これは未来に続く婚約破棄

茂栖 もす

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23日目④

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 レオナードは先日、私にこう言った。

『 ミリア嬢、男の行動には全て意味がある。逆を言うと、意味の無い行動はしない生き物だ。それを踏まえて、良く考てみたまえ。最近の私の行動を』と。

 そして、私は考えた。その日に解決できなかった問題は、全て翌日には綺麗さっぱり忘れる超ポジティブ思考の私がだ。しかも、だだくさにではなく、真剣に考えたのだ。

 でも、答えは一つしか見つからなかった。というか、その答えも曖昧なままだったりもする。

「あのね………すごく言いにくいんだけど、ね?」
「ミリア嬢、そんな恐る恐る口を開くなんて君らしくない。はっきり言いたまえ」
「あらそっ。じゃあ、はっきり言わせてもらうわ」

 レオナードに促され、私は、すぅっと肺に空気を送りこんで息を整える。それから静かに口を開いた。

「まず、男の行動には全て意味があると言っていたけれどね、あなたのここ最近の行動って、急に不機嫌になったり、ふて腐れたりして…………はっきり言って挙動不審だわ」
「………………自覚は多少ある」
「そう。良かった。無意識だったら、私は通院を進めようと思っていたの。以前話したチップ次第で、口の堅さが変わる名医のことなんだけど───」
「迷医の間違いじゃないのか?」

 すかさずツッコミを入れたレオナードに、私は思わず肩眉を持ち上げてしまう。

「いいえ、医師としての腕は確かよ。ただ、お金が大好きなだけ。でも人間を治療する人間が、人間の欲望に忠実だなんて、考えようによっては、一番信頼できる医者だと思うわ」
「………………そうか。そういう考えもあるんだな。大変参考になった。では、話を戻そう」
「そうね」

 ついつい脱線してしまったけれど、レオナードはあっさりと話を元に戻してしまった。…………いつもだったら、もう少しノッてくれるというのに。ああ、そんなにも、中途半端になっているこの質問の回答を聞きたいということか。

 ぶっちゃけ、この後に話す内容は、彼にとっても私にとっても良いと言えないものだと思う。けれど、逆を言えば一気に言い切った方が傷が浅くて済むのかもしれない。お互いに。

 そう結論に達した私は、先ほどより大きく息を吸い込むと、勢いよく立ち上がりこう言い放った。

「レオナード、あなたの挙動不審な行動は、ずばり私に隠していることがあるからそうしているんでしょ?ずっと、言えないことがあったんでしょ?そして、挙動不審な行動からその理由を読み取れと言っているんでしょ?でも、言ってくれなきゃわからないわよっ。遠回しな訴えはやめてちょうだい。今すぐ白状しなさいっ」

 意気込んでそう問い掛ければ、レオナードは爆発したみたいに顔をを真っ赤にした。

「なっなんていう聞き方をするんだっ」
「…………聞き方がドストレートだったことは認めるわ。でも考えたってわからないもの。ねえ、レオナード、私、あなたの一番の理解者だと思っていたのは間違いだったのかしら?自惚れだったのかしら?」

 さっきの勢いはどこへやら。何も答えてくれないレオナードに、しゅんと肩を落としてしまう。そんな私に、レオナードは今度は、すっと視線を逸らすという一番卑怯な逃げ方をした。

「私、悲しいわ………レオナード」

 へたりと着席した私は、思わず、すんっと鼻をすすってしまう。

 それでもレオナードは口を開こうとはしない。とてもとても複雑な顔をしたまま、じっとこちらを見つめるだけ。そんな彼に向かい私は再び口を開いた。

「…………でもね、私、あなたに伝えようと思っていることがあるの。聞いてくれる?」
「ああ」

 食い気味に返事をされ、ちょっとたじろいてしまう。

 やっぱり言わないほうが良いかもと、もじもじとし始めた私だった。けれど、ふと視線を感じて顔を上げれば、レオナードは、有り得ない眼力で早く話せと訴えてくる。

「私ね、最初あなたと会った時、すごく嫌な奴だと思ったの。超が付くほどのお坊ちゃまで、高慢ちきで欲しいものは権力と財力で手に入れることができると信じて疑わない愚か者だと思っていたの」
「………………」

 レオナードの眼が一瞬死んだような気がしたけれど、多分気のせいだろう。

「でもね、一緒に過ごしているうちに、あなたに対して私が思い込みをしていたことに気付いたの。あなたは高慢ちきなイカレ野郎で、財力と権力だけしかない、ちゃらんぽらんなお坊ちゃまなんかじゃなかったわ」
「………………さっきより手酷いキャラになったな」
「あらいやね、レオナード。気のせいよ」

 くすりと笑ってレオナードに同意を求めたけれど、彼はとても不満そうだった。でも、ここは敢えて気付かないフリをして、私は、ぱんっと軽く両手を打ち鳴らして、このもやもやを打ち払うための解決策を口にした。

「だからね。ここいらで一発、本気の手合わせをしましょう」
「なんでそうなるんだっ」

 全力でそう叫んだレオナードは、それから髪をぐしゃぐしゃとかきながら、まじ意味わからねえと、呟いた。
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初めまして、茂栖もすです。このお話は10:10に更新しています。時々20:20にも更新するので、良かったら覗いてみてください٩( ''ω'' )و
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