37 / 51
第二章
第36話 水ゼリー
しおりを挟む
3人は、4人掛けのテーブル席へ案内されると、アグネロとヒマレは隣に座り、キリナは向かい側に腰を下ろした。
「なぁ、キリナ。実はお前に謝らなきゃいけないことがあるんだ」
神妙な面持ちで、切り出したのはアグネロだ。
「どうしたの、ネロちゃん」
「お前の結婚を無しにしてくれってお前の父ちゃんに頼んだ。そしたらイバラと戦って、勝ったら許してくれる事になってさ……。俺我慢出来なくてよ。ごめん、勝手な事して」
「えおえおあぁー!そっかそっか!ありがとう、ネロちゃん……。急展開で少しビックリだけど、ウチは、どんな結果でも飲み込むから!それは、ネロちゃんがウチの為にしてくれた事だもん、今更責めたりしないぜ!」
「キリナ……」
頭を下げるアグネロに対し、キリナは笑顔で答えた。アグネロは、予想外の答えに驚きながらも、キリナの心の広さに惹かれていた。キリナも同様に、アグネロのまさかの行動に驚きと嬉しさと複雑な気持ちが葛藤したが、アグネロの優しさに惹かれた。
「キリナちゃん、私は部外者だから余計な事は言って嫌な気持ちにさせたら申し訳ないんだけど、自由を奪われる苦しみは痛い程分かるよ。確かに、アグネロとイバラが戦わなきゃいけないのは悲しいけど、キリナちゃんはたまにぐらい、自分の気持ちを尊重してあげても良いんじゃないかな」
ヒマレは、キリナの目をじっと見つめ、温かい表情でそう諭した。
「うん、ありがとうヒマレさん。どっちが傷付いても嫌だけど、やるからにはネロちゃんに勝ってもらわなきゃね、 ウチは自由になるのだ!」
「その意気だ、キリナ!あとは俺に任せとけっての!もしもの時は、ヒマレの能力でイバラを助けてやるから、心配すんな!」
「そうよ、キリナちゃん!こう見えても私もあなたと同じロイヤルブラッドなのよ!しかも治癒能力!何故かは良く分からないけどね」
「ヒマレさん、治癒の血法使うの!?すごーい!もしも、2人がボロボロになったらよろしくね」
キリナは、ヒマレの能力に驚きながらも、アグネロとイバラが傷付いた時の治療を頼んだ。
「今日は、俺の奢りだ!好きな物頼めーい」
アグネロは、懐の深さを見せつけると、テーブルの上にメニューを広げた。
「わーい、ネロちゃん太っ腹!じゃあウチは、ケチャカツ丼」
「俺も!」
キリナは、メインメニューのページのケチャカツ丼を指さした。それに乗っかって、アグネロは手を挙げた。
「ケチャカツ丼がメニューにあるの!?」
「当たり前だよヒマレさん。定番じゃん」
「そうだぞ、ヒマレ。お前もタクシーの中で食ったろ」
「定番なのっ!?私、タクシーの中で初めて耳にしたし、口にしたわよ」
ヒマレは、以前に初めて食べたケチャカツ丼がメジャーな物だと知り、驚いた。そりゃそうだ。
「いいから、どうすんだよ。早く決めろ」
「じゃあ、私もケチャカツ丼で」
「「結局かい!」」
そうして、注文を終え、数分後にケチャカツ丼が3つ運ばれてきた。
「うわー、美味そう」
アグネロは、目の前に運ばれてきた、ケチャカツ丼のタレの香りとケチャップの酸味に、ヨダレを垂らしていた。
「それじゃあ、明日のアグネロの勝利を願って、勝負にカツ!と言うことで……いただきます!」
「「いただきます!」」
ヒマレの号令を合図に、3人は箸を進めた。ガツガツと丼にかじりつく様子は、なんだかとても和ましかった。そこへ、ウェイターさんがカートを押しながら寄ってきた。
「失礼致します。こちら、サービスの水ゼリーでございます」
ケチャカツ丼にがっつく3人の目の前に、水郷街名物の水ゼリーが運ばれてきた。
「「「あひやほうほはいはふ!」」」
3人は、口いっぱいにご飯を詰め込みながらお礼を言った。
いち早く食べ終えたアグネロは、目を輝かせながら、スプーンを持ち、水ゼリーを一口食べた。
「う、うまい……信じられねーぐらい水だ。それなのになぜこんなに甘いのか」
水ゼリーに魅了されたアグネロは、一口、もう一口と食べ進め、あっという間に完食した。
その頃合で、ヒマレとキリナもケチャカツ丼を食べ終え、水ゼリーを口に運ぶ。
「何よこれ……この世の食べ物なの……。口の中で香りだけ残して消えたわ」
「本当に美味しいよね、ウチも初めて食べた時の衝撃は忘れられないよ。これは、この街でしか食べられないからね」
それから夢中で食べ続ける2人は、同じタイミングでゼリーの皿を空にした。
「「「ごちそうさまでした」」」
3人は、合掌しながら、食材とシェフに感謝の気持ちを述べた。そして、会計を済ませ、店を後にした。
「なぁ、キリナ。実はお前に謝らなきゃいけないことがあるんだ」
神妙な面持ちで、切り出したのはアグネロだ。
「どうしたの、ネロちゃん」
「お前の結婚を無しにしてくれってお前の父ちゃんに頼んだ。そしたらイバラと戦って、勝ったら許してくれる事になってさ……。俺我慢出来なくてよ。ごめん、勝手な事して」
「えおえおあぁー!そっかそっか!ありがとう、ネロちゃん……。急展開で少しビックリだけど、ウチは、どんな結果でも飲み込むから!それは、ネロちゃんがウチの為にしてくれた事だもん、今更責めたりしないぜ!」
「キリナ……」
頭を下げるアグネロに対し、キリナは笑顔で答えた。アグネロは、予想外の答えに驚きながらも、キリナの心の広さに惹かれていた。キリナも同様に、アグネロのまさかの行動に驚きと嬉しさと複雑な気持ちが葛藤したが、アグネロの優しさに惹かれた。
「キリナちゃん、私は部外者だから余計な事は言って嫌な気持ちにさせたら申し訳ないんだけど、自由を奪われる苦しみは痛い程分かるよ。確かに、アグネロとイバラが戦わなきゃいけないのは悲しいけど、キリナちゃんはたまにぐらい、自分の気持ちを尊重してあげても良いんじゃないかな」
ヒマレは、キリナの目をじっと見つめ、温かい表情でそう諭した。
「うん、ありがとうヒマレさん。どっちが傷付いても嫌だけど、やるからにはネロちゃんに勝ってもらわなきゃね、 ウチは自由になるのだ!」
「その意気だ、キリナ!あとは俺に任せとけっての!もしもの時は、ヒマレの能力でイバラを助けてやるから、心配すんな!」
「そうよ、キリナちゃん!こう見えても私もあなたと同じロイヤルブラッドなのよ!しかも治癒能力!何故かは良く分からないけどね」
「ヒマレさん、治癒の血法使うの!?すごーい!もしも、2人がボロボロになったらよろしくね」
キリナは、ヒマレの能力に驚きながらも、アグネロとイバラが傷付いた時の治療を頼んだ。
「今日は、俺の奢りだ!好きな物頼めーい」
アグネロは、懐の深さを見せつけると、テーブルの上にメニューを広げた。
「わーい、ネロちゃん太っ腹!じゃあウチは、ケチャカツ丼」
「俺も!」
キリナは、メインメニューのページのケチャカツ丼を指さした。それに乗っかって、アグネロは手を挙げた。
「ケチャカツ丼がメニューにあるの!?」
「当たり前だよヒマレさん。定番じゃん」
「そうだぞ、ヒマレ。お前もタクシーの中で食ったろ」
「定番なのっ!?私、タクシーの中で初めて耳にしたし、口にしたわよ」
ヒマレは、以前に初めて食べたケチャカツ丼がメジャーな物だと知り、驚いた。そりゃそうだ。
「いいから、どうすんだよ。早く決めろ」
「じゃあ、私もケチャカツ丼で」
「「結局かい!」」
そうして、注文を終え、数分後にケチャカツ丼が3つ運ばれてきた。
「うわー、美味そう」
アグネロは、目の前に運ばれてきた、ケチャカツ丼のタレの香りとケチャップの酸味に、ヨダレを垂らしていた。
「それじゃあ、明日のアグネロの勝利を願って、勝負にカツ!と言うことで……いただきます!」
「「いただきます!」」
ヒマレの号令を合図に、3人は箸を進めた。ガツガツと丼にかじりつく様子は、なんだかとても和ましかった。そこへ、ウェイターさんがカートを押しながら寄ってきた。
「失礼致します。こちら、サービスの水ゼリーでございます」
ケチャカツ丼にがっつく3人の目の前に、水郷街名物の水ゼリーが運ばれてきた。
「「「あひやほうほはいはふ!」」」
3人は、口いっぱいにご飯を詰め込みながらお礼を言った。
いち早く食べ終えたアグネロは、目を輝かせながら、スプーンを持ち、水ゼリーを一口食べた。
「う、うまい……信じられねーぐらい水だ。それなのになぜこんなに甘いのか」
水ゼリーに魅了されたアグネロは、一口、もう一口と食べ進め、あっという間に完食した。
その頃合で、ヒマレとキリナもケチャカツ丼を食べ終え、水ゼリーを口に運ぶ。
「何よこれ……この世の食べ物なの……。口の中で香りだけ残して消えたわ」
「本当に美味しいよね、ウチも初めて食べた時の衝撃は忘れられないよ。これは、この街でしか食べられないからね」
それから夢中で食べ続ける2人は、同じタイミングでゼリーの皿を空にした。
「「「ごちそうさまでした」」」
3人は、合掌しながら、食材とシェフに感謝の気持ちを述べた。そして、会計を済ませ、店を後にした。
37
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
黒いモヤの見える【癒し手】
ロシキ
ファンタジー
平民のアリアは、いつからか黒いモヤモヤが見えるようになっていた。
その黒いモヤモヤは疲れていたり、怪我をしていたら出ているものだと理解していた。
しかし、黒いモヤモヤが初めて人以外から出ているのを見て、無意識に動いてしまったせいで、アリアは辺境伯家の長男であるエクスに魔法使いとして才能を見出された。
※
別視点(〜)=主人公以外の視点で進行
20話までは1日2話(13時50分と19時30分)投稿、21話以降は1日1話(19時30分)投稿
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる