?は、は、は、は?!なんだ、なんなんです?お前?』
『たあだの通りすがりだよおおおおおい。なんかあうじうじうーじ宇治うじいと文句垂れ流してえいるうやからあがいたかあらあよお、イラあついてえ、ちょいとおコカしてえやったあああだけだよおおおーうっとお。』
『は、は?!コカしただけ?!こんなにぶっ飛ばしておいて?!ふ、ふざけるな、ふざけるなぁ!ぼ、暴力だ、犯罪だ、け、け、警察に言ってやるから、なぁ?!そ、それに、おい、傭兵ども!こいつを抑えろよ!なんでぼーっと突っ立ってんだよ!仕事しろよ!怠慢がぁ!』
『なんでえ突っ立ってるかあ教えたろかあああい?そりゃなあ、内心スカアッとしてんのさーああ。うだうだうだ宇多田世迷言をぬかしてえるうクッソオ野郎にいなあーああ。』
『は?そ、そんな…』
おっきなお友達が傭兵たちに目をやるが、誰も目を合わせてくれない。
『分かったかあああ?確かにおんめえはなんのルウールウもお破ってねえええ、善人なんかもしれねえええ。でも、なあ?時としてえ、世論はあああ、法律を超越するってえこったあああ。』
『そんな、馬鹿な…』
『ほら、これ優勝の景品。あげますから、もう来ないでくださいね。』
『…ぅぅ、うううわぁぁぁぁあああ~~~~~~ん!!!!マッマァァァァアアアアアアア~~~~~~!!!!!皆んなが虐めてくるぅぅぅうううううううう~~~~~~!!!!!えぇぇぇぇええええ~~~~~んん!!!!!』
おっきなお友達は景品を持って逃げ去っていった。
『ねぇねぇ、お兄さん、凄いね!かっこいい!』
いつの間にか子供たちがサカを取り囲んでいた。
『はあああん?』
『あの臭いおじさんを追っ払っちゃうなんて!正直かなり鬱陶しかったんだよ!』
『うんうん!頼んでもないのにコーチングとか言ってデッキを覗いてきて、あれはダメこれはダメって、めっちゃウザかった!』
『それにたまに女子がいるとはぁはぁ言って近づいてって、肩とか触ってくんだぜ、羨まし、じゃない、気持ち悪い!』
『そのくせルールはいっぱしに守ろうとするから、なかなか叩き出す理由が無かったんだ!そこをもう、暴力で解決するなんて!誰にもできることじゃないよ!』
『おおおい、褒めてえんのかどうかあ分からあん言い回しいすんじゃあねえよお。』
『これでここの治安は守られたよ!ありがとう!お兄さんは、ここのボスだ!』
『そうだそうだ!ボスだボス!』
『『『『『ボース!ボース!ボース!ボース!』』』』』
『勝手えに盛り上がりやがってえええ、たあああっくよおおお。』
「なるほど、経緯はともかく、子供たちを救った形になったんですね。それでボスって呼ばれてると。」
「実質そのおっきなお友達と変わらない気もするけど。」
「はあああーーーーーーーあああああん???ぜんっっっぜえええん違うねえええ!!!おみゃーーーにはこんのおおお俺ちゅわああああんがあああ、あんっっっなああああああおゴミとおおおおおおお、同一不可避に見えるんかああああああああーあああああんあんああん???」
「ごめんて。とにかく、そういうことがあったのね。ほら、回想終わろう。」
**********
場面は戻り、綺麗な男の子が続ける。
「…ボスのだって知らなかった。知ってたら、盗もうなんてしなかった…」
ザッ
サカが屈んで目線を合わせてやる。
「あああん?ちっげええええだろうがああああいやいやいやいのおおお康介えええ。俺ちゃあんのじゃあああ無かったらあああ、何でもおかんでもお、盗んでいいってかあああ?ちっげえええよなああ?そんなもおん、絶てえええに分かってえるはずだよなあああ?」
「…」
綺麗な男の子は目を伏せる。
「おめえええらはあどおーだあ?」
他二人にも問いかける。
「悪い、悪いですぅぅぅうううう!」
「ごめんなさぁぁぁい!」
「ふうんふうん、盗みはおめえらあにとっっっちゃああーああ悪いいことじゃあねえええんのかもしんねえええ。でもなあ?世論でもお、法律でもお、悪いことってえ決まっちゃってんだわさあああ。んでええーえええなあ?それでなあ?えええ捕まっちゃったんならあああ?罰を受けるうのもお致しっかたあねえええよおなあ?」
「…」
「うぅ…」
「ぐすん…」
「でもおおお?人間誰しもおおお?間違えるこったあ、あっああああああーーらあああなあああ?そんなあ一時のお間違いおおお、全くう許してえやらにゃあああい世の中じゃあああいけにゃあああいと思うんじゃああああああい?な?」
「え…?」
三人を優しく見下ろす。
「それにい、おんめえらはまんだまんだあわっかあああああいい。いっくら筋子とびっこいくらでえええもおやりぬあおしいがきっくわあああなあああ。」
「許して、もらえるの…?」
「本当に…?」
「嘘…?」
「どおっだああああ?もいっちっどお、ちゃあああんと生きていくってえ、ゆあっくそおっくうできっかあああ?」
「はいはいはぁい!約束しますぅ!」
「今度からはちゃんとしますぅ、良い子になりますぅ!」
「…次は、ちゃんとやる。」
綺麗な男の子が顔を上げる。その瞳は静かに燃えていた。
「次こそは、ちゃんと情報仕入れて、深夜から場所取って並んで、それで、正々堂々、転売の仕入れをする!」
「ホントかあああ?」
「うん、ボスに誓う!」
きひぃっ
「いいいーいいい目ン玉だあああ。取って食っちゃいたくなるくれえええになあああ。ま、せいぜい頑張りなあっとお。」
「良かったぁ、助かったぁ!」
「ありがとうボスゥ!」
「次は、次こそは…!」
「そんじゃあまあ、こいつは返してもらってえ。」
ひょい
綺麗な男の子がしれっと腹の下に隠していたカードパックを取り戻す。
「え?あ、当然か、うん…」
「んじゃああんたたちい、あっとはよろしくねえええん。」
「「「「「Yes, we can!」」」」」
ガッバッ
傭兵たちが子供たちを抱えて移動を始める。
「は?え?は?え?は?え?蠅?」
「ええええ、え?」
「何で何で何で?え、許されたんじゃ、ないの?え、ボ、ボスゥ?」
「ボスって、ねぇボスってばぁ?!話が、違うよぉぉぉおおおおお?!」
「はああああああーああああんあんあんあああんあんあああん???おんめえらこそお、俺ちゃあんのはなあし聞いてなかあったんかああああああ?上にスクロオオオールしてえ、確認してみやがれえええ。罰は受けろってえええ言ってるよなああ?俺ちゃあんが言ったのはあ、罰を受っけた後おの話だぜええええ?」
「え、でもそんな、違うじゃん?!許してあげようみたいな綺麗な流れだったじゃん?!そういう感じだったじゃあああああああんん????!!!!」
「ピーピーピーピービービーうんるせえええのお。なあああにがあ転売屋亜だあああああい。この世でえいっちべえん塵芥のおおお生業じゃあねえのおおお。そんなやあーつさっさあとお地獄にい落ちればいいのおよおおおーん。あんたらあああ、しいっかりい折檻してくれよおおお。二っ度っとお二足歩っこおーできんねえええくれえええになああああ。」
「「「「Yes, sir! Let's go execution!」」」」」
「あ、お代は前に貰ってますね。じゃあ大丈夫です。ありがとうございました。」
「おおおおーうおう。じゃあああなあああ。」
「嫌だぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!てかこいつら日本語分かってんじゃねぇぇぇええええええかあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「離してよぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!まだ二足歩行していたぁぁぁぁああああああああああああああああああいいいい!!!!!!!四足歩行は嫌ぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!!!人が人でいられなくなる臨界点を越えてるぅぅぅぅぅうううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!」
「メェェェェァァァアアアアンンメェェェェァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアウウアウアウアウアウアウアウアウアウアウアウアウアウアウアウアウウウウウアアウアウアウアウアウアウアウアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
「ボ、ボスッ、ボスゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!これっだかっらぁ、おぉぉぉぉっっっっっとぅぅぅぅぅぁぁぁぁなぁぁぁぁぁぁああああああああうぅぅぅぅわぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああ、はああああああああああああああああああああああああっっっ、きィィィィィィイイイイイイイイイいrrrrrrrrrrrrるるるぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっっっっっっっっっっどぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああっっっっっふぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁあああああああああっっっっっっはぁぁぁぁぁあああああああっっっっっはぁぁぁぁぁあああああああっっっっっフゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
三人の鳴き声が残響する中、傭兵たちと共に虚しく通路の陰に消えていった。
その後三人がどうなったかは誰も知らない。
退店。
「やっと買えたねぇ。結構時間掛かっちゃったよ。」
「なんだか疲れちゃいましたぁ。けど、まだ回るとこあるんですよね?」
「いんやあああまあああ、あああーるけえどおんよおおお、まっさかあカードのおくだりまででえええ、こおーんなあに文字数かかるとはあああ思ってえなかったあよなああああ。」
「そうですねぇ、いつもならもう終わるところですよ。」
「しゃあああーねえ、後はあああ次回に回すかあああ。じゃあ、そゆことでえ、よろしくりいいいーいいい。」
「え、続くの?この箸休め回?」
すみません、文章量が多くなり過ぎたので二回に分けます。
次回、「和菓子屋の心」と「ヒナの武器調達」を書いていきます。
よろしくお願いいたします。
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