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19日目②
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イタい台詞を吐いたつもりだったけれど、レオナードはとても嬉しそうに笑っている。そして、そうかそうかと嚙み締めるように何度も頷いている。イタい台詞で嬉しそうにする彼の姿は、これまたイタい。
でも落としたままのバターナイフを拾うなら今だ。私は、そっと身を屈め腕を伸ばそうとした。けれど、タイミング悪く、再びレオナードが口を開いてしまった。
「では、質問を続けるが───」
「え、質問?ちょっと待って。レオナード、あなた私に相談しているんじゃなかったの?」
思わずツッコミを入れれば、レオナードは、しまったというふうに片手で顔を覆った。
「し、失礼した。言い間違えただけだ」
「あら、そ。まぁ、そこまで恥じる必要はないわ。誰だって間違いはあるし。それに、あなた私に、今以上の失態と失言を繰り返しているんだから、気にしないで」
「…………そうか」
フォローしたつもりだったけれど、レオナードは何故かがっくりと肩を落としてしまった。
今更だけれど私達はサンルームにいる。理由は雨天だからだ。そして、雨足はどんどん強くなっていく。帰路のことを考えると、この相談、少々強引にでも進めたほうが良さそうだ。
「.........アイリーンさん」
「...........................っ」
相談の続きを促そうと彼女の名前を出した途端、レオナードは突然びくりと身を震わせた。
「か、か、彼女がどうかしたのか?」
どもるレオナードの目は、こちらが心配になるほど泳いでいる。
「どうかしているのは、あなたのほうよレオナード。ねぇ…………ぶっちゃけて聞くけど、アイリーンさんの名前を出しただけなのに、そんなに怯えるなんて、昨日、何かあったの?」
「いや、別に。普通だ」
間髪入れずにレオナードはそう答えた。まるでその話題に触れるなと言いたげに。
私は、レオナードの嫌がることをするつもりなんてない。でも、彼の言う普通という基準が私には良くわからない。あと、昨日の事を触れずして、私は彼の相談に乗れるかどうかもわからない。
そんな不安を抱えて、言葉を失った私に、レオナードは静かに問い掛けた。
「ミリア嬢、君は、男性に何を望む?」
「は?」
おい、藪から棒にどうした?頭が沸いたか?
という意味の問い掛けを一文字に集結してみたけれど、レオナードはぐいっと前のめりになって私に、再び問うてきた。
「いいから、答えてくれ。君の好みはどんなタイプなんだ?」
「…………私の好みを聞いて、どうするの?」
「今後の参考にする」
再び間髪入れずにそう答えたレオナードの目力は、更に威力を増していた。
ま、まぁアイリーンさんを口説くのに、女性の好み.........というか、リアルなサンプルは一つでも多く欲しいといったところなのだろう。ぶっちゃけ私の好みなんて聞いても、約に立つとは思えないけれど。
「そうねえ…………」
そこまで口にして、ふと気付いた。私、そういえば恋愛経験が皆無だったことを。
だから好みなんてない。そう言おうと思ってレオナードをちらっと見れば、彼は鬼気迫る表情で私の答えを待っている。だ、駄目だ。ここは何とか捻りださないと。
そして、必死に考えた結果、私の頭の中で、とある人が思い浮かんだ。
「えっと、まず剣だこは、必須ね。それから普段は空気のような存在でいるけれど、いざっていうときは、男らしく少々強引なことをする人。あとちょっとミステリアスっていうか、色んな顔を持っている人.........かしら」
他にもある。でも、あんまり詳しいことは伝えたくない。なので、ふわっと伝えてみたところ、レオナードの表情が一気に険しいものに変わった。
「ミリア嬢、やっぱり君は............アルバードが好みだったのか?」
「…………レオナード、あなた馬鹿なの?」
一瞬だけレオナードの質問の意図を考えてみた。けれど、出た結論はこれだった。
でも落としたままのバターナイフを拾うなら今だ。私は、そっと身を屈め腕を伸ばそうとした。けれど、タイミング悪く、再びレオナードが口を開いてしまった。
「では、質問を続けるが───」
「え、質問?ちょっと待って。レオナード、あなた私に相談しているんじゃなかったの?」
思わずツッコミを入れれば、レオナードは、しまったというふうに片手で顔を覆った。
「し、失礼した。言い間違えただけだ」
「あら、そ。まぁ、そこまで恥じる必要はないわ。誰だって間違いはあるし。それに、あなた私に、今以上の失態と失言を繰り返しているんだから、気にしないで」
「…………そうか」
フォローしたつもりだったけれど、レオナードは何故かがっくりと肩を落としてしまった。
今更だけれど私達はサンルームにいる。理由は雨天だからだ。そして、雨足はどんどん強くなっていく。帰路のことを考えると、この相談、少々強引にでも進めたほうが良さそうだ。
「.........アイリーンさん」
「...........................っ」
相談の続きを促そうと彼女の名前を出した途端、レオナードは突然びくりと身を震わせた。
「か、か、彼女がどうかしたのか?」
どもるレオナードの目は、こちらが心配になるほど泳いでいる。
「どうかしているのは、あなたのほうよレオナード。ねぇ…………ぶっちゃけて聞くけど、アイリーンさんの名前を出しただけなのに、そんなに怯えるなんて、昨日、何かあったの?」
「いや、別に。普通だ」
間髪入れずにレオナードはそう答えた。まるでその話題に触れるなと言いたげに。
私は、レオナードの嫌がることをするつもりなんてない。でも、彼の言う普通という基準が私には良くわからない。あと、昨日の事を触れずして、私は彼の相談に乗れるかどうかもわからない。
そんな不安を抱えて、言葉を失った私に、レオナードは静かに問い掛けた。
「ミリア嬢、君は、男性に何を望む?」
「は?」
おい、藪から棒にどうした?頭が沸いたか?
という意味の問い掛けを一文字に集結してみたけれど、レオナードはぐいっと前のめりになって私に、再び問うてきた。
「いいから、答えてくれ。君の好みはどんなタイプなんだ?」
「…………私の好みを聞いて、どうするの?」
「今後の参考にする」
再び間髪入れずにそう答えたレオナードの目力は、更に威力を増していた。
ま、まぁアイリーンさんを口説くのに、女性の好み.........というか、リアルなサンプルは一つでも多く欲しいといったところなのだろう。ぶっちゃけ私の好みなんて聞いても、約に立つとは思えないけれど。
「そうねえ…………」
そこまで口にして、ふと気付いた。私、そういえば恋愛経験が皆無だったことを。
だから好みなんてない。そう言おうと思ってレオナードをちらっと見れば、彼は鬼気迫る表情で私の答えを待っている。だ、駄目だ。ここは何とか捻りださないと。
そして、必死に考えた結果、私の頭の中で、とある人が思い浮かんだ。
「えっと、まず剣だこは、必須ね。それから普段は空気のような存在でいるけれど、いざっていうときは、男らしく少々強引なことをする人。あとちょっとミステリアスっていうか、色んな顔を持っている人.........かしら」
他にもある。でも、あんまり詳しいことは伝えたくない。なので、ふわっと伝えてみたところ、レオナードの表情が一気に険しいものに変わった。
「ミリア嬢、やっぱり君は............アルバードが好みだったのか?」
「…………レオナード、あなた馬鹿なの?」
一瞬だけレオナードの質問の意図を考えてみた。けれど、出た結論はこれだった。
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初めまして、茂栖もすです。このお話は10:10に更新しています。時々20:20にも更新するので、良かったら覗いてみてください٩( ''ω'' )و
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