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第二章
第23話 花火
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「僕もう焦ったよーガロ君」
アグネロを撃ったキャスという男は、小柄で若い青年だ。おかっぱ頭で可愛らしい印象である。少しづつ、ガロの元へと歩いている。
「ていうか、お前なにやってたんだよ」
「いやー、そこで倒れてる男を乗せたんだけど、そいつ睡眠ドリンクを飲んだフリして寝る演技よ。わざとここまで来たんだよ。んで、着いたら急にムクっと起きて、逆に僕が無理矢理飲まされて寝てました。ごめんね」
「本当に馬鹿だなてめぇは」
キャスは倒れるアグネロとヒマレの横を通り過ぎ、ガロの側に近付いた。そして、倒れているバゲットを見つけるやいなや指を差して笑い出した。
「あれれ~、バゲ君伸びちゃってるやん。弱いねぇ。で、ガロ君も殺られそうだったよね」
「うるせぇよ。眠らされてだろうがてめぇは。俺はまだ一発しか食らっ」
何故か急に喋りが止まったガロ。一瞬の出来事だったが、キャスがサイレンサーピストルで左の胸を撃ち抜いたのだった。アグネロを撃った銃とは別のもののようだ。
「あれれ~、ガロ君も弱いねぇ。バイバイ」
「てめぇ……」
どういう事か仲間割れを起こした2人。ガロは最後の言葉を言い残し、その場に倒れて息絶えた。一方のアグネロはギリギリで意識を保っている状態であった。うつ伏せで倒れるアグネロの腰辺りにヒマレは手を当てていた。その手は光り輝いている。
「アグネロ……アグネロ」
ガロを殺したキャスは、目線をアグネロ達に向けて口を開く。
「えーなになにぃ、手が光ってるねぇ!まだそいつに戦ってもらおうと思ってんの?無理でしょもう」
「無理……じゃねぇ」
どうにか気を保ってるアグネロは、ゆっくりと立ち上がると戦闘態勢に入った。まだまだ心は折れない。ヒマレによるほんの数分の手当てで少々回復したようだ。ただ、重症であることは変わりない。
「おお強いね、その身体でまだ戦えるのね」
「ヒマレ、ありがとう。あとは任せろ、お前は少し下がっててくれ」
「あうん、負けないで……アグネロ」
アグネロに思いを告げたヒマレは、その場から距離を置いて戦いの様子を見つめる。
「本当は、君達2人とも売り飛ばした方が良いけど、男の方はボロボロだから殺すね。女の方は可愛いから売り飛ばすね」
不敵な笑みでそう告げたキャスは、銃口をアグネロに向けた。先程アグネロを撃ち抜いた銃である。
「死ね」
キャスが引き金を引いたのと同時にアグネロは大きく息を吸い込んで、技を繰り出す。
「俺は負けねぇ。血炎暴砲ォォオ!!」
アグネロは口から激しい炎を吐き出した。口から流れている血が炎に変わって相手を包み込んだという表現が適当であろう。その炎は、発砲された鉛弾をも溶かし、工場内が燃え盛った。
「はぁ……はぁ……」
炎の中、気力だけでギリギリ立っているアグネロ。背後に避難しているヒマレは炎に巻き込まれずに無事である。キャスの姿は見えず、炎の中で焼かれていることだろうと思ったその時、アグネロの頭上からキャスの声が聞こえてきた。
「僕が銃だけだと思うなよぉ、死ねぇえ!」
炎の中、アグネロの遥か頭上から現れたキャスは手に持った短剣をアグネロに向かって振りかざした。しかし、野生の勘がはたらいたアグネロは、キャスの声が聞こえた方に右手を伸ばした。
「血炎大花火!」
アグネロの手から発射された炎の球は、キャスを確実に捉えるとそのまま天井を突き破り、轟音と共に爆破すると夕空に真っ赤なドデカイ炎の花火を咲かせた。
勝者アグネロ。
「勝ったぜ」
最後の力を使い果たしたアグネロはその場に倒れ込み、気を失った。
「アグネロッ!熱っ!」
目の前でぶっ倒れたアグネロを助けに行こうとしたヒマレだったが、燃えさかる炎の熱さに邪魔され、アグネロの本へ近づく事が出来ずにいる。
「アグネロ……、今助けを呼んでくるから少しだけ待ってて」
そう言って倉庫の外へ飛び出そうとしたヒマレは、目眩を起こして足取りがフラフラになり、出口の手前で倒れて気を失ってしまった。慣れない血法を使い過ぎたのだろう。アグネロとヒマレ2人が気を失い倒れてしまった。最悪の状況である。
アグネロを撃ったキャスという男は、小柄で若い青年だ。おかっぱ頭で可愛らしい印象である。少しづつ、ガロの元へと歩いている。
「ていうか、お前なにやってたんだよ」
「いやー、そこで倒れてる男を乗せたんだけど、そいつ睡眠ドリンクを飲んだフリして寝る演技よ。わざとここまで来たんだよ。んで、着いたら急にムクっと起きて、逆に僕が無理矢理飲まされて寝てました。ごめんね」
「本当に馬鹿だなてめぇは」
キャスは倒れるアグネロとヒマレの横を通り過ぎ、ガロの側に近付いた。そして、倒れているバゲットを見つけるやいなや指を差して笑い出した。
「あれれ~、バゲ君伸びちゃってるやん。弱いねぇ。で、ガロ君も殺られそうだったよね」
「うるせぇよ。眠らされてだろうがてめぇは。俺はまだ一発しか食らっ」
何故か急に喋りが止まったガロ。一瞬の出来事だったが、キャスがサイレンサーピストルで左の胸を撃ち抜いたのだった。アグネロを撃った銃とは別のもののようだ。
「あれれ~、ガロ君も弱いねぇ。バイバイ」
「てめぇ……」
どういう事か仲間割れを起こした2人。ガロは最後の言葉を言い残し、その場に倒れて息絶えた。一方のアグネロはギリギリで意識を保っている状態であった。うつ伏せで倒れるアグネロの腰辺りにヒマレは手を当てていた。その手は光り輝いている。
「アグネロ……アグネロ」
ガロを殺したキャスは、目線をアグネロ達に向けて口を開く。
「えーなになにぃ、手が光ってるねぇ!まだそいつに戦ってもらおうと思ってんの?無理でしょもう」
「無理……じゃねぇ」
どうにか気を保ってるアグネロは、ゆっくりと立ち上がると戦闘態勢に入った。まだまだ心は折れない。ヒマレによるほんの数分の手当てで少々回復したようだ。ただ、重症であることは変わりない。
「おお強いね、その身体でまだ戦えるのね」
「ヒマレ、ありがとう。あとは任せろ、お前は少し下がっててくれ」
「あうん、負けないで……アグネロ」
アグネロに思いを告げたヒマレは、その場から距離を置いて戦いの様子を見つめる。
「本当は、君達2人とも売り飛ばした方が良いけど、男の方はボロボロだから殺すね。女の方は可愛いから売り飛ばすね」
不敵な笑みでそう告げたキャスは、銃口をアグネロに向けた。先程アグネロを撃ち抜いた銃である。
「死ね」
キャスが引き金を引いたのと同時にアグネロは大きく息を吸い込んで、技を繰り出す。
「俺は負けねぇ。血炎暴砲ォォオ!!」
アグネロは口から激しい炎を吐き出した。口から流れている血が炎に変わって相手を包み込んだという表現が適当であろう。その炎は、発砲された鉛弾をも溶かし、工場内が燃え盛った。
「はぁ……はぁ……」
炎の中、気力だけでギリギリ立っているアグネロ。背後に避難しているヒマレは炎に巻き込まれずに無事である。キャスの姿は見えず、炎の中で焼かれていることだろうと思ったその時、アグネロの頭上からキャスの声が聞こえてきた。
「僕が銃だけだと思うなよぉ、死ねぇえ!」
炎の中、アグネロの遥か頭上から現れたキャスは手に持った短剣をアグネロに向かって振りかざした。しかし、野生の勘がはたらいたアグネロは、キャスの声が聞こえた方に右手を伸ばした。
「血炎大花火!」
アグネロの手から発射された炎の球は、キャスを確実に捉えるとそのまま天井を突き破り、轟音と共に爆破すると夕空に真っ赤なドデカイ炎の花火を咲かせた。
勝者アグネロ。
「勝ったぜ」
最後の力を使い果たしたアグネロはその場に倒れ込み、気を失った。
「アグネロッ!熱っ!」
目の前でぶっ倒れたアグネロを助けに行こうとしたヒマレだったが、燃えさかる炎の熱さに邪魔され、アグネロの本へ近づく事が出来ずにいる。
「アグネロ……、今助けを呼んでくるから少しだけ待ってて」
そう言って倉庫の外へ飛び出そうとしたヒマレは、目眩を起こして足取りがフラフラになり、出口の手前で倒れて気を失ってしまった。慣れない血法を使い過ぎたのだろう。アグネロとヒマレ2人が気を失い倒れてしまった。最悪の状況である。
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