ロイヤルブラッド

フジーニー

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第三章

第48話 癖強運転手

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    アグネロ達がトンネルを抜けると、タクシーは既に待機しており、その前には運転手らしき男が立っていた。


    「おう、タクシー。待たせて悪かったな!乗るのは俺達だぜ」


    「いえいえ!」


    ニンマリと笑ってみせた運転手は前歯がかなり出ていて、ネズミのような顔をしている。


    ((ネズミだ。この人絶対に語尾に、でげすってつけるタイプだ))


    アグネロとキリナは同じ事を考えていた。


    そして、ネズミ運転手は運転席へと乗りのみ、助手席と後ろのドアを開けた。前にアグネロ、後ろにヒマレとキリナが乗った。


    「お客さん、今日はどこへ行くざますか?」


    「「ざますかいっ!」」


    アグネロとキリナは、予想外の口調にダブルツッコミを入れた。


    「ん、どうかしたざますか?」


    「い、いや、何でもねー。アイシング王国に行きてーんだけど、確かかなり遠いよな」


    動揺を隠したアグネロは、行き先を指定した。


    「アイシング王国!? とても遠いざますね、そこまで行けるか分かりませんが、とりあえず進みましょう」


    そしてタクシーは、ひとまず前へ進んでいった。


    「お客さん、失礼ですがアイシング王国には何か用でもあるのざますか」


    運転手は、ハンドルを握りながら話し始めた。するとアグネロは振り向き、キリナにお前が答えろと視線を送った。


    「なんでよ、ネロちゃん!ウチは目的なんて知らないよ!   自分で答えて」


    確かにそうである。アグネロが自らで行き先を決めたのに、キリナが知るわけもない。2人とも、癖強運転手と話したくないようだ。


    「ばっ、おまっ!    声に出すなよ!」


    「ん?どうかしたざますか」


    「い、いや、なんでもない……で、なんだっけ」


    さすがに動揺したアグネロは、苦笑いで尋ねた。


    「アイシング王国に行く理由ざますよ。アッシはお客さんと話すのが好きなんでざます」


    「「アッシ!?」」


    アグネロとキリナは、またもや同時にツッコミを入れた。語尾にざます、自分の事をアッシと呼ぶ運転手の癖の強さに苦戦しているようだ。



    「お客さん達、ちょっと変わってるざますね。なんだか面白いざます」


     ((あんただよ!))


    これ以上は面倒くさいと思った2人は、もうツッコミを入れないと決めたのだ。


    ヒマレに変人と思われている2人が、変人と思うレベルの人物なので、かなり侮れない相手である。そんなコントが繰り広げられている中、ヒマレは疲れが溜まっているのか、やはり調子が悪いようで、目を瞑っていた。


    「アイシング王国の王様に用があるんだ、昔よく遊んでもらってさ。今でも元気かな……」


    「なるほど。アルゼン様に会いに行くざますね!やはり、ロイヤル同士は繋がりがあるんですね、バロンドーム様」


     「えっ!なんで俺の名前知ってんだ!?」


    運転手は、アグネロがロイヤルブラッドだということを見抜いていた。


     「えへへ……ちなみに後ろの青い髪の彼女は、ナイテッド家の方ざますよね?街から出れて良かったですね」


     「おえっ!ウチのことも知ってるの!?しかもそんな事情まで」



    アグネロとキリナは、さっきまで変人扱いしていた男が、自分達の素性を知っていた事に驚きを隠せずにいた。


    「運転手さん!なんでそんなに色々知ってんだ」


    「実はアッシ、元々創政慈の情報部隊に所属してたざます。もう辞めてから何年か経つので、最近の情報はあまり知りませんが、創政慈の情報は確かざますよー」


    「運転手さん、創政慈の人だったのか!そりゃ驚きだわ!    んで、なんで創政慈を辞めちゃったんだ? タクシーの運転手より給料いいだろ」



    「ちょっと待ってネロちゃん、話に追いつけない。そもそも創政慈って何」



    運転手が元創政慈員の人間だった事に驚くアグネロに対して、創政慈の存在など全く知らないキリナであった。
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