77 / 114
19日目③
しおりを挟む
馬鹿呼ばわりされたレオナードはあからさまに、むっとした表情を浮かべるけれど、私はその言葉を訂正する気はない。だって、本当に心からレオナードのことを馬鹿だと思っているから。
なぜかというと、私が頭に浮かんだ人物というのは、何を隠そうレオナード、本人だったりする。
それに私は、あからさまにレオナードの特徴を語っていたのだから、てっきり彼は気づいていると思っていた。なのに、どうしてここでアルバードの名前が出てくるのだろう。わからない。どう考えてもわからない。わかるのことは、ただ一つ、レオナードが鈍感で馬鹿だということだけ。
「ミリア嬢…………確認だが、今、私のことを馬鹿と言ったか?」
現実を認められない眼前のお坊ちゃまは、往生際悪く私にそんなことを問いかける。
「ええ、間違いなく馬鹿と言ったわ。そして私、現在進行形であなたのことを馬鹿だと思っているわ。過去形にしないで」
「なに?」
呆れた半分、不機嫌半分でそう答えた私に、レオナードは更にむっとした表情を浮かべた。…………そんな顔をされたら、私だってムキになってしまう。
「だって、どうして今の会話の中でアルバードが出てくるのかわからないんだもの。それに、どうして私がアルバードのことを好きっていうことになるの?っていうか、やっぱりって何?あなたずっと、私がアルバードのことを好きだと思っていたの?何を根拠に?そっちこそ、私が納得できるように答えてっ」
キッとレオナード睨みつけてそう言えば、彼は今度は不貞腐れた表情を浮かべて、こう言った。
「…………言えるかよ。そんなこと」
「じゃあ、最初っから馬鹿なことを口にしないでっ」
ダンッとテーブルをたたき付けて立ち上がってみたけれど、これは売り言葉に買い言葉から 取ってしまった行動。
そして、レオナードは同じ土俵に上がってはくれず、まぁ落ち着きたまえと、余裕こいた事を言う。.........なんか、それズルイ。
それに最近レオナードは、ちょっとおかしい。急に不機嫌になったりふて腐れたりする。なんでだろう。
そんなことを考えながらじっとレオナードを見つめれば、彼は、私の思考を読んだかのように、こう言った。とても言いにくそうに。
「ミリア嬢、男の行動には全て意味がある。逆を言うと、意味の無い行動はしない生き物だ。それを踏まえて、良く考えてみたまえ。最近の私の行動を」
「..........................................」
レオナードに言われた通り、彼の最近の不可解な言動に付いて考えてみた。
そして、考えてみた結果一つわかった。
認めたくない。本っ当に認めたくないけれど、レオナードは相談と言いながら、私に胸の内を晒す気が無いということを。
だって今までだったら、聞いてもいないのに、無駄な語彙をぎゅうぎゅう詰め込んで喋り散らかしていたというのに。最近のレオナードは遠回しな言い方ばかり。これだけ一緒に居るというのに.........。
私達は、一体何を、何処で、すれ違ってしまったのだろう。
「.........悪いけど、今日は帰るわね」
この件、すぐには答えが出ない。一旦、自宅に戻って考えよう。なにせ私は、解決できない問題を明日に持ち越すことはしない人種だから。これは時間との戦いだ。
そう決めた私は、床に落ちたままのバターナイフを取り上げると、静かに席を立った。すると突然、レオナードが血相を変えて私の方へと回り込んで、腕を強く掴んだ。
「ミリア嬢、ケーキはどうする気だ!?」
え?ちょっと待って。ここで引き留める理由がケーキだなんて、どうよ?…………ああ、そっか。私ケーキにつられてレオナードの相談を受けることにしたのだった。
「い…………要らなくはないけれど。あ、明日食べるわ。だから、取っておいて。良いわね?まかり間違って、捨てたりしたら、あなたをスウィーツとは一生無縁の世界に連れて行くからね」
勢いに任せてそう言い放ったら、レオナードは若干、怯えた表情をしながらも大きく頷いてくれた。でもすぐに、こんなくだらないことを聞いてきた。
「ミリア嬢、明日は会って────」
「会うに決まっているでしょ!?っていうか、毎日会うわよ。そんなこと、イチイチ聞かないでっ」
捨て台詞なのか何なのかわからない言葉を吐いて、去って行く私の背に、レオナードから『今日は悪かった』と意味不明な謝罪が飛んできた。
まったくもう、中身の無い謝罪なんか要らないっ。私が欲しいのは............ん?何なのだろう。っていうか、私、レオナードに何か求めても良い立場だったっけ?
ふと沸いた疑問は結局すぐには答えが出ず、これも持ち帰りの案件となってしまった。
さて、勢い良く明日も会うと豪語した私だったけれど…………その約束は守れない事態となった。
言っておくが、そうなったのは不可抗力だ。私はこの契約期間中は雨が降ろうと、槍が降ろうと、少々体調が悪くたって、レオナードに会うつもりだった。
でも、我が家の真打、もとい、父上が領地から急遽、帰還することになれば、それはまた別の話だったりもする。
なぜかというと、私が頭に浮かんだ人物というのは、何を隠そうレオナード、本人だったりする。
それに私は、あからさまにレオナードの特徴を語っていたのだから、てっきり彼は気づいていると思っていた。なのに、どうしてここでアルバードの名前が出てくるのだろう。わからない。どう考えてもわからない。わかるのことは、ただ一つ、レオナードが鈍感で馬鹿だということだけ。
「ミリア嬢…………確認だが、今、私のことを馬鹿と言ったか?」
現実を認められない眼前のお坊ちゃまは、往生際悪く私にそんなことを問いかける。
「ええ、間違いなく馬鹿と言ったわ。そして私、現在進行形であなたのことを馬鹿だと思っているわ。過去形にしないで」
「なに?」
呆れた半分、不機嫌半分でそう答えた私に、レオナードは更にむっとした表情を浮かべた。…………そんな顔をされたら、私だってムキになってしまう。
「だって、どうして今の会話の中でアルバードが出てくるのかわからないんだもの。それに、どうして私がアルバードのことを好きっていうことになるの?っていうか、やっぱりって何?あなたずっと、私がアルバードのことを好きだと思っていたの?何を根拠に?そっちこそ、私が納得できるように答えてっ」
キッとレオナード睨みつけてそう言えば、彼は今度は不貞腐れた表情を浮かべて、こう言った。
「…………言えるかよ。そんなこと」
「じゃあ、最初っから馬鹿なことを口にしないでっ」
ダンッとテーブルをたたき付けて立ち上がってみたけれど、これは売り言葉に買い言葉から 取ってしまった行動。
そして、レオナードは同じ土俵に上がってはくれず、まぁ落ち着きたまえと、余裕こいた事を言う。.........なんか、それズルイ。
それに最近レオナードは、ちょっとおかしい。急に不機嫌になったりふて腐れたりする。なんでだろう。
そんなことを考えながらじっとレオナードを見つめれば、彼は、私の思考を読んだかのように、こう言った。とても言いにくそうに。
「ミリア嬢、男の行動には全て意味がある。逆を言うと、意味の無い行動はしない生き物だ。それを踏まえて、良く考えてみたまえ。最近の私の行動を」
「..........................................」
レオナードに言われた通り、彼の最近の不可解な言動に付いて考えてみた。
そして、考えてみた結果一つわかった。
認めたくない。本っ当に認めたくないけれど、レオナードは相談と言いながら、私に胸の内を晒す気が無いということを。
だって今までだったら、聞いてもいないのに、無駄な語彙をぎゅうぎゅう詰め込んで喋り散らかしていたというのに。最近のレオナードは遠回しな言い方ばかり。これだけ一緒に居るというのに.........。
私達は、一体何を、何処で、すれ違ってしまったのだろう。
「.........悪いけど、今日は帰るわね」
この件、すぐには答えが出ない。一旦、自宅に戻って考えよう。なにせ私は、解決できない問題を明日に持ち越すことはしない人種だから。これは時間との戦いだ。
そう決めた私は、床に落ちたままのバターナイフを取り上げると、静かに席を立った。すると突然、レオナードが血相を変えて私の方へと回り込んで、腕を強く掴んだ。
「ミリア嬢、ケーキはどうする気だ!?」
え?ちょっと待って。ここで引き留める理由がケーキだなんて、どうよ?…………ああ、そっか。私ケーキにつられてレオナードの相談を受けることにしたのだった。
「い…………要らなくはないけれど。あ、明日食べるわ。だから、取っておいて。良いわね?まかり間違って、捨てたりしたら、あなたをスウィーツとは一生無縁の世界に連れて行くからね」
勢いに任せてそう言い放ったら、レオナードは若干、怯えた表情をしながらも大きく頷いてくれた。でもすぐに、こんなくだらないことを聞いてきた。
「ミリア嬢、明日は会って────」
「会うに決まっているでしょ!?っていうか、毎日会うわよ。そんなこと、イチイチ聞かないでっ」
捨て台詞なのか何なのかわからない言葉を吐いて、去って行く私の背に、レオナードから『今日は悪かった』と意味不明な謝罪が飛んできた。
まったくもう、中身の無い謝罪なんか要らないっ。私が欲しいのは............ん?何なのだろう。っていうか、私、レオナードに何か求めても良い立場だったっけ?
ふと沸いた疑問は結局すぐには答えが出ず、これも持ち帰りの案件となってしまった。
さて、勢い良く明日も会うと豪語した私だったけれど…………その約束は守れない事態となった。
言っておくが、そうなったのは不可抗力だ。私はこの契約期間中は雨が降ろうと、槍が降ろうと、少々体調が悪くたって、レオナードに会うつもりだった。
でも、我が家の真打、もとい、父上が領地から急遽、帰還することになれば、それはまた別の話だったりもする。
0
初めまして、茂栖もすです。このお話は10:10に更新しています。時々20:20にも更新するので、良かったら覗いてみてください٩( ''ω'' )و
お気に入りに追加
961
あなたにおすすめの小説

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?

あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです
じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」
アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。
金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。
私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。


【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる