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第一章
第16話 天使の雫
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歩く事15分、狭い路地を縫って行ったところに、木造の2階建てアパートが目に入ってきた。ヒマレの家である。
「これが、私の家よ」
「おー、すげーなヒマレ!2階建てで玄関も6つもあんのか!これどこから入ってもいいのか?」
アグネロの目は少年のようにキラキラと輝いていた。
「アホネロ。んな訳ないでしょ、私の家は下の1番左よ、101号室。 他の扉は、他の人が住んでるのよ。だから静かにしなさいよ。何故そんなことも知らない」
「はいっ!!承知しました!!」
「しっ!」
ヒマレは人差し指を自分の顔の前に構えて注意した。
静かにしろと命令されて、馬鹿でかい声で返事してしまうのが、アグネロという生物なのである。通称アホネロである。
そして、2人は101号室のヒマレの部屋へと消えていった。
「はぁー、やっぱり家は落ち着くわ。 アグネロ、私ちょっとだけ寝るから、お腹空いたら、冷蔵庫の中に何かしらあるから、勝手に食べて。 あと外には出ない事」
「はい、わかりました」
ヒマレの忠告に、今度は静かな声で返事したアグネロはの目は、静かに返事したよ、褒めて? と言わんばかりの輝きをしていた。
少年の眼差しを無視したヒマレは、ベッドに入って壁側を向き、アグネロに背を向けた状態となった。
ヒマレの部屋はワンルームで少々狭いので余計なものは置いていない。テーブル、ベッド、冷蔵庫、テレビぐらいだ。
(どうしよ私、私の事好きって言ってくれた人を家に上げるなんて、いざとなると緊張して寝れないじゃないの、このアホネロ)
「ポチッとな」
アグネロは、人の気も知らないで、呑気にテレビをつけた。
彼女と食べる手羽先にー♪あなたと食べた手羽元をー♪重ねてしまう悪い癖ー♪
「やっぱ、万田山ゴエモンは良いなぁ。初めてテレビで観たわ」
(やっぱり、変な歌かと思ったら万田山かい!)
頭の中でツッこんだヒマレは、ものの10分程で夢の世界へと入っていった。
「腹減ったな、なんか食お」
アグネロは、冷蔵庫を漁りだした。そして、手当り次第に食べだした。 そうして、2時間程経過したタイミングで、ヒマレは目を覚ました。
「思ったより、沢山寝ちゃったな、私もご飯食べよ」
「おはようヒマレ! このアニメ面白いな! 頭からロケットが出る人間の物語なんだけど、そんな奴有り得ねぇってのな!まじうける」
(手から炎が出るあなたと変わらないと思うのですが)
「それは良かったわね」
ヒマレは子どもを扱うかのように華麗にスルーした。そして、冷蔵庫を開けた。
「何食べ……空っぽ…………コルァ! アホネロ!」
激怒したヒマレはアホネロの頭にゲンコツをかました。
「なんで全部食べてんじゃい!沢山あったでしょ!私の分がないじゃない!」
「食べていいって言ったじゃんかー」
半分泣きべそのアグネロは頭を擦りながら答えた。
「人んちの冷蔵庫の中身を全部食べる奴なんて聞いたことないわよ!」
「ずみまでんでぢだ」
アグネロは泣きながら謝った。
そうして、どんちゃん騒ぎをしているうちに夜は老けていき、暗闇に浮かぶお饅頭のような月が窓の外から優しく照らしていた。ヒマレはベッドの中、アグネロは床に横になっていた。
「ねぇ、アグネロ」
「んー?」
「アグネロは、どうしてロイヤルを探してるの? 私、ついていっても自分の身を護ること出来ないし、戦えないけど、理由だけでも知りたい」
「んーとね、この世にロイヤルが何人いるのか、今はまだ分からくて。でも他に、俺みたいなロイヤルがいるのなら会いたい、俺は会って確かめたい」
「確かめる?」
「ロイヤルブラッドとは何なのか、何の為に得た力なのか、何で王家の者だけが選ばれたのか」
「ちょっと待って、私は王家の者じゃないし、アグネロ以外の人が王家の者ってなんでわかるの」
「ロイヤルって、王家っていう意味らしいんだ。俺が王家に生まれたのと関係があると思う。それに俺以外にも、血法が使える王家の一族を2つ知っている。ヒマレに関してはまだ予想すらつかないけど」
「なるほど、その線でいくと、私は本当に謎ね」
「あともう1つ。 俺の親父が常々言ってたことがあってさ」
《何百年も前に王家の血を巡る大きな争いが起きたんだ、その争いで沢山の人が死んだ。だからこの血の力をこの世から無くさなければ、いつかまた争いが起きる。血の力を消すのに必要なのは、天使の雫と呼ばれるもので、この世のどこかに必ずある》
「俺も、それ以上詳しい事は知らない。なんで争いが起きたのか、なんでこの力が生まれたのか、そこで俺は考えたんだ。もしその天使の雫をロイヤルの誰かが持っていたらどうするか……必ず隠すと思うんだ。特殊な力を失いたくないが為に」
「確かに。アグネロにしては、頭がキレるわね。最終的には、その天使の雫というものを手に入れなければならない。そういうことね」
「あぁそうだ、幸運にも、こんなにすぐにロイヤルに出会えたけど、ヒマレは天使の雫の事なんて知らないし、とりあえずさっき言った、王家の知り合いの所にまず行こうと思う」
「アグネロ、あんたって本当に凄いよ。 私、あんたに付いて行く。私も自分の事知りたいし。逃げていったファイに聞きたいことも沢山ある。だから、一緒に行かせて」
「えー、本当か!ありがとう、スゲー嬉しいよ!」
「こちらこそありがとうね、アグネロ。それじゃ、今日はもう寝ましょ」
「だな! おやす……ガーゴーガーゴー」
アグネロは寝た。
「おやすみ言い切る前に寝る人初めて見たわ、いびきうるさいし。でもなんだか安心できる……さて私も寝よ」
そう言ってヒマレも眠りについた。
「これが、私の家よ」
「おー、すげーなヒマレ!2階建てで玄関も6つもあんのか!これどこから入ってもいいのか?」
アグネロの目は少年のようにキラキラと輝いていた。
「アホネロ。んな訳ないでしょ、私の家は下の1番左よ、101号室。 他の扉は、他の人が住んでるのよ。だから静かにしなさいよ。何故そんなことも知らない」
「はいっ!!承知しました!!」
「しっ!」
ヒマレは人差し指を自分の顔の前に構えて注意した。
静かにしろと命令されて、馬鹿でかい声で返事してしまうのが、アグネロという生物なのである。通称アホネロである。
そして、2人は101号室のヒマレの部屋へと消えていった。
「はぁー、やっぱり家は落ち着くわ。 アグネロ、私ちょっとだけ寝るから、お腹空いたら、冷蔵庫の中に何かしらあるから、勝手に食べて。 あと外には出ない事」
「はい、わかりました」
ヒマレの忠告に、今度は静かな声で返事したアグネロはの目は、静かに返事したよ、褒めて? と言わんばかりの輝きをしていた。
少年の眼差しを無視したヒマレは、ベッドに入って壁側を向き、アグネロに背を向けた状態となった。
ヒマレの部屋はワンルームで少々狭いので余計なものは置いていない。テーブル、ベッド、冷蔵庫、テレビぐらいだ。
(どうしよ私、私の事好きって言ってくれた人を家に上げるなんて、いざとなると緊張して寝れないじゃないの、このアホネロ)
「ポチッとな」
アグネロは、人の気も知らないで、呑気にテレビをつけた。
彼女と食べる手羽先にー♪あなたと食べた手羽元をー♪重ねてしまう悪い癖ー♪
「やっぱ、万田山ゴエモンは良いなぁ。初めてテレビで観たわ」
(やっぱり、変な歌かと思ったら万田山かい!)
頭の中でツッこんだヒマレは、ものの10分程で夢の世界へと入っていった。
「腹減ったな、なんか食お」
アグネロは、冷蔵庫を漁りだした。そして、手当り次第に食べだした。 そうして、2時間程経過したタイミングで、ヒマレは目を覚ました。
「思ったより、沢山寝ちゃったな、私もご飯食べよ」
「おはようヒマレ! このアニメ面白いな! 頭からロケットが出る人間の物語なんだけど、そんな奴有り得ねぇってのな!まじうける」
(手から炎が出るあなたと変わらないと思うのですが)
「それは良かったわね」
ヒマレは子どもを扱うかのように華麗にスルーした。そして、冷蔵庫を開けた。
「何食べ……空っぽ…………コルァ! アホネロ!」
激怒したヒマレはアホネロの頭にゲンコツをかました。
「なんで全部食べてんじゃい!沢山あったでしょ!私の分がないじゃない!」
「食べていいって言ったじゃんかー」
半分泣きべそのアグネロは頭を擦りながら答えた。
「人んちの冷蔵庫の中身を全部食べる奴なんて聞いたことないわよ!」
「ずみまでんでぢだ」
アグネロは泣きながら謝った。
そうして、どんちゃん騒ぎをしているうちに夜は老けていき、暗闇に浮かぶお饅頭のような月が窓の外から優しく照らしていた。ヒマレはベッドの中、アグネロは床に横になっていた。
「ねぇ、アグネロ」
「んー?」
「アグネロは、どうしてロイヤルを探してるの? 私、ついていっても自分の身を護ること出来ないし、戦えないけど、理由だけでも知りたい」
「んーとね、この世にロイヤルが何人いるのか、今はまだ分からくて。でも他に、俺みたいなロイヤルがいるのなら会いたい、俺は会って確かめたい」
「確かめる?」
「ロイヤルブラッドとは何なのか、何の為に得た力なのか、何で王家の者だけが選ばれたのか」
「ちょっと待って、私は王家の者じゃないし、アグネロ以外の人が王家の者ってなんでわかるの」
「ロイヤルって、王家っていう意味らしいんだ。俺が王家に生まれたのと関係があると思う。それに俺以外にも、血法が使える王家の一族を2つ知っている。ヒマレに関してはまだ予想すらつかないけど」
「なるほど、その線でいくと、私は本当に謎ね」
「あともう1つ。 俺の親父が常々言ってたことがあってさ」
《何百年も前に王家の血を巡る大きな争いが起きたんだ、その争いで沢山の人が死んだ。だからこの血の力をこの世から無くさなければ、いつかまた争いが起きる。血の力を消すのに必要なのは、天使の雫と呼ばれるもので、この世のどこかに必ずある》
「俺も、それ以上詳しい事は知らない。なんで争いが起きたのか、なんでこの力が生まれたのか、そこで俺は考えたんだ。もしその天使の雫をロイヤルの誰かが持っていたらどうするか……必ず隠すと思うんだ。特殊な力を失いたくないが為に」
「確かに。アグネロにしては、頭がキレるわね。最終的には、その天使の雫というものを手に入れなければならない。そういうことね」
「あぁそうだ、幸運にも、こんなにすぐにロイヤルに出会えたけど、ヒマレは天使の雫の事なんて知らないし、とりあえずさっき言った、王家の知り合いの所にまず行こうと思う」
「アグネロ、あんたって本当に凄いよ。 私、あんたに付いて行く。私も自分の事知りたいし。逃げていったファイに聞きたいことも沢山ある。だから、一緒に行かせて」
「えー、本当か!ありがとう、スゲー嬉しいよ!」
「こちらこそありがとうね、アグネロ。それじゃ、今日はもう寝ましょ」
「だな! おやす……ガーゴーガーゴー」
アグネロは寝た。
「おやすみ言い切る前に寝る人初めて見たわ、いびきうるさいし。でもなんだか安心できる……さて私も寝よ」
そう言ってヒマレも眠りについた。
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