ロイヤルブラッド

フジーニー

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第三章

第49話 恐るべし推察力

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    「創政慈とは簡単に言うと、悪党などから、民衆を守る事を使命とする心強き味方ざます。お客さん達も、これから旅を続けるなら、創政慈に楯突く事はしない方が良いざますよ」



    「そんなお人好しの集団がいたのか。ウチ、何にも知らなくて恥ずかしいな」


    キリナは、水郷街の外の世界の事を知らなさすぎて、赤面していた。


    「そんな事ないざますよ。何も恥じる事はありません。あっ、アッシはブンシュンって名前ざます、ブンさんって呼んでほしいざます」


    「ありがと、ブンさん!    ブンさんはどうして創政慈を辞めちゃったの?」



    キリナは、曲者だと思っていたブンシュンの優しさに心を開いた。



    「実はね、創政慈は自分達に不利になる情報は揉み消し、有利になるように話を進めたりするブラックなところがあったざます。アッシは、それに嫌気がさして、本当の事をこうやって、お客さん達に話したくて、運転手になったざます」



    「えっ!そうなのか?創政慈ってそんなせこい事してんのかよ!なんだか俺、あいつらを見る目変わったわー」



    アグネロは残念そうな表情で、両腕を頭の後ろに組んだ。



    「お客さん達は、これから長旅のつもりで?それならアッシが、色々な情報を教えてあげるざます」



    「おう!長旅も長旅よ!    俺もこれから先の事は何にも分かんねーから助かるぜ」


     残念な表情が一転、今後に少しだけ不安を抱いていたアグネロは、希望を見つけたように笑った。


    「先程、アルゼン様の所へ行くと言ってましたよね?ロイヤルが2人も揃って、ロイヤルに会いに行くということは、アルゼン様以外のロイヤルも探すつもりではないざますか?」


    「さすが、元創政慈の情報部隊……推測がすげーな。確かに今のところは、ロイヤルを探すつもりだ。でも1つだけ間違えてるぞ」


    「ありがとうございます。その間違いって、もしかして、そちらのあまり具合がよろしくなさそうなお嬢さんも、ロイヤルって事ざますか」



    「す、すげー……その通りだ」



    元創政慈の情報部隊はとてつもない情報量と、推測力だ。ブンシュンの頭のキレ具合にアグネロも度肝を抜かれた。


    「やはりそうでしたか。ロイヤルがロイヤルを探しに行くのに、無関係のお嬢さんを連れてるのはおかしいと思ったざます」


    「ねぇヒマレ、大丈夫?」


    「うん」


    ヒマレが少しずつ、ぐったりしているのを感じたキリナは、心配そうに声をかけた。


    「ヒマレ、なんかあったらすぐに言うんだぞ!    無理は禁物だかんな!」


    アグネロも後ろを振り返り、声をかけた。


    「本当にダメな時は、言ってくださいね。病院を探すざます」


    アグネロやブンシュンの優しい声にも無言で、眠りにつくヒマレだ。そして、またブンシュンは色々な情報を話し出す。



    「まず、この大陸にいるロイヤルブラッドは、先程言ったアイシング王国のアルゼン様だけです。アッシも、セリーア大陸には行った事ないのですが、確かセリーアには、バンデスから渡ってすぐに王国があった気がします」



    「ちょっと待ってブンさん、ウチ、今居る大陸が何処で、他にどんな大陸があるとか全く分からない」


    「これは失礼したざます。この世界は、2つの大陸で出来てます。アッシらの今居る大陸はバンデス大陸と言って、基本的には平和な大陸ざます」



    無知なキリナにも、丁寧に説明するブンシュンは、喋り方を除いては素晴らしい人である。


    「てことは、もう1つの大陸は平和じゃないの?    ブンさん」



    「もう1つの大陸はセリーア大陸。さっきも言った通り、アッシも行ったことないので詳しくないですが、いわゆるモンスターが出たり、オバケの出る森があったりするそうざます」


    「オバケ……ウチ怖いわ。ネロちゃんは」


    「無理」


キリナの問いかけに、食い気味で答えたアグネロは、キリナよりオバケが苦手そうだ。


    「バンデスよりセリーアの方が、大きな街が多く、大陸の面積も倍以上あるみたいざます。そして、何より気をつけなければいけないのは…………DEATHデスの存在ざます」


    「デス?    なんだそれ。ざますなのか、ですなのかはっきりしてくれ」


     一息間を置いて切り出したDEATHという言葉に、久しぶりにアホネロの珍回答炸裂。



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