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第一章
第10話 作戦
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___ここはワイン工場
ワインが入った樽と瓶が沢山並んでいるすぐ横には、大きな製造タンクが5台、そして様々な生産ラインの元に50人程の町民が命を懸けて働いている。ファイの命令により、以前より増員しているのが分かる。
「みんなー、遅くなってごめんなさい、足りない分のブドウ買ってきたわ」
ヒマレが大きな声で、帰還を告げると、1人の中年男が小走りで駆け寄って来た。工場長である、以前よりも心做しか少し痩せているように思える。
「お疲れ、ヒマレちゃん。別チームも調達に行ってくれたからどうにか足りそうだよ。ありがとうね、後少しだからみんなで頑張ろう」
「はい、工場長! 着替えてきますね」
ヒマレはブドウの入った大きな袋を工場長に渡すと、更衣室へと向かった。5分程で着替えを済ませたヒマレは、生産ラインに合流し、大きく深呼吸してから作業を始めた。
「アグネロ、楽にしてやるって言ってな。どういう意味だろ……」
この後に起きる事はまだ、誰も知る由もなかった。
___ここは小さな宿。
アグネロは宿のフロントにいた。
「すいません、誰かいますかー。泊まりたいんですけどー」
「あいよ」
フロントの奥から70歳程のお婆さんが出てきた。どうやら宿の女将さんのようだ。
「すいません、今から泊まらせてください。俺1人です」
「あいよ」
女将さんはそう言って、アグネロに鍵を渡した。鍵には202と書いてあり、アグネロの部屋は2階の202号室のようである。
「ありがとう、お婆さん! 」
アグネロは鍵を受け取り、ダッシュで階段を駆け上り、部屋に向かった。
「今日は明日に備えて早く寝よ、この町は俺が救うんだ!」
アグネロは、部屋の鍵を開けながらそう呟くと、余程疲れていたのか、部屋に入るやいなや、ベッドに倒れ込んだ。 いや、ベッドにテンション上がるタイプだ。
「この作戦を思い付いた俺様は本当に天才なのかもしれない。やってやるぞー!えいえいおー!それ、えいえいっおー!」
やる時はやる男アグネロ。拳を天に掲げ、気合い十分だ。自分で考えた作戦に酔っている。策士策に溺れるとならなければ良いが。
「えいっえいっおー!えいえいっびー!えいえいっえーい!」
「うるせーぞ!!隣り!!!」
「あっ、すいません」
だっさ。これは先が思いやられますね。
「とりあえず、明日に備えて寝よう。この町は救う!俺が!倒置法決まった、まじかっこいい」
いや、ダサいから早く寝ろ。ということで、アグネロは夢の世界へと旅立った。
___翌朝7時。
「んふぁー、よく寝た」
アグネロは布団から上半身を起こすと、両手を上にあげ、背伸びをした。
「よし、やるか。題して レシート要りません作戦だ」
怪しげな笑みを浮かべるアグネロは支度を済ますと、フロントへと向かった。階段を降りる音がキシキシと軋んで何やら悪い予兆がする音に感じる。
「すいません、チェックアウトで」
「あいよ」
フロントで大きな声を出すと、奥から女将さんが出てきては、お決まりの 「あいよ」 が飛び出した。
「お婆さん、いくらだ?」
「あいよ、2000ベイル」
「レッドカードで一括決済。 レシートは要りません」
アグネロの口にした、レシート要りません作戦が、早くも登場。これがこの後、嵐を巻き起こすのであった。
「あいよ」
女将さんはレッドカードを受け取り、機械に通すと、決済を済まし、カードのみをアグネロに返した。
そして、カードを受け取ったアグネロは宿を後にした。
女将さんの手にはレシートが握られている。それを捨てる前に、チラッと目を通した女将さんは、ガタガタと震えだし、大量の汗をかきだした。
ワインが入った樽と瓶が沢山並んでいるすぐ横には、大きな製造タンクが5台、そして様々な生産ラインの元に50人程の町民が命を懸けて働いている。ファイの命令により、以前より増員しているのが分かる。
「みんなー、遅くなってごめんなさい、足りない分のブドウ買ってきたわ」
ヒマレが大きな声で、帰還を告げると、1人の中年男が小走りで駆け寄って来た。工場長である、以前よりも心做しか少し痩せているように思える。
「お疲れ、ヒマレちゃん。別チームも調達に行ってくれたからどうにか足りそうだよ。ありがとうね、後少しだからみんなで頑張ろう」
「はい、工場長! 着替えてきますね」
ヒマレはブドウの入った大きな袋を工場長に渡すと、更衣室へと向かった。5分程で着替えを済ませたヒマレは、生産ラインに合流し、大きく深呼吸してから作業を始めた。
「アグネロ、楽にしてやるって言ってな。どういう意味だろ……」
この後に起きる事はまだ、誰も知る由もなかった。
___ここは小さな宿。
アグネロは宿のフロントにいた。
「すいません、誰かいますかー。泊まりたいんですけどー」
「あいよ」
フロントの奥から70歳程のお婆さんが出てきた。どうやら宿の女将さんのようだ。
「すいません、今から泊まらせてください。俺1人です」
「あいよ」
女将さんはそう言って、アグネロに鍵を渡した。鍵には202と書いてあり、アグネロの部屋は2階の202号室のようである。
「ありがとう、お婆さん! 」
アグネロは鍵を受け取り、ダッシュで階段を駆け上り、部屋に向かった。
「今日は明日に備えて早く寝よ、この町は俺が救うんだ!」
アグネロは、部屋の鍵を開けながらそう呟くと、余程疲れていたのか、部屋に入るやいなや、ベッドに倒れ込んだ。 いや、ベッドにテンション上がるタイプだ。
「この作戦を思い付いた俺様は本当に天才なのかもしれない。やってやるぞー!えいえいおー!それ、えいえいっおー!」
やる時はやる男アグネロ。拳を天に掲げ、気合い十分だ。自分で考えた作戦に酔っている。策士策に溺れるとならなければ良いが。
「えいっえいっおー!えいえいっびー!えいえいっえーい!」
「うるせーぞ!!隣り!!!」
「あっ、すいません」
だっさ。これは先が思いやられますね。
「とりあえず、明日に備えて寝よう。この町は救う!俺が!倒置法決まった、まじかっこいい」
いや、ダサいから早く寝ろ。ということで、アグネロは夢の世界へと旅立った。
___翌朝7時。
「んふぁー、よく寝た」
アグネロは布団から上半身を起こすと、両手を上にあげ、背伸びをした。
「よし、やるか。題して レシート要りません作戦だ」
怪しげな笑みを浮かべるアグネロは支度を済ますと、フロントへと向かった。階段を降りる音がキシキシと軋んで何やら悪い予兆がする音に感じる。
「すいません、チェックアウトで」
「あいよ」
フロントで大きな声を出すと、奥から女将さんが出てきては、お決まりの 「あいよ」 が飛び出した。
「お婆さん、いくらだ?」
「あいよ、2000ベイル」
「レッドカードで一括決済。 レシートは要りません」
アグネロの口にした、レシート要りません作戦が、早くも登場。これがこの後、嵐を巻き起こすのであった。
「あいよ」
女将さんはレッドカードを受け取り、機械に通すと、決済を済まし、カードのみをアグネロに返した。
そして、カードを受け取ったアグネロは宿を後にした。
女将さんの手にはレシートが握られている。それを捨てる前に、チラッと目を通した女将さんは、ガタガタと震えだし、大量の汗をかきだした。
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