ロイヤルブラッド

フジーニー

文字の大きさ
上 下
39 / 51
第二章

第38話 ガールズ

しおりを挟む
    大浴場は1階にあり、男湯と女湯に分かれている。2人は1階に降りると、女湯の暖簾をくぐり抜け、脱衣場で服を脱ぎ始めた。


    「うわ、ヒマレ細い。羨ましいよー、色も白いし」


    キリナは、下着姿のヒマレをジロジロ見つめながら嫉妬した。


    「な、何言ってんのよ!キリナの方が実ってて羨ましいわよ」
 (私の方が歳上なのに)


    ヒマレはヒマレで、キリナの胸と自分の胸を見比べて、頬を膨らましながら嫉妬していた。


    「そうかなぁ、ウチは太ってるだけだよー」


    2人は話しながら、下着を全て脱ぎ終わると、ヒマレはタオルを巻き、キリナは全裸で浴場へと向かっていった。


    「ヒマレ!何でタオルなんか巻いてんの!友達に隠し事する気!?」


    先に、浴場へと足を踏み入れたキリナは、ヒマレの方を振り返り、指を指して軽く怒った。


    「えー、だって恥ずかしいもん!」


    一応ヒマレにも乙女なところがあったみたいだ。


    「ヒーマーレー!」


    キリナは眉間にシワを寄せた。


    「んーーもう!分かったわよ、ほれい!」


    キリナにしつこく言われたヒマレは、吹っ切れたように巻いていたタオルをぶん投げた。


    「それでよーし!んじゃ行くぞー……飛び込めー!」



    「えっ!   お、おーう!!」


    広々とした大浴場、大きな浴槽にはモクモクと湯気が立ち込める。そして、2人は、とびっきりの笑顔でお湯の中へダイブッ!


    豪快に水しぶきが上がり、2人はまるで幼い少女のように楽しんでいた。


   「あっはは!気持ちいい!いつもみたいに1人で入るのより、何倍も気持ちいい気がする」


    「本当に気持ちいいね、こんな大きなお風呂、初めて入ったわ私」


    それから2人は、天にも登るように癒された表情を見せ、ボケーっとしているうちに、時間だけが過ぎていた。そして、10分程くつろいだ後に、洗い場へと向かい、イスに腰を掛けた。

    それぞれ髪の毛を洗い終えると、目の前に掛かっているタオルを泡立て始めた。そして、泡が十分に立つと、互いにイスを少し浮かせ、向き合う形をとった。


    「あれ、ウチが先に背中流してあげるから、ヒマレはあっち向いて?」


    「いいの?じゃあお言葉に甘えて……」


    ヒマレは、クルッと逆を向き、キリナに背を向けた。そしてキリナは、タオルでヒマレの背中をゴシゴシ洗い始めた。


    「あぁ、気持ちいわキリナちゃん。丁度いい力加減よ」


    「本当?良かった、そう言ってもらえて。背中を流すって言葉さ、意味わかんなくない?だって擦ってるのに、背中を流すって、洗ってもないのに流したら意味無いじゃんね」


    「ふふ、確かに。そんな事考えてもみなかったよ。私なんかより、キリナちゃんの方がよっぽど面白い人だよ」


    「えー、そうかな」


    「絶対そう!だからこれから、たっくさん仲間が出来るよ。キリナちゃんみたいに、素直で元気で優しい子には、必ず素敵な仲間が出来る!保証します」


    「仲間かぁ……ありがとうヒマレ。でも、そんなに褒めても……何も出ないぞーー!!」


    「わー、やめて!くすぐったい、くすぐったい!」


    キリナは、ヒマレに言われた事がとても嬉しかった。その愛情表現が脇をくすぐるという技に出たのだ。


    そして2人は、この後もふざけながら流し合いをしていた。気が付けば脱衣場に上がった頃には、1時間は経っており、ベロベロに逆上せたガールズは、おぼつかない足取りで、部屋へと帰っていった。




     「「ふぅー」」

    部屋に着いた2人は、同時にベッドに仰向けに寝転んだ。ソファでは、アグネロがまだ寝ている。窓の外は夕暮れだ。


    「この服、とっても着心地が良いわ。私には勿体無いぐらい上質な洋服ね」


    ヒマレは、キリナが用意した服の着心地がとても気に入っていた。


    「まあ一応、王家の人間が着る物だし、みすぼらしい格好は出来ないからね」


    「てことは高級……」


    「超高級です!そのまま着てていいからね」



    「ちょ、超高級ですと……。あ、有難く頂戴いたします」


    ヒマレは、自分が超高級の洋服を身に纏う日が来るなんて思ってもみなかった。



    「そんなの、いくらでもあげるのに。それにしてもさ……ネロちゃん、よくこんなに呑気に眠れるね、きっとお兄ちゃんは、緊張して色々考え込んでるはずだよ」


    「そうね……。でも、意外と周りのことよく考えて、計算高い時もあるし、明日に備えて体力温存してるのかもよ」



    「そうなのかなぁ……。お兄ちゃんは、根は真面目だから、自分のした選択が間違ってないか、親友を殴れるかとか、そんなことばっかり考えて眠れないと思うよ」


    「イバラ、優しいもんね」


    「うん、お兄ちゃんは本当は優しいの。だからネロちゃんとお兄ちゃーゴーガーゴー」


    「いや、あんたも寝るんかい!」


    アグネロの事を呑気と言っていたキリナも、話の途中で眠りについてしまった。恐らく、ヒマレのお陰で緊張がほぐれ、安心したのだろう。


    「おやすみ、キリナちゃん」


    ヒマレは、キリナに薄手のタオルケットをかけた。


    「私も、疲れたし寝よ」


    そうして、アグネロ、ヒマレ、キリナの3人は、夕日が落ちきる前に、明日に備えて就寝した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

黒いモヤの見える【癒し手】

ロシキ
ファンタジー
平民のアリアは、いつからか黒いモヤモヤが見えるようになっていた。 その黒いモヤモヤは疲れていたり、怪我をしていたら出ているものだと理解していた。 しかし、黒いモヤモヤが初めて人以外から出ているのを見て、無意識に動いてしまったせいで、アリアは辺境伯家の長男であるエクスに魔法使いとして才能を見出された。 ※ 別視点(〜)=主人公以外の視点で進行 20話までは1日2話(13時50分と19時30分)投稿、21話以降は1日1話(19時30分)投稿

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

愛を求めて

魔女になりたい作者は蝋梅の花を愛でる
ファンタジー
これは生きる気力もない死ぬ気力もなかった少女が、異世界で新たな家族を見つける話。 ※少女が異世界で様々な種族と出会い、仲間になり、家族へとなっていく物語です ※基本的にほのぼのしています ※R15は念のため入れておきます

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

処理中です...