ロイヤルブラッド

フジーニー

文字の大きさ
上 下
49 / 51
第三章

第48話 癖強運転手

しおりを挟む
    アグネロ達がトンネルを抜けると、タクシーは既に待機しており、その前には運転手らしき男が立っていた。


    「おう、タクシー。待たせて悪かったな!乗るのは俺達だぜ」


    「いえいえ!」


    ニンマリと笑ってみせた運転手は前歯がかなり出ていて、ネズミのような顔をしている。


    ((ネズミだ。この人絶対に語尾に、でげすってつけるタイプだ))


    アグネロとキリナは同じ事を考えていた。


    そして、ネズミ運転手は運転席へと乗りのみ、助手席と後ろのドアを開けた。前にアグネロ、後ろにヒマレとキリナが乗った。


    「お客さん、今日はどこへ行くざますか?」


    「「ざますかいっ!」」


    アグネロとキリナは、予想外の口調にダブルツッコミを入れた。


    「ん、どうかしたざますか?」


    「い、いや、何でもねー。アイシング王国に行きてーんだけど、確かかなり遠いよな」


    動揺を隠したアグネロは、行き先を指定した。


    「アイシング王国!? とても遠いざますね、そこまで行けるか分かりませんが、とりあえず進みましょう」


    そしてタクシーは、ひとまず前へ進んでいった。


    「お客さん、失礼ですがアイシング王国には何か用でもあるのざますか」


    運転手は、ハンドルを握りながら話し始めた。するとアグネロは振り向き、キリナにお前が答えろと視線を送った。


    「なんでよ、ネロちゃん!ウチは目的なんて知らないよ!   自分で答えて」


    確かにそうである。アグネロが自らで行き先を決めたのに、キリナが知るわけもない。2人とも、癖強運転手と話したくないようだ。


    「ばっ、おまっ!    声に出すなよ!」


    「ん?どうかしたざますか」


    「い、いや、なんでもない……で、なんだっけ」


    さすがに動揺したアグネロは、苦笑いで尋ねた。


    「アイシング王国に行く理由ざますよ。アッシはお客さんと話すのが好きなんでざます」


    「「アッシ!?」」


    アグネロとキリナは、またもや同時にツッコミを入れた。語尾にざます、自分の事をアッシと呼ぶ運転手の癖の強さに苦戦しているようだ。



    「お客さん達、ちょっと変わってるざますね。なんだか面白いざます」


     ((あんただよ!))


    これ以上は面倒くさいと思った2人は、もうツッコミを入れないと決めたのだ。


    ヒマレに変人と思われている2人が、変人と思うレベルの人物なので、かなり侮れない相手である。そんなコントが繰り広げられている中、ヒマレは疲れが溜まっているのか、やはり調子が悪いようで、目を瞑っていた。


    「アイシング王国の王様に用があるんだ、昔よく遊んでもらってさ。今でも元気かな……」


    「なるほど。アルゼン様に会いに行くざますね!やはり、ロイヤル同士は繋がりがあるんですね、バロンドーム様」


     「えっ!なんで俺の名前知ってんだ!?」


    運転手は、アグネロがロイヤルブラッドだということを見抜いていた。


     「えへへ……ちなみに後ろの青い髪の彼女は、ナイテッド家の方ざますよね?街から出れて良かったですね」


     「おえっ!ウチのことも知ってるの!?しかもそんな事情まで」



    アグネロとキリナは、さっきまで変人扱いしていた男が、自分達の素性を知っていた事に驚きを隠せずにいた。


    「運転手さん!なんでそんなに色々知ってんだ」


    「実はアッシ、元々創政慈の情報部隊に所属してたざます。もう辞めてから何年か経つので、最近の情報はあまり知りませんが、創政慈の情報は確かざますよー」


    「運転手さん、創政慈の人だったのか!そりゃ驚きだわ!    んで、なんで創政慈を辞めちゃったんだ? タクシーの運転手より給料いいだろ」



    「ちょっと待ってネロちゃん、話に追いつけない。そもそも創政慈って何」



    運転手が元創政慈員の人間だった事に驚くアグネロに対して、創政慈の存在など全く知らないキリナであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪夢はイブに溺れる

熾音
ファンタジー
✿クーデレ中佐×クール女子のやや天然の二人が周りにヤキモキされながら紡ぐ異世界ファンタジー✿ 仕事帰りの終電でうたた寝をしたら、理力と呼ばれる魔法に満ちた謎の世界に異世界転移していた社会人1年生の水原唯舞。 状況が分からないそんな彼女を保護したのは帝国軍に所属するという”アルプトラオム”という特殊師団の軍人達でした。 お茶目で飄々とした大佐、冷酷無慈悲なクールな中佐、明るく苦労性な管理官など、一癖も二癖も三癖もあるメンバーに囲まれ、見知らぬ世界で生活することになった唯舞の運命は……?

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

無能と蔑まれた七男、前世は史上最強の魔法使いだった!?

青空一夏
ファンタジー
ケアニー辺境伯爵家の七男カイルは、生まれつき魔法を使えず、家族から蔑まれて育った。しかし、ある日彼の前世の記憶が蘇る――その正体は、かつて世界を支配した史上最強の大魔法使いアーサー。戸惑いながらも、カイルはアーサーの知識と力を身につけていき、次第に自らの道を切り拓く。 魔法を操れぬはずの少年が最強の魔法を駆使し、自分を信じてくれる商店街の仲間のために立ち上げる。やがてそれは貴族社会すら揺るがす存在へと成長していくのだった。こちらは無自覚モテモテの最強青年になっていく、ケアニー辺境伯爵家の七男カイルの物語。 ※こちらは「異世界ファンタジー × ラブコメ」要素を兼ね備えた作品です。メインは「異世界ファンタジー」ですが、恋愛要素やコメディ要素も兼ねた「ラブコメ寄りの異世界ファンタジー」になっています。カイルは複数の女性にもてますが、主人公が最終的には選ぶのは一人の女性です。一夫多妻のようなハーレム系の結末ではありませんので、女性の方にも共感できる内容になっています。異世界ファンタジーで男性主人公なので男性向けとしましたが、男女関係なく楽しめる内容を心がけて書いていきたいです。よろしくお願いします。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

亡国の草笛

うらたきよひこ
ファンタジー
兄を追い行き倒れた少年が拾われた先は…… 大好きだった兄を追って家を出た少年エリッツは国の中心たる街につくや行き倒れてしまう。最後にすがりついた手は兄に似た大きな手のひらだった。その出会いからエリッツは国をゆるがす謀略に巻きこまれていく。 ※BL要素を含むファンタジー小説です。苦手な方はご注意ください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

処理中です...